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第59話(同じ買うなら値切らにゃ損損)

(レイ、フォルスナーに行く旅の準備も進めた方が良いでしょう)

アルが話しかけてきた。


「そうだよね。バックパックも買わなきゃならないんだった」

レイは頷きながら言った。


(旅用のマントもですね。ところでレイの持っているそのバックパックはどこで買ったんですか?)


「ああ、これ?これは本家の方の雑貨店だったかな」

レイは背中のバックパックを軽く叩いた。


(本家ですか?)

アルが疑問を投げかける。


「うん、雑貨店なんだけど、本家と元祖の二つの店があってさ」とレイは手を広げて説明した。


(ほう、本家と元祖とは、どっちもウチが最初とか言いそうですね)とアルが興味深そうに応じる。


「まあ、そんな感じかな。それで値段も張り合ってる感じなんだけど、変なルールがあるんだよ。」とレイは肩をすくめた。


(それはどのようなルールなのですか?)とアルが問いかける。


「本家で買おうとして高いから元祖に行くと言うと、値段を安くしてくれるんだ。でも、値引き交渉を一度やってからその店を出ちゃうと、次にその店に入っても値引き交渉に応じてくれなくなるんだよ。逆に、元祖で交渉してから本家に行っても、同じように値引きしてくれないんだ」とレイは手でサイクルを描くようにして説明した。


(面白そうですね。買わなければならないものもありますし、値段だけでも見にいきませんか?)とアルが提案する。


「あの二つの雑貨店は両方とも癖が強いんだよ!」とレイは苦笑いしながら答えた。


そこには「本家」と「元祖」の看板が掲げられた二つの店が向かい合っていた。


「まずは元祖の店に入るよ」

レイはアルに告げ、元祖の店に入った。


店内は所狭しと商品が並び、棚には冒険用のバッグやマントがずらりと並んでいる。光沢のある革製品に目を奪われながら、レイは値札を確認した。


ラミア革バック(大) 価格三十万五千ゴルド

『神秘の森で紡がれた奇跡の逸品、ラミア革のバックパックを手に入れて、冒険の一歩を踏み出そう!ラミアが宿す魔力があなたの背中に。どんな過酷な旅路も、このバックパックがあれば軽やかに、そして華麗に進むことができます。』


ラミア革のマント 価格三十万ゴルド

『伝説が宿るこの一枚、ラミア革のマントを纏い、貴方の冒険に魔法をかけましょう!これは貴方を守る魔法のマント。ラミア革の防御力と魔力は、危険な冒険でもあなたをしっかりと守ります。』


(だめだ、終わった!)

レイは思わず声を上げた。


(これは少し高額ですね)

アルが冷静に答える。


(いや、値段も何だが、この売り文句見てると鳥肌が立ってくるんだ!)

レイは身震いした。


(少々過剰な言葉だとは思いますが)


(背中からラミアが出そうで怖いわ!)

レイは目を細めて呟いた。


(レイ、素材違いで他にもあるかもしれませんよ。次に行きましょう)


ワイルドボアの皮マント 価格十四万ゴルド

『冒険者たちよ、今こそその肩にワイルドボアの革マントを纏い、どんな挑戦にも立ち向かおう。このマントが貴方に与える勇気と力は、無限大だ。』


(アル、値段が目に入ってこない。この説明が頭の中でこだましてきそうだ)レイは目を押さえた。


(レイはこの過剰な商品説明がダメなんですね)アルが納得する。


ラージラットの毛皮マント 価格 八万ゴルド

『軽やかさと機動力を極めるラージラットの毛皮マント、影の如く忍び寄る冒険者の貴方へ!』


(ふむ、では商品説明にモザイクをかけておきます)

(もざいく?)


ツイル生地のマント 価格 五万ゴルド

『************』

ツイル生地のバックパック(大) 価格 三万ゴルド

『************』


(あ、紹介文のところがなんかモヤモヤしてる)

(レイの目の内側に微小なディスプレイを形成し、視界の特定部分をモザイク化することで、見たくないものをぼかしています)

アルが説明した。


(いや〜凄いなこれ、あ、他に目を移したらモヤモヤが違うとこにも見えた)

(まあ、まだマニュアル操作なので、すぐには切り替え出来ません)


(それより、レイ、このツイル生地で作られているマントとバックパックが一番安いようです。値引き交渉しますか?)


