表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/338

閑話 過去の奴隷売買事件

セリアが前に居たパーティの話です。

ちょっと長かったので短く改稿しました。

リリーは三年前の記憶を思い出していた。

奴隷商人たちは「ドクター」と呼ばれる科学者が作った「緩慢の毒」を使い、人々をじわじわと追い詰めていた。


この毒は消化器に作用し、咳や嘔吐、腹痛を引き起こす。しかも症状は数日から数週間続き、治ったと思っても再発のリスクが高い。


「一時的には和らげられるけど、完全には治らない…」

リリーは当時、患者を診ながら悔しそうにそう呟いていた。


人々は症状を抑える薬に群がったが、すぐに品切れになった。代わりに高価な回復薬が売り出され、庶民には到底手が届かなかった。


さらに、高利貸しが優しい顔で現れた。

最初は「困ってるなら助けてやろう」と金を貸し、やがて返済が不可能だと分かると態度を一変させる。借金を返せない者は財産を奪われ、最後には家族ごと奴隷として売り飛ばされた。


そんな地獄のような状況を前に、レイジングハートのメンバー――レンド、ガイル、マリス、セリア、そしてリリーは調査を始めた。


「この辺が一番、患者が集中してる場所らしいぜ」

ガイルが地図を指差す。


「確かに。ここを除くと発症した家が飛び飛びなんだ」

リーダーのレンドも眉をひそめた。


「おかしいわよね。若い女性がいる家ばかりが症状が出るなんて」

マリスの呟きに、セリアも頷く。


「年寄りには全然症状が出てないのも妙だわ」


「裏があるな。調べてみるしかない」

レンドの声に、皆の決意が固まった。


リリーは薬師として毒の分析に取りかかった。町の薬師からミスティカ草や月光花を分けてもらい、井戸の水を採取して試薬を準備する。そして、被害者の血液をクロマトグラフィーで調べた。


「見て!緑色に光ってる!これは蛇毒よ!こんなのが自然に井戸に流れ込むなんてあり得ない!」

リリーが目を輝かせる。


「じゃあ、誰かが井戸に毒を仕込んだのか。無差別に…なんて卑劣な」

ガイルが拳を握りしめた。


「解毒薬を作らなきゃ。でも問題があるわ。効果があるのはチャミローミレ草。蛇毒を中和する効果があるけど、標高の高い雪解けの小川沿いにしか生えないの」


「遠い場所なのか?」とリーダーのレンドが問う。


「セリンの先にあるグリムホルト北山脈なら確実だけど、往復だけで一月はかかる。だから、今はファルコナー山脈に賭けるしかないわ」


「ならそこにある事を賭けて行くしかないな」

レンドの言葉に全員が頷いた。


険しい山道を登り、冷たい風に頬を打たれながら彼らは進む。川沿いを探し続けても草は見つからず、焦りが募る。


「こんなに見つからないものかよ」

ガイルが苛立つ。


「大丈夫。条件は合ってる。もう少し探してみましょう」

リリーが冷静に言う。


そして――


「待て、あれじゃないか!」

ガイルが叫んだ先、小川のほとりに鮮やかな緑の草が揺れていた。


「チャミローミレ草!やった!」

リリーが駆け寄る。


ついでにムーンリリーやドリームワードまで見つかり、思わぬ薬草の宝庫に歓喜するリリー。だが帰り道、マリスが案の定足を滑らせて捻挫する。


「いったぁ!ちょっと誰か助けて!」


「マリス…本当にしょうがないな」

レンドが苦笑する横で、セリアが呆れ顔になった。


「こんな時に怪我なんてしないでよね」


「なんで俺たちのパーティって毎回トラブル続きなんだ」

ガイルがぼやくと、マリスが即座に食ってかかる。


「それはあんたがいつもケチつけるからでしょ!」


町に戻ったリリーは薬草を用いて解毒薬を調合し、人々を救った。教会を借りて患者を収容し、次々と回復していく人々を見て、メンバーは肩を叩き合った。


「やったわね」

リリーはガッツポーズをとる。


「リリ姉、すごい。この解毒薬バッチリだよ」

セリアは称賛した。


「なぁ、俺たち、もしかして伝説のパーティになるんじゃね?」

ガイルが笑い、皆も笑顔になった。


――それが、このパーティの最も幸せな時だったのかもしれない。


奴隷商人を捕らえるため、レイジングハートは港の倉庫に突入する。

荒くれ者たちが待ち構え、激しい戦闘となった。レンドは三人に囲まれて腕を負傷しながらも勝利し、奴隷商人を捕らえることに成功した。


しかし、その傷は冒険者として致命的なもので、レンドは冒険者引退を余儀なくされた。やがてパーティも解散し、それぞれが新たな道を歩むことになってしまった。


そして、この事件の裏で動いていたのが――

「闇の商人」と「ドクター」と呼ばれる科学者だった。彼らはファルコナーを離れ、別の地へ逃げ延びていった。


読んでくださり、ありがとうございます。

誤字報告も大変感謝です!

ブックマーク・いいね・評価、励みになっております。

悪い評価⭐︎であっても正直に感じた気持ちを残していただけると、

今後の作品作りの参考になりますので、よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