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第288話(サティ、戦場へ)

サティは、ギルドで「範囲魔法使いを募集中」と聞いて即座に反応し、自らがイシリアの

宮廷魔導士であることを明かす。

これはレイの近くに行くための絶好の機会であり、魔物討伐に参加するにはギルドに一定ランク以上で

登録する必要があると理解している。

彼女の名を聞いた受付嬢は驚き、確認のためギルドマスターのもとへ急ぐ。


「ギ、ギルド長!大変です!イ、イシリア王国の宮廷魔導士がギルド登録を希望されています!」


「何が大変なんだ?いつものようにランク査定をすればいいだろう」


「それが……窓口にいらっしゃったのが、あの“紅蓮の魔女“こと戦略級魔法使いのサティ様なんです!」


「ぶっ……なんだとぉ〜っ!!」


「しかも、本人は『魔物退治なら手伝える』とおっしゃっていまして……。

 ですが、ギルドの規定では、低ランクの者に魔物討伐は認められていません。

 どう対応すれば……?私が低ランクを告げたら、怒られて炭にされるかもしれませんよ!」


「本当にサティと名乗ったのか?」ギルド長は訝しげに尋ねた。


「はい、こちらが身分証です」


受付嬢は、手渡されたサティの身分証をギルド長に見せた。

それは確かに、イシリア王国の宮廷魔導士として発行された正式な身分証だった。

ギルド長はごくりと唾を飲み込む。


「……Cランクだ。Cランクから始めてもらえ。」

そう言うと、身分証を受付嬢に返した。


こうして、サティはギルドのCランク魔法使いとして無事に登録されたのだった。


サティは、レイからの依頼を受けた形でイーサンという人物とともに、レイが使っていた馬車に乗り込み、

エヴァルニアと帝国の国境付近までやってきた。

馬車を降りると、少し離れた場所でレイが「イーサン、こっちだ!」と手を振りながら呼んでいるのが見えた。


ああ、レイがすぐ近くにいる。


サティの胸は高鳴った。かつての幼い面影を残しながらも、彼はすっかり成長していた。

銀髪に鮮やかなエメラルドグリーンの瞳――その大きな瞳を見て、サティはようやくここまで

たどり着けたことを実感した。


しかし、サティの感慨深い思いをよそに、レイは淡々と指示を出し始めた。


「フィオナさん、あの内の二名をセリアさんのところに案内してもらえますか?」と、近くにいる女性に声をかけた。


「分かった。誰でも良いのか?」とフィオナが確認すると、レイは短く頷いて答えた。

「はい。一応、サブについてもらうだけです。セリアさんに言って、厳しそうなところに入れてもらってください」


フィオナはすぐにサティと、彼女の隣に立っていた別の女性の魔法使いを指差し、声をかけた。

「そこの女性二人、こっちに来てくれ!」


突然の指名に、サティは戸惑いを隠せなかった。目の前にレイがいるのに、別の場所に

連れて行かれることになるとは思っていなかったのだ。


「えっと……」と口を開きかけたが、フィオナは有無を言わさぬ調子で促した。


「時間がないんだ!こっちで打ち合わせをするから、早く来てくれ!」


サティは一瞬迷ったものの、一緒に戦えばいずれ話す機会があるだろうと考え、フィオナに従うことにした。

そして、セリアという人物の元へ向かって歩き出した。


セリアの元に案内されると、まずサティがどんな魔法を使えるのか問われた。

「火魔法が得意です」とサティは答え、同時にセリアやハーフエルフのフィオナを観察した。


女性とパーティを組んでいるのかしら?

フィオナの装備を見て、サティは考え込んだ。神殿騎士のようにも見えるけれど、教会の関係者かもしれない。

そういえば、以前の晩餐会では彼女がレイの隣に座っていたっけ。


これは要チェックだわ。

サティは心のメモ帳にしっかり記憶を刻んだ。


一方、セリアは作戦について説明を始めた。


「魔物が近くまで来ますが、ここには魔物用の罠があります。それが発動すれば魔物は混乱するはず。

 合図を出したら、魔法で攻撃をお願いします。」


その説明は、どこか大雑把で頼りない印象を受けた。

足止めとか、もっと計画的な戦術はないのかしら?

サティは内心で疑問を抱きつつも、作戦の行方を見守ることにした。


しばらくして、地響きを立てながら魔物の群れが押し寄せてきた。

その姿はまるで軍隊の行進のようで、サティはその統率された動きに思わず息を飲んだ。

だが、魔物たちは罠のある地点に差し掛かると突然動きが乱れ始めた。


意思の疎通を失ったかのように、魔物たちは無秩序に動き回り、混乱状態に陥った。


「今です!魔物に魔法を打ち込んで!」

セリアが合図を送る。


なるほど、何かしらの罠が魔物を混乱させているのね。

サティは状況を冷静に判断し、手のひらに魔力を集中させた。


「エクスプロージョン!」


小規模ながら効果的な爆発魔法を放つと、魔物たちは一掃された。


これなら、なんとかやれそう。

サティはひとまず胸をなでおろした。


その頃、反対側の戦線――レイがいる場所でも、魔物の討伐が終わったようだった。


魔物は平地からだけでなく、山側からも侵入してきた。

どうやら山の中にも、魔物を誘導する仕掛けが施されているようだ。

大雑把な作戦かと思っていたが、意外にも計画はしっかりしているのかもしれない。

サティは思い直し、その作戦を再評価することにした。


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