(いや、本家にも行ってみるよ)


サラマンダー革バックパック(大)価格 四十五万ゴルド

ラミア革バック(大)価格 三十万三千ゴルド

ツイル生地のバックパック(大)価格 三万ゴルド


(やっぱりこっちでも一番安いのはツイル生地のバックパックなんだね)レイは確認する。


(値段も一緒ですね)


魔法織物のマント 価格 三十三万ゴルド

ワイルドボアの皮マント 価格 十四万ゴルド

ツイル生地のマント 価格 五万ゴルド


(なんか視界がモヤモヤしてるのって、ちょっと見てみたくなっちゃうね)

レイは好奇心に駆られる。


(いつでも外せますが、どうしますか?)

(うーん)


(こちらもレイがかなり寒くなるような、商品説明になってますよ)

(くそっ、怖いもの見たさが…ってこんなことで悩んでる場合じゃなかった)


(では、買うものはツイル生地のマントとバックパックで良いですか?)

(それでも銀貨八枚だよな〜)


(では、店員にこう言ってください…)


そして、アルと作戦会議を行ったレイは店員を手招きした。


「いらっしゃいませ!」

店員が元気よくやってきた。


「ツイル生地のマントですか?五万ゴルド銀貨5枚ですね」


「そうなんですか?本家の店だと四万五千ゴルドで売ってくれるって言ってましたよ」

レイは少し笑顔を浮かべながら答えた。


元祖の店員は少し考えた後、微笑んで答えた。

「そうですか…では、四万ゴルド銀貨四枚では如何でしょう?」


レイは考えた後、こう言った。

「じゃあバックパック(大)も一緒に買うからって言ったらいくらにしてくれますか?」


「そうですか…では、マントを三万五千ゴルド、バックパックを二万五千ゴルドの合計六万ゴルドで銀貨六枚にしましょう」


レイは商品のチェックを終え、満足げに小さく頷いた。

「ありがとうございます。でも、もう一度本家の店を見てから決めます」


そう言うと、元祖の店の扉に手をかけ、そっと店を出ようとした。


「お客さん、一度出て行ったら、もう値引き交渉はしませんよ」


「はーい」

レイは手を挙げながら店を出た。


(アル、これで良かったの?)

(はい、本家に行きましょう)


「いらっしゃいませ!」

本家の店員が元気よく迎えた。


「ツイル生地のマントですか?五万ゴルドですね」


「へぇ、高いねぇ。あっちの店はマントを三万五千ゴルドまで下げてくれたよ」

レイは軽く肩をすくめて言った。


「そうですか。じゃあウチもそこまでは値引きしましょう」

店員は笑顔で答えた。


「おお、さすが本家は違うね。一気にそこまで下げるなんて」

レイは驚いた様子を見せた。


「まあ、商売ですからねぇ」

店員は肩をすくめた。


「ああ、ちなみに元祖さんは、バックパックも一緒に買うと言ったら…」


「言ったら?」店員は興味深そうに前のめりになった。


「いくらだったかな〜。端数をビシッと切っちゃったような?」

レイは考え込むふりをした。


「いゃ〜お客さん、ウチは流石にそこまで引けないかな〜」

店員は困ったように笑った。


「じゃあ、合計でいくらなら引けるの?」


「うーん、五万八千ゴルドですかね」

店員は少し考えてから答えた。


「じゃあ、それで!」


「エー?エー?マイドアリ?」


「いやあ、良い買い物でした」

レイは店員の手を取ってブンブンと振り回した。


レイはアルに心の中で話しかけた。

(アル、うまくいったよ。ちょっとドキドキしたけど銀貨六枚を下回っちゃった)


(はい、レイ。見事な交渉でした)

アルの声が少し誇らしげに響いた。


レイは満足げにうなずき、戦利品を片手に店を後にするのだった。


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