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閑話 大晦日の準備

大晦日のこの日、教会は忙しい。それはエヴァルニアの教会も同じだ。


それは日の入りまでに四つの祭壇を準備しなければならないからだ。

日没から年明けの朝まで、人々は四大神に祈り、新年を清らかな心と体で迎える準備をする。


新年の宴で振る舞われる食材は、四大神に捧げられた後、祝福を受けて

使われる。

教会や神殿では、それぞれの神に対応する四つの祭壇が設けられ、信徒たちは食材を一度祭壇に置き、

祈りを捧げる。


こうして祝福された食材で新年の宴が始まる。


年が明けると、教会や神殿では鐘が鳴り響き、人々は静かに頭を垂れ、神々に祈りを捧げる。

日の出と共に家族や友人たちが集まり、新年を祝う宴が伝統となっている。


この鐘が鳴ると、全員が一つ年を取る。新しい年と共に成長を受け入れ、神々への感謝を込めて祝福された

新年を迎えるのがこの世界の習わしだ。


大晦日の昼前、教会の庭で四つの神々に捧げる祭壇の準備が進められていた。地元の信徒たちが

緊張した面持ちで柱を運び、台座を設置していたが、そこにレイが現れる。


「昔、孤児院で祭壇作りを手伝ってたから、大体わかりますよ」


レイは自信満々に笑みを浮かべ、作業に加わった。


レイはまず、軽く身体能力を強化し、地元の信徒たちが手こずっていた柱や台座を次々に軽々と持ち上げ、

正確な位置に配置していった。


そして、次の瞬間、レイの手が地面に向かう。


「ライズ!」


小声で唱えると、柱の周辺の土が一気に盛り上がり、まるで彫刻のように美しい形で柱を固定していく。


柱一本一本が、まるで芸術品のように土で支えられ、レイは迷いなく次々と同じ作業を繰り返す。


その手際は完璧で、まるで祭壇作りが日常の一部であるかのようだった。

周囲の信徒たちは、その見事な作業にただ呆然と見守るしかなかった。


「これで一段目の柱は全部しっかり立ちましたね」


レイが満足そうに微笑んだ。


しかし、その言葉に周囲の信徒たちは戸惑い、顔を見合わせながら

「一段目?」と不思議そうに呟いた。


「はい、一段目です。次に二段目を作りますから」


と、レイは当然のように言いながら、再び土魔法「ライズ」を使って、

柱の上に新たな天板を乗せるための土を丁寧に盛り上げていく。


セリアがニヤリと笑って言った。


「レイ君がそこまでやるなら、私たちも負けられないわね!」

セリアは一瞬で身体能力を強化し、レイの作業に加わった。


彼女は飾り用の柱や台座を手に取り、スピーディに配置し始める。


「おおっ、負けてられないニャ!」

サラも参戦し、二人が一気に装飾を進める。


その間、レイはさらに土魔法「ライズ」を駆使し、もはや芸術の域に

達したような精密な土の動きで、祭壇の柱を段々に仕立て上げていった。


もともと平らな祭壇を段飾りにするため、天板の下に絶妙な力加減で

土を盛り上げ、その上に次の柱を建てていく。


段飾りはセリン地方で見られる祭壇のスタイルだったが、レイが気を

利かせ、細部にまでこだわって再現していた。


「リリー、どうする?」


フィオナが笑いながら声をかけると、リリーも笑みを返した。


「もう、やるしかないわね」


二人も手分けして、祭壇の装飾を整え始めた。



「なんか、今年の祭壇すごくないか?」


周りの信徒たちが騒ぎ始めたのも無理はなかった。

段飾りの柱が立ち並び、土の彫刻で支えられたその姿は、

まさに神々への捧げ物にふさわしい荘厳さを備えていた。


レイは柱を見上げ、満足そうに頷くと、笑顔で言った。


「これで完璧ですね!皆さん、素晴らしい仕事でした」


そして、この年から、エヴァルニアでは「大聖者飾り」として、

レイが作り上げた段飾りの祭壇が新年の定番として採用される

ようになったのだった。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。


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