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『少女K』、帰郷の道を直走れ。  作者: 糸目十半目
第一章 『一人迷子』
2/2

02,第2節 『これから』


「さてさて、これからどうしたもんか・・・・・・う〜〜〜〜〜〜〜んむッ」


 突如として異世界に来てしまった自分の、これから先の身の振り方について頭を悩ませる。


「異世界に来たっていってもなぁ、神様的な何かに"アレ"をしろだの"コレ"をしろだのって言われたわけでもないし、そもそも会ってもいないし、かと言ってやりたいことがあるわけでもないんよねぇ・・・・・・うーん、どうしたものか」


 しばらく考えこんだが何も思い着くことはなかった。


「ま、とりあえずは所持品でも確認しましょかいね。 そしたら何か見えて来るかもだしね」


持ち物は以下の通りだ。


[スマホ]

・勿論異世界であるため圏外と表示され、使えない。それでも例外はあり、オフラインでも使えるアプリなどは使用可能

・通常時画面に表示される時計は、時刻の表記が一向に変わらない為、時計としての使用は不可

(時計アプリのタイマー,ストップウォッチは使用可)


[木刀『国乃丸』]

・小学生の時の修学旅行で買った木刀に、自分と同じ名を付けたものであり、彫刻刀で名前も彫られている、若気の至り満載の代物である。


[竹刀『天乃丸』]

・我が愛しの妹・天乃(あめの)が「お姉ちゃん剣道頑張って!」とくれた大切な竹刀である。勿論名前を付けている


と、この三点だ。

 後は原作進行形で着用中の高校の制服(夏用)と靴、そして木刀・竹刀を入れるのに使っている袋があるくらいだ。


「木刀と竹刀かぁー、この二つがあってもこの世界じゃおそらくコレと言って活躍は期待できないよねぇ。 できたとしても剣道するか、素振りで筋トレぐらいで、後は護身用?に持っておくとかになるぐらいでしょうよ。 まぁないよりはマシか」


 手持ちのアイテムのなんとも言えないラインナップに、頭を再び悩ませる。

 確かに元の世界であれば木刀と竹刀は十分な武器となり得ただろう。だがおそらく剣と魔法が跋扈するこの異世界においてはそれほど活躍はしないだろう。

 例えるならば、"レアリティは高いが性能面では現環境にはついていくことのできないゲームキャラ"の様なものだろう。

 

 複雑な気持ちを抱えたままでいると、近くにいる四人組の会話が聞こえてきた。


「今日の依頼も上手くいったな」


「ほんとね、コレでやっと新しい装備を買えるわ」


「待ってください、喜ぶのもいいですがね、まずはギルドへ依頼の完了を報告しに行くんですよ」


「そうだよ、まずは報告が終わってから!」


 四人組のリーダー的な爽やか男が依頼達成の喜びを、妖艶なお姉さんがその報酬の使い道について嬉しそうに話しているのを、眼鏡をかけた真面目そうで、いかにも"魔術師"と言える格好の男と、身の丈以上の大楯を背負った少女に咎められる。

(以降この四人を順に、爽やか・(えん)さん・メガネ・(だて)ちゃんと呼ぶこととする)


「すまんすまん・・・って言ってもやっぱり今日は調子がいい。 どうだこのままもう一件依頼を受けないか?」


 爽やかが咎められたことに素直に謝罪をし、二次会へと誘うかのごとく、そう提案した。


「そうねぇ、それも悪くないかもしれないわね。 私達も結構できるようになってきたものね」


「賛成ッ!! なーんか、アタシも消化不良って感じだったからさぁ〜」


「それは自分も思っていたところです」


 爽やかの提案に対し、残りのメンバーが次々と賛同する。

そして意見の纏まりを感じとった爽やかの


「となれば、急いで冒険者ギルドに行こうッ!! そうじゃないと良い依頼がなくなっちまうッ!!」


という言葉を合図に、冒険者四人組御一行様は元気よくかけて行った。


その後ろ姿を眺めながら、小さな声で

「冒険者・・・冒険者・・・冒険者」

と何度も口にした。


 「そうだよ! なんでもっと早く気づかなかったんだろ。 そうじゃん、異世界ならいるっしょ! 魔物・モンスター、冒険者ッ!! いいよねッ! ふふ…ふふふ……ふふふふふ」


 木刀達の使い道と、自分のやりたいこと・やりたかったことが漸く見つかり、思わず笑みが溢れる。


 「ようしッ! そうと決まれば行きますかッ!! 冒険者ギルドに!!」


と、期待に胸が弾むのを感じながら、勢いよく大きな一歩を踏み出し歩み始めたのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・が、


