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第343話(龍神の居場所)

レイが思索に沈んでいると、フィオナが静かに口を開いた。

「もしかすると、その龍神様という存在は……シルバーのように、古代遺跡の“鍵”の番人をしているのではないか?」


その言葉に、村長たちが顔を見合わせた。

島の禁忌と、古代の遺跡。

二つの話が、少しずつ一本の線でつながり始めていた。


長は、ゆっくりと言葉を選んで話し始めた。

「昔からこの島ではこう言い伝えられておる。龍神様は“何か大切なもの”を守るためにおわすのだと。ただ、その“何か”が鍵なのかどうかまでは、誰にも分からん」


レイが静かに尋ねた。

「龍神様は“何か大切なもの”を守るためにいる、と言いましたが……それは、なぜ分かったのですか?」


長は目を細め、少し遠い記憶をたどるように語り始めた。

「遠い昔、この島から出ようとした者がいたそうじゃ。その者が“なぜ島を出てはいけないのか、なぜ船を焼いてしまうのか”と龍神様にしつこく問うたのだと。

すると龍神様は我々の話す言葉で、こう仰ったという。『何も持ち出すな』とな」


レイが一歩前に出て、静かに問いかけた。

「龍神様は……今、どこにいるのですか?」


長はしばし考えるように目を伏せ、やがて低く答えた。

「龍神様のおわす場所は、島の北の果ての“霧の谷”の奥だ。誰も近づいてはならんとされておる。谷は常に深い霧に覆われ、道を誤れば二度と戻れぬと言われておるからの」


彼は言葉を切り、レイたちを見渡した。

「昔、その谷に踏み入ろうとした者がいた。だが、帰ってきたのは一人だけだ。その者は“光る鱗を見た”と震えておったという。それ以来、誰も近づこうとはせん」


レイはアルに頭の中で語りかけた。

(アル、シルバーの時と同じで龍神様と話せるんじゃ無いかと思うんだけどどう思う?)


(理論上は可能です。ただしシルバーは協力的でしたが、今回は龍神です。感情次第では攻撃に転じる危険があります)


(ナノボットを魔力鞭に仕込んで遠隔で送り込むことはできるよね。でも、回収できなければ思念は読めないんだよな……)


(直接触れるのが一番早いですが、現実的ではありません)


(じゃあ、シルバーの思念を翻訳したみたいに、こっちから「害するつもりはない」「話がしたい」を言葉にして送ることはできる?)


(可能性はあります。発信だけならできます。ただし、龍神が“言葉”として理解する保証はありません)


(……試す価値はある。触れなくても、伝えられるなら……やってみよう)


レイはランゲのスイッチを切り、仲間たちを見た。

「もしかしたら、龍神様と会話できるかもしれません。霧の谷に行って確認したいのですが……どう思いますか?」


セリアが腕を組み、少し考え込む。

「危険は大きいわね。相手は“神”と呼ばれる存在だもの。でも……本当に何かを守っているなら、その理由を知ることが、この島の謎を解く鍵になるかも」


フィオナが小さくうなずいた。

「可能性はあるな。話がつけば、帰る手段も見つかるかもしれない」


リリーは眉をひそめた。

「でも、相当危険よ。霧の谷っていうくらいだから、霧で視界が保てないかも知れないし、それと、龍神様が怒ったらどうするの?」


「でも、このまま島に閉じ込められるよりは、挑戦する価値があるニャ。波風立てずに行ければ、いい情報が得られるかもしれないニャ」


セリアが少し笑った。

「サラらしい意見ね。でも、正しいかもしれない」


レイがまとめる。

「じゃあ決まりですね。危険は承知の上で、なるべく穏便に行きましょう。まずは長に相談してから、ですね」


レイはランゲのスイッチを入れると深呼吸をして、長に向き直った。

「長、少しお話を伺ってもよろしいでしょうか。霧の谷に向かいたいのです」


長は目を細め、低く声を落とした。

「霧の谷か……一人しか戻れなかった。それでも行くつもりか?


レイは仲間たちを見回し、言葉を選んだ。

「はい。龍神様を害するつもりはありません。話をしたいのです。波風を立てずに、静かに谷を訪れたいと思っています」


「……無益な争いを避けるつもりか。それなら、行くのは勝手だ。ただし、谷に入れば二度と戻れぬ場合もある。それを忘れるな」


レイは深く頭を下げた。

「承知しました。最小限の者で、慎重に進めます」


レンカがレイに話しかけた。

「そこまで危険を犯すのは何故ですか?私たちのためならおやめ下さい」


レイは静かに顔を上げ、真っ直ぐレンカを見る。

「いいえ。オレたちも仲間をチャソリ村に残しています。帰る手段を考えるため、龍神様と話がしたいんです」


レンカは静かにうなずいた。

「そうですか……では、無事に戻れるよう願っています」


こうしてレイたちは、霧の谷に住むと言われる龍神に会いに行くことが決まったのだった。


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