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第48話(バックパックも色々)

出会い頭のサラの強烈なハグと肉球攻撃に、なんとか自分の理性を保ったレイは、二人を部屋に招き入れて再会を喜んでいた。


「ここには宿屋が一軒しかないと聞いてたので、もしかしたらレイ殿が泊まってるかもと思ったのだ。宿帳に名前を書こうとしたら、上にレイ殿の名前があって。それで店主に『この御仁の部屋はどこだろうか?』と聞いたら…」

とフィオナが笑いながら語った。


「それで部屋が分かったから、突撃したのニャ!」

サラがノリノリで加わる。


さすがはファンタジー世界、プライバシーという概念はないようである。


「でも、お二人とも早かったですね」

レイが言うと、フィオナが続けた。


「いくつかセリンで依頼を受けようとしてたのだが、依頼を受ける直前になって、アーマードセンチピードの甲殻の入手依頼が入れ替わったのだ」


「何でも販売の目処が立ったから、大量に仕入れたいとかで依頼料もアップして、数も倍になったので早めにたつことが出来たんだ」

フィオナは嬉しそうに話した。


「ソ、ソウナンデスネ…」

棒読みしか出来ないレイだった。その攻殻のいくつかはヘルメットとして売られることになるのだろう。


※※※


フォルスナー行きの話がまとまりかけたとき、レイの持ち物を見たフィオナとサラが同時に首を振った。 


「その荷物では旅は無理だな」

「軽装すぎニャ!」


旅に必須なのは——とフィオナが指を折る。 


「寝袋、防寒マント、替えの服と下着。魔石ランタンに火打石、薬草かポーション。非常食、それを全部入れる大型バックパックがいるぞ」


「あと硫黄も持って行くなら袋ごと入れ物がいるニャ」


ところが問題が浮上する。町の門では「自分用以上」の荷物に税金がかかるのだ。大量の硫黄を抱えて入れば、入場税は確定。 


「だから硫黄はセリンに置いていったほうが良い」

「準備も全部セリンで済ませたほうが早いニャ」


しかし、シルバーホルムまで出てきて、セリンに引き返すのは移動の無駄になるのではないか?そんな迷惑をかけられないとレイが言うと、二人は即座に首を振った。


「命の恩人に恩を返すのは当然だ」

「むしろまだ返しきれてないニャ」


アルもこの世界での税の徴収方法には興味があったようだ。税金の話をしている途中で、これを聞いてあれを聞いてと、質問の仲介役みたいにされてしまった。おかげで町や村によっても、通行税や入場税が必要なところがあると分かった。


「資源が豊かで経済が回っている町や村は、入場税を取らないことが多い。逆に、貧しくて治安も悪い地域ほど、通行税や入場税をきっちり取ってくるんだ」


なるほどな、とレイは感心しつつ、ふとアルの話を思い出す。


アルの生まれた所でも、各街で税金の納め方が異なるらしく、鉱石一つをとっても、税金の納め方が六つや七つもあるそうだ。そんなに税金を取られたら、魂まで持ってかれそうだ。


そういえば…。フィオナたちとセリンのレストランに行ったとき、二人とも着替えてきていた。

旅の荷物には、服の替えやら寝袋やら、色々必要になるはず。


「フィオナさん、サラさん。バックパックって、どれくらいの大きさが必要なんですか?」


レイが素朴な疑問を投げると、フィオナが少し考えてから答えた。


「大きさか……人によるがな。フロントパックとバックパック、両方パンパンに詰めて、両手にカバンを抱えて旅してる人もいたな」


笑いながら話すその様子に、ちょっと想像が追いつかない。


「フィオナも私も、バックパックはオーダーメイドなのニャ!」

と、サラが自慢げに胸を張った。


「実物を見せたほうが早いな」

そう言って、フィオナが立ち上がる。


「フィオナのバックパック、すごいのニャ! 底がが二重構造で、魔石を入れると底が冷たくなるのニャ!」


サラが興奮気味に説明するが、レイにはちょっと意味がわからなかった。


「下の部分にフロストスライムの層があってな。魔石を触れさせると、その性質で冷たくなるんだ」


そう言いながら、フィオナが実演してみせた。


「このサイドポケットに魔石を入れて……。そして、こっちの底の部分、触って見ると良い」


「……あっ、本当だ。じわじわ冷たくなってきた!」


この構造を考えた人は、フロストスライムの性質――自分の粘液を刃のように凍らせて攻撃してくる特性をうまく利用して、食料用の冷蔵コンパートメントを作ったらしい。

食べ物が腐りにくく、暑い時期にも重宝するという。


そのほかにも、矢筒を固定できるベルト、ナイフを収納できるショルダーストラップなど、細かい工夫が詰まっていた。


「サラさんのは、どんなふうに作ったんですか?」

レイが興味津々で尋ねると、サラが誇らしげに答える。


「私のは、両手剣を収納できるように、フロントポケットに鞘袋を付けてもらったのニャ!」


「えっ、それって……背負ったまま抜けるんですか?」


「……抜けなかったのニャ! なんでバレるのニャー!」


「いや、位置的に抜けにくそうだったから。サイドポケットのとこに鞘袋を移せば、抜けるようになると思いますよ?」


「それ、名案だニャ! すぐ付け直してもらうニャ!」


レイの提案に、サラは目を輝かせてうなずいたのだった。

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