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第5話(本来の力)

‘24年8月3日 改稿しました。アルのセリフが長すぎたので区切りました。限定強化の具体例を追記しました。

次の日、レイは気分を切り替えて再びダンジョンに向かうことにした。どうやら頭の中の声は一時的なものではなく、何かが本当に起きているようだ。これを無視するわけにはいかない。


ダンジョンに入ると、体が以前よりも動くことに気がついた。ゴブリンの攻撃を簡単に避け、逆に素早く反撃することができた。たった一日で自分でも信じられないほど強くなった気がする。


「ナノボットってやつのせいか?これ、悪くないな!」

レイがつぶやいた瞬間、耳に突然アルの声が響いた。


「レイ、ワタシは、特にナニもしてません」


「うおっ、びっくりした!いきなり声を掛けるなよ、心臓に悪い」

レイは胸に手を当てて息を整えた。


「大丈夫です。止まってモ治せマす」

アルは淡々と答えた。


「いや、そういう問題じゃないんだが…。それより、何もしてないってどういうことだ?オレ、明らかに以前より強くなってるぞ?」

レイは疑問の表情を浮かべた。


「レイ、それはアナタの体が完全ニ治癒されたカラと推測しマす。アナタの体を修復しましたガ、それにヨり本来の力を取り戻したダケなのデす」アルは冷静に説明を続けた。


レイはその言葉に少し驚きつつも、理解しようと頷いた。


「人の身体は潜在的ナ力を持ってイマすガ、傷や疲労の蓄積にヨリその力が抑えられているノです。全身治療ノ効果で、アナタの体は最良ノ状態ニ戻りマした」


「ワタシが力を貸さなくテも、身体の手入れサえ出来ていレばこれくらい動けタのデす」

アルは誇らしげに語った。


「なるほど…つまり、オレの体は本来これほど動けたってことか…」

レイは自分の力を改めて感じた。


「ハイ、その通リです。自分が本来持っていた力ヲ信じテくだサイ」


レイはその言葉に感銘を受け、体の手入れを一層怠らないことを決意した。


「よし、これからは体の手入れを入念にやる」

レイは力強く宣言した。


「手入レは、ワタシがシマスので、レイは栄養素ヲキチンと摂取してくだサイ。朝、ニンジン残しマしたよね」


「オレの決意はニンジンを食べることなのか…?」

レイは肩を落とした。


その後も順調にダンジョンを進み、ついに五階層に再び到達した。以前のような不安はなく、体が軽く、視覚や聴覚も鋭くなっている感じがした。


レイはダンジョンの奥に進みながら、自分の力を試していった。ゴブリンメイジやゴブリンアーチャーを相手にしても、全く遅れを取ることはなかった。


ゴブリンメイジが魔法を打つ前に飛び込んで袈裟斬りにし、ゴブリンアーチャーの矢は剣で弾いてから一突きにした。ゴブリンナイトは剣を合わせることもなく、真っ二つにした。


「おお、まるで別人みたいだ」

レイは興奮気味に言った。


その後、レイは何度もこのダンジョンを周回した。

そして、壁の奥に一つの宝箱を見つけた。慎重に罠を確認しながら開けると、中にはロングソードが入っていた。


「これはいい、探してた装備だ!」レイは満足そうに言った。


「普通に、鉄のロングソードに見えマスが?」アルは冷静に返した。


「確かに普通のロングソードだけど、買えば高いんだよ!」

レイは嬉しそうにロングソードを手に取り、微笑んだ。


その夜、宿屋に戻ったレイはベッドに横たわりながらアルに問いかけた。


「なぁ、アル。今日は宝箱も見つけたし、ゴブリンアーチャーとかゴブリンメイジも楽に倒せたよな」

と自慢げに言った。


「ソウデすね。相手にナラなかったようデす」

アルは冷静に返す。


「で、オレがその金属とかを食べれば、アルが強化されてオレも強くなれるの?」レイは興味津々に尋ねた。


「ハイ、今日はレイの本来ノ力だけでしタが、ナノボットの個体数が増えれば全身ヲ強化できマす。今でも、限定的に強化は可能デす」


「限定的な強化って、何がどうなるんだ?」

レイは眉をひそめた。


「デハ、少し試してみマしょう」


アルが応じると、突然レイの視覚が鋭くなった。天井の板が細かい木目まで見えるほどアップで視認できる。


「うわ、天井がこんなに見えるのか…」

レイは思わずつぶやいた。


次に、聴覚が強化され、隣の部屋での密談がはっきりと聞こえてきた。「…明日の朝には出発する予定だ。誰にも見つかるなよ…」


「これ、隣の部屋のヒソヒソ話だよな…すごいな」

レイは感心した。


「コレが、限定的ナ強化デす。部位や時間ヲ限定すれば、今でも強化ハ可能デす」

アルが説明した。


「すごい…でも、これってずっとは無理なの?」

レイは少し残念そうに言った。


「ハイ、継続的ナ強化はナノボットの個体数ガ増えナければ困難デす。ソノためにも、近くに大きナ河川か鉱山はアリませんか?」


「えーっと、大きな川は知らないけど、鉱山ならここから南の大街道を越えた先にあるって聞いたことがあるな」

レイは記憶を辿りながら答えた。


「デハ、そこに行きまショウ」


「かなり遠いよ。馬車でも一日かかるらしい」


「今のレイなら楽ショウです。アナタの身体ハ、以前の状態に比べて著しく向上しています」


「そうか…」


レイは少し考え込みながら、それでもアルの言葉に少し安心した。

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