表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/336

第61話 第二章プロローグ(マッドサイエンティスト)

第二章「ドクタークラウス編」です。

三年前、私、ドクター・ヴィクター・クラウスは、闇の商人たちと手を組み、奴隷貿易に関わる計画を密かに進めていた。


「この毒があれば、誰も私の計画に気づかない……」


そう呟きながら、試験管の中で薄い緑色の液体を傾ける。

ナイトシェードとヘビ毒をベースにしたその毒は、消化器と神経にじわじわ効くよう設計されていた。体内に入れば、咳が出て吐き、腹を下す。だがそれだけでは終わらない。


「水に混ぜれば、誰も病気としか思わない……その後の『治療薬』で、借金を重ねさせて奴隷として囲い込める」


冷たい笑みが私の口元に浮かぶ。金だけではなく、権力と影響力まで一気に手に入る。


研究は屋敷の地下で昼夜を問わず行い、私は毒の効き目をさらに巧妙に改良していく。科学への執着が、そのまま形になった研究だった。


ある日、私は自分の毒の効果を試すため、とある都市の貧民街をターゲットにした。


「さあ、どうなるか見せてもらおうか」

井戸に毒を混ぜ、数日後に人々が体調を崩すのを観察する。

咳、嘔吐、腹痛――中には命を脅かされる者も出る。私はその一部始終をメモに取った。


そして毒が回り切ったところで計算通りに現れる。

「この病気に効く治療薬を提供する」


その声と共に症状を抑えることで、計画の成功を確認した。

「これで、奴らは私の掌の上だ……」


自信を深め、私はさらに野心を燃やす。毒を広く流通させ、奴隷商人たちと協力して人々を操るつもりだった。しかし、予想外の障害が現れる。


それがレイジングハートという冒険者パーティだった。


彼らは異変を察知し、毒入り水の解析、解毒法の発見、人々への普及までを迅速に行った。

私の計画は一瞬で崩壊し、奴隷商人たちから切り捨てられ、闇市場からも追放された。研究所には追っ手が差し向けられ、私は命からがら逃げるしかなかった。


金も地位も名声も失った私に残ったのは、ただひとつ――レイジングハートへの深い恨みだった。


三年後、私は再起をかけ、かつての因縁の港町・ファルコナーに姿を現した。交易が盛んで薬草や薬品の取引も活発なこの町は、新薬開発に最適だった。


港に並ぶ薬品、山で採れる豊富な薬草――どれも、私の野望を支える材料だった。


だが、それだけではない。


「あの女だ……」

かつて私の毒薬計画に気づき、妨害したレイジングハートの薬師。

今や評判のいい薬草店を営み、町の人々から厚く信頼されている。


私は唇を噛み、指先で書類を指す。


「あの女を潰す。そうせねば、私の復讐は終わらない……」


まず仕掛けたのは、レイジングハートへの嫌疑工作だった。捏造した取引記録を作らせ、被害者の家族に吹き込む。


「奴隷商人とあいつらはグルだった。取引証明もある。あの冒険者どもは、最後に奴隷商人共も役人に売った。ただの偽善者だったんだ」


噂は町に広がり、リリーの店にも影が差す。


「あの薬師って、奴隷商の仲間だったらしいよ?」


客が疑念を抱き、足が遠のく。店の経営は徐々に傾きはじめた。


さらに私は他の薬草店にも嫌がらせを仕掛けた。店主が見ていない隙を狙い、商品に劣悪な成分を混ぜ、客が体調を崩すように仕向ける。町の薬業界はじわじわと混乱に巻き込まれた。


「順調だ……リリーの店も時間の問題だ」

私は微笑み、指を組んで考える。


「やがて、この町は私のものになる。そして……リリーには思い知らせてやる」


その瞬間、私の瞳は鋭く光った。


「さぁ、哀れな被害者を焚き付け、あの忌まわしい薬師を地獄の底に叩き込むのだ…そして今度こそこの都市を我が物にしてくれる。…長年温めた新薬でな」


復讐と支配。二つの野望を胸に秘め、私、ドクター・ヴィクター・クラウスは夜の港を見下ろしながら、笑みを浮かべた。


いつも読んでくださり、ありがとうございます。

硬い感じで始まりましたが、これから柔らかくなります。多分。

ブックマーク・いいね・評価、励みになっております。

評価⭐︎であっても⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎であっても正直に感じた気持ちを残していただけると、

今後の作品作りの参考になります。よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