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【SF 宇宙】

遠い未来の話

作者: 小雨川蛙

 

 我々とは似ても似つかない生き物たちが必死に遺跡の発掘を続けていた。

「博士、もうやめませんか」

「そうですよ。神話は神話です」

 発掘隊のメンバーがそう話したが、博士と呼ばれた生き物は彼らを制して言った。

「そう思うなら君達は帰ってくれ。私一人でも作業は続ける」

 そんな博士の様をみてメンバーたちは諦めて彼に協力をした。

 この博士は当代一の頭脳を持つのに、どこか子供じみた所がある。

 今、行っている発掘作業についてもそう。

 なんと彼は神話の時代にあった『魔王と勇者の戦い』の痕跡を求めて、もう何十年と言う歳月をかけているのだ。

 誰もが「そんなものはおとぎ話です」と言ったし、世界的な頭脳の持ち主であるはずの博士が起こしている行動をメディアは嘲笑ってさえいた。


 ここで博士が躍起になって求めている魔王と勇者の戦いについて語らなければならない。

 とはいえ、この話は実によくある荒唐無稽なおとぎ話である。

 かつて地球上に存在した生命全てを脅かす魔王が存在しており、事実数えきれないほどの種族が魔王の出現によって滅び去ったのだ。

 神話が語る通りであれば魔王は自身と同じ姿を持つ者達……魔族を世界のあらゆる場所に送り、彼らは自分達と同種の存在以外を完全に否定して生きていた。

 魔王が世界を支配していた時代は悲惨なものだったという。

 魔族以外のあらゆる生き物は魔族に怯えながら暮らしていた。

 中には魔族と共に生きることを選んだ種族さえいるという説さえある。

 さて、そんな魔王及び魔族は数千年以上にも渡り世界を支配していたが、ある時に生まれた勇者に一族共々完全に滅び去ってしまったのだと言う。

 その戦いは凄惨を極め、魔王や魔族だけでなく巻き込まれた他種族も含めて多くの命が犠牲となり、戦いの余波で地球そのものさえが滅びかねなかったと伝わっている。

 だが、勇者が最期の力を振り絞り、偉大なる魔法を唱えて天から雷を落とし魔王と魔族を滅ぼしつくしたのだ。

 その力は凄まじく、勇者自身をも瞬の内に消滅させたと伝わっている。

 だが、多くの犠牲を出しながらも勇者は確かに魔王から世界を救ったのだ。


「こんなおとぎ話を真実と思うだなんて」

 博士への愚痴をメンバーが呟く。

「博士も意外と馬鹿だな」

「そんな博士に付き合う俺たちもな」

 そう軽口をたたき合いながら遺跡の発掘は今日もまた続いていた。

 この会話から数か月後、博士たちは勇者と魔王の実在を証明する発見をするのだが、それはまた別の話。

 ・

 ・

 ・

 数万年前。

 後に博士たちが『勇者』と呼ぶ一人の独裁者が唾をまき散らしながら叫んだ。

「ただちに核を使え!」


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