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聖痕のワルツ  作者: 兎月
2/4

プロローグ アナザーサイド 旅の途中

8/3編集しました。

ルーク・D・マクスウェルは月を見上げていた。生い茂る木々の隙間から差し込む月光に照らされた森には、彼女以外の命は見当たらない。


夜に浮かぶ二つの月は、ただ黙して下界を照らすだけ。


風情のある者なら、月見酒と洒落込むのだろうが。


そう思いながら、ルークは止めていた足を再び動かした。


家を出てもうすぐ一月になる。旅に出ると言ったら周りの人全員に反対された。まあ貴族が護衛も付けずに一人旅など確かにあり得ないかもしれない。


だが、もし護衛の騎士など連れていれば、自由に街を見て回ったり、食べ物に困ったり、金を稼ぐためにギルドに登録したりなどできなかった。


そんな窮屈な思いは、もうたくさんだ。



箱庭には、もう飽き飽きだ。

鳥かごの中には、もう辟易した。



そう思ったから、旅に出たいと思ったのだ。


家族も使用人も、みんな心配してくれているのだとわかっている。


だけどそれでもわたしは、自分の目で、自分の手で、自分の耳で、自分の意思で世界に触れてみたかっ

た。


まあそれに、心配されるほどわたしは弱くない。



この森は確か、エギルの森。ここを抜けると、「ウェッソン」という街に出る。鍛冶と細工の街と呼ばれる、鉱山の麓の街だ。


剣は、自分の腰に下げた剣よりいいものはないだろうから、何かいい細工の小物でもあるといい。

そう思ったとき、少し先の方から気配を感じた。


ひとつは人間。そして魔獣が複数。


助ける義理はない。だが気づいてしまった以上助けるべきだ。もとより彼女の選択肢に見捨てるという文字はない。


「疾っ!」


声と同時、彼女は自分の発した声すら置いていきそうな速度で、気配のもとへと走り出した。

流れる景色を置き去りに、気配の元へと森を駆ける。



当然のことながら、まだ彼女は知らない。


この邂逅が、宿命の始まり。


舞台の幕は上がり、劇が始まる。


劇の終わりは、笑顔か涙か。


すでに在る結末を知るのは、全知の何者かのみ。


しかし結末を変えることができるのは、登場人物だけなのだ。


終幕のその時まで、幕が下りきる瞬間まで、彼らは足掻く。抗い続ける。





短い……。

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