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第55話(これ以上褒めても何も出ませんよ)

ポイズンスパイダーの巣を抜けた先に、ぽっかり空いた休憩部屋があった。

地図によると、この部屋の奥が祈りの洞窟・地下一階層の最深部。ボスのガーゴイルが待ち受けているという。


蜘蛛と石像――

どちらも待ち伏せ型の魔物なので、その間に挟まれたこの部屋には、ほとんど魔物が入ってこないらしい。


レイはちょっと荷物を整理したかった。幸い、この部屋は使えそうだ。


中に入ると、魔石ランタンの柔らかい光が目に入った。誰かが先に入っているらしい。


「あ、ラーヴァさん、この間はどうもです」

声をかけると、焚き火のそばで休んでいた男が顔を上げた。


「おお、あの時の兄ちゃんか。ちゃんと分け前もらえたか?」

ラーヴァは気さくに笑って応じた。


周囲にいたパーティメンバーも最初は「誰だ?」といった顔をしていたが、ラーヴァが言った。


「ジェネラルを肉弾戦で吹っ飛ばした男だ」

とたんに、空気が変わった。驚きと好奇心が入り混じった視線が、レイに集まる。


オークジェネラルの件は、ギルド内で噂になっていたらしい。


「実力を隠してたんじゃないか」

「素手でオークを沈めたってマジか」

「今年一番成長した冒険者って話もあるぞ」


どれも本人にとっては寝耳に水だった。


が、それ以上に話題を呼んだのは、彼の後ろにある――荷車だった。


「一人でここまで来て、その荷車? 中身、全部ソロで討伐したって?」

「こりゃ立派なランク詐欺だな。アッハッハ!」

笑いながらツッコんできたのは、中衛の槍使い、サリク。


「こんな荷車引いてダンジョンに入る人、初めて見たよ。前代未聞だね」

大きな赤盾を背負ったヴィーゴも感心したように言う。


「何これ……ラージラットは急所一突き、センチピードも傷が浅くて綺麗」

斥候兼弓使いのキリアンが、採取済みの魔物を手に取って唸る。


「こっちの瓶、すごいぞ。ダークモスの鱗粉を瓶詰めって……何枚分の翅使ったんだ? アッハッハ!」

「この糸も異常だな。ポイズンスパイダーの糸、一本ずつ丁寧に巻いてある。巣ごと巻いてコシャコシャにするのが普通なのに、すぐ使えるレベルだぞ」


褒め言葉の雨あられ。もうレイは居心地が悪くてたまらない。


(レイ、顔が引きつってますよ)


「お褒めに預かり光栄です、っと。あー、いや……その、恐縮です」

光栄が迷子になっている。


「それにしても、本当に一人で来たのか? しかも、これだけの獲物を?」

「だろ? ジェネラルをフラフラにさせたって話、俄然信憑性増すよな」

「Bランクって言われても驚かないわ。オレらより下って感じがしない」


「ところでさ。こんだけ強いなら、いろんなパーティから誘い来てるだろ。なんでソロで潜ってるんだ?」


「えっと、それは……」


言い淀んでいると、何か視線を感じた。……キリアンとヴィーゴ、顔が似てるな?


「……って、二人は兄弟だったんですか!」


「おっ、気づいた? オレが兄のキリアン。三十四」

「オレが弟のヴィーゴ。三十二!」

「俺が三十三で、サリクが三十二だから、まあ似たような年齢だな」


(誰得情報ですかね)

(……うん、聞いたオレも若干困ってる)


一通りの紹介が終わったところで、やっと話を振り返す余裕ができた。


「そういう皆さんはどうしてここに?」


「ここを地下二階層へのアタック拠点にしてるんだ。ボスを倒して下まで降りても、まともな休憩所がまだ見つかってなくてさ」

キリアンが答える。


地下二階の入り口では、まずヘルハウンドに襲われる。

突破しても、階段前にアイアンゴーレムが構えていて、そこでも時間を取られる。

その間にヘルハウンドが再出現して挟撃されるという、悪夢のような構造らしい。


「他の道も探してるんだが、入ってすぐ左はオーガ、右は行き止まり。階段を降りてから右に行けばラミアの巣。

今回はその奥を見に行く予定なんだ」


「へぇ、ほぅ……」


レイが素直に相槌を打っていると、頭の中にアルの声が響いた。


(レイ、そろそろ晩になります。保存食を食べて休みましょう)


「えっ? もうそんな時間?」


(はい、鐘で言えば四つ鳴るまで篭ってました)


どうやら夢中になりすぎていたらしい。

レイは慌ててバックパックから干し肉とパン、水筒を取り出した。


「そういやレイ、ソロで野営だと見張りとかどうしてたんだ?」

キリアンの質問に、レイは思った。


オレが知りたいです!


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