「ココハ・・・・・・ドゥコウ?」


と開始数分で迷子になってしまい、かれこれ一時間ほど人通りの少ない路地裏を彷徨っている。

 生まれてこのかた迷子になったことなど一度もなかった。

 自宅から学校に行く時も、学校から自宅に帰る時も、ショッピングモールや初めて訪れた場所でも迷子になることなどなかった。

 今回も初めて訪れる場所ではあったものの、ちゃんとあの四人の後を追ってきたはずだ。

 それなのに迷子になってしまった。


「もしかして私って、方向音痴だったとか? ・・・いやいや

んなわけぇ〜」


先も述べた通り、迷子になったことは一度もない。

 となると方向音痴である可能性は低い。仮にそうだったとしても、もっと早い段階でその才能を持ち合わせていることに気づいたはずだ。

 であるからしてやはり方向音痴ではないのだろう。


「はッ!? もしやこの方向音痴が、私の異世界来訪特典なのでは!? はは!なんてねッ!!」


 誰が聞いてるわけでもないのに一人寂しく、小粋な冗句を口する。

 その時、路地裏と言う名の大迷宮のさらに深い世界へと続いていそうなの曲がり角の方から聞き取れはしなかったが、おそらく言い争っている男女の声が聞こえてきた。


「うえー絶対面倒事じゃん、嫌だなあ」


と言いつつも、どう進むにしろ、その前を通らなければ先に進めないので、声がした場所へと近づきバレない様息を殺し、ヒッソリコッソリシッカリと覗きこみ、様子を伺う。


「大人しくしな、嬢ちゃん。 あんたはもう逃げらんねぇのよ」


「やめてくださいッ! 離してくださいッ! 誰か助けッ・・・」


と両腕を頭の上で捕まれ、壁に押し付けられた女性が助けを求めようと声を出しかけたところで体格がガッチリとした男に口を塞がれる。


「また叫ばれちゃあ、厄介だかんな」


「グヘヘ・・・流石ですぜぇ、アニキぃ」


と絵に描いたようないかにもすぎる下っ端が、男の行動を褒め称える。

(以降二人の男のことは、ガッチン,タッパーと呼ぶこととしよう)

 そんなことはさておいておき、一通り様子を観察してわかったのはガッチンとタッパーの二人以外に仲間はいないということぐらいだ。


「な、なあ、アニキぃ・・・そろそろ、そのぉーどうですかい?」


「あん? あーそうだなそろそろいただくとしようか。 ボスには大事な商品だから手ェ出すなって言われてるが、こんだけ苦労させられたんだ、ちょっとぐらいの味見は許して貰わねえとだろ。 おいコイツの口抑えとけ」


と、タッパーの呼びかけに応じたガッチンがそう言いながら、自身が着用しているズボンを下げ出した。

 その動作からこの先自分に訪れるであろう結末を察したのか、女性は必死に体を動かし拘束から逃れようと抵抗する。

 だがしかし、抑える力が強く抜け出せない。

 そんな彼女の目に涙が滲み出してくるのを私は離れた場所からしっかりと目にした。


「うわぁー、そういう感じになるかぁ。 まぁそうよねぇ、人通りの少ない場所で、男が美少女捕まえたらやることって言ったらさ。 助けてあげたいけどもなるべく面倒事には関わりたくないのだよ、私は。てな訳で頑張って強く生きてくれ」


私は、誰が聞いているわけでもないがそう言い残し、美しいその瞳に涙を滲ませながらも、諦めずに必死の抵抗をやめない彼女の「んーんー」と言う言葉にならない声を背に、元来た道を戻るために歩きはじめたのだった・・・・・・・・・・・・


だった・・・・・・・・・・・・


った・・・・・・・・・


た・・・・・・


「って出来るほど強い人間じゃあないのよ、私は。

 それにこんな場面に遭遇して、見捨てるなんて選択肢を選んでしまったら、天乃に会わせる顔がなくなっちゃうじゃあないですかって話ですわ。 ならやることは一つだよね」


 そう自身に言い聞かせ、私は長い長い深呼吸を繰り返した後、両頬を力一杯叩き、気合いを入れた。


 そして私は・・・


「そこまでだッ!悪党どもッ!!」


という台詞と共に飛び出し、その姿をみた道行く乙女達が、本能剥き出しのままに狂喜乱舞しながら私に求婚し、迫ってくるであろうほどには、それはそれはカッコイイ登場を果たしたのだ。多分ね。









 














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