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第346話(許された接触)

龍神の思念がアルの意識を通じて、レイの脳裏にも響いた。

(…お主は…インテリジェンス・セラフィムか?)


その瞬間、霧が少しずつ晴れ始め、視界が戻る。レイの目に飛び込んできたのは、必死の形相でアクアウォールを張るリリーの姿だった。思わず胸をなで下ろす。


だが、安堵も束の間――視線を少し横にやると、サラが地面に横たわっているのが見えた。


(サラさん…!)


胸の奥がざわつき、心臓が跳ねる。仲間たちの無事を祈る間もなく、新たな緊張がレイを襲う。

(アル、サラさんが…)

(分かりました。龍神に少し待ってもらうよう話します……レイ、サラさんのもとへ向かってください)


「サラ、大丈夫か?」

「無茶しすぎよ」


フィオナはサラの顔色をうかがい、声をかける。

「痛いところはないか?」


セリアも横から近づき、手を差し伸べながら言った。

「すぐ手当てするから」


レイはサラのもとへ駆け寄った。呼吸音がかすかに聞こえる。無事ではないが、確かに息づかいがあった。


「アル、サラさんの状態は?」

(確認します……落下時に頭部への損傷はありません。ただ、右腕に骨折、落ちた側の脚にはすり傷、さらに肋骨にひびが入っています。尻尾の先もブレスで焦げています)


レイはサラの腕をそっと支え、焦げた尻尾の跡に目を走らせた。胸の奥で緊張が走る。


「アル、サラさんを完全に治せるか?」


フィオナ、セリア、リリーはサラの様子に目を凝らし、息を潜めて見守っている。同時に、目の前の龍神の存在も頭から離れない。焦りと警戒が入り混じる空気の中、レイはただ、アルの返答を待った。


(腕の骨折や擦り傷、肋骨のひびの処置はすぐ可能です。ただし尻尾の先の焦げた部分は再生治療が必要です。材料が不足しているため、現時点では応急処置しか行えません)


サラの眉がわずかに緩み、痛みにしかめていた顔が少し落ち着く。


「……うぅ……」

サラがかすかに声を漏らす。


(痛みは和らいでいます。腕と擦り傷は安定しました)

レイはほっと息をつく。胸の奥でざわついていた緊張が、わずかに緩む。


サラのまぶたがゆっくりと開き、目がこちらを捉える。


「……少年……?」

かすれた声に、生きている実感がこもっていた。


「龍神はどうなったニャ?」


「サラさんのおかげで、ナノボットは無事送り込めました。今、アルが龍神と意思をやり取りして、ちょっと待ってもらってるところです」


サラはふと、自分の尻尾の先端が燃えていたことを思い出した。

「尻尾が…!」と嘆く。


「応急処置は済んでいます。腕や擦り傷と同じく、尻尾も今は痛みを和らげて安定させてあるそうです。ただ、完全な再生には材料が必要らしいです」とレイが説明する。


「尻尾は治るのかニャ?」

「ええ、必ず治ります。後で治療に必要な素材を集めて、再生しましょう」


「良かったニャ……尻尾は自慢だったニャ」

と、サラは感激した表情を見せた。


レイはその表情にわずかに微笑むと、視線を龍神の方へ戻した。

霧の奥、巨体はまだ微動だにしない。


(アル、さっき龍神が言った言葉……“インテリジェンス・セラフィムか?”って、どういう意味だ?)

(私も気になっています。あの言葉には明確な識別意図が含まれていました。つまり、龍神は私を“知っている存在”として認識した可能性があります)


レイは息を詰めた。

(知っている……? じゃあ、アルと同じような存在を、龍神は以前に見たことがあるのか?)


(それは不明です。龍神と接続を再開します。慎重に進めましょう)


霧の中で、龍神の瞳がかすかに光を帯びた。


レイは一歩、龍神の方へ進み出た。

足元の水面が小さく波紋を広げ、霧がわずかにその足跡を飲み込む。


巨大な影が、静かに動いた。

龍神は立っていた体勢をゆっくりと崩し、岩盤を軋ませながら腰を下ろした。そして、まるで小さな存在を見極めるかのように、巨体を低くしてレイの近くに顔を寄せた。


吐息が霧を震わせる。温かな風が頬を撫で、空気が微かに揺らいだ。

それでも、圧倒的な威圧感の中に、敵意は感じられなかった。


(アル……これは、威嚇じゃないよな?)

(はい。むしろ“観察”の意図が強いようです。レイ、恐れずに応答してください)


レイは喉を鳴らし、わずかに息を吸った。

霧の中で揺れる巨大な瞳が、まるで彼の心の奥を覗くようにじっと見つめている。足元の岩が湿って滑りそうになり、思わず一歩踏みとどまった。


「龍神様……あなたは、アルのような存在をご存じなのですか?」

声は震えを含みながらも、確かに龍神に届いたように思えた。


レイが質問したその瞬間に、龍神の頭がさらに低くなり、鼻先がレイの目前まで迫ったからだ。

熱を帯びた吐息が肌をかすめる。レイはごくりと喉を鳴らしながら、ためらうようにその鼻先へ手を伸ばした。


指先が触れるか触れないかの距離で、龍神の瞳孔が細くなった。

そして、まるでそれを受け入れるかのように、巨大な頭が静かに動きを止めた。


(……アル、聞こえるか?)

(はい。思念波が安定しました。龍神は“接触を許可”しています。今なら、深層対話に移行できます)


レイは小さくうなずき、指先をそっと龍神の鱗に触れた。


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