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第239話(たまにはこんな日も良い)

ホテルのダイニングルームでは、豪華なコース料理が次々と運ばれてきた。


最初に登場したのは、香ばしく焼き上げられたビッグマロンの香草焼き。

外はカリッと香ばしく、中はホクホクとした栗の食感が口いっぱいに広がり、ハーブの香りが

食欲をさらにそそる。


「これは…予想以上に美味しい!」

レイが驚きながら口に運ぶと、


「ビッグマロンの香草焼きは、一流の料理人が作っても難しいんだ。これはかなりの腕前だな」

フィオナが満足そうに頷いた。


リリーもワインを傾けながら微笑む。

「これ、ワインと相性がぴったりだわ」


「ニャ!このワイン、焼き物と合うニャ」

サラもグラスを手に嬉しそうに頷いた。


「ふむ、焼き栗とワインの組み合わせは最高じゃわい」

ボルグルもグラスを傾けながら満足げな表情を見せる。


続いて登場したのは、まろやかで優しい味わいのビッグマロンのクリームスープ。

栗の自然な甘みと濃厚なクリームが絶妙に調和し、心まで温まる一品だ。


「これ、すごく癒される味だニャ…」

サラが目を細めながらスープをすする。


「確かに。これすごく濃厚なのに、後味スッキリ」

リリーが頷き、ボルグルも笑顔でスープを楽しんでいた。


お口直しには、みずみずしく爽やかなトクニ梨のシャーベットが登場。

冷たくフレッシュな味わいが、次の料理へ向けて味覚を整える。


「これ、いくらでも食べられそう」

セリアが笑うと、


「そうだな、でも次はメインだから、余裕を残しておかないと」

フィオナが少し笑顔を浮かべた。


メインディッシュには、柔らかく煮込まれたポークとビッグマロンをクリームソースで包み込んだ

ビッグマロンとポークのクリーム煮込みが登場。

豚肉の旨味と栗の甘みがソースと絡み合い、とろけるような味わいを生み出す。


「これ、もう信じられないくらい美味しいです…」

レイが感激しながら、一口一口を大切に味わっていた。


最後のデザートは、ビッグマロンとトクニ梨のデザートタルト。

香ばしいタルト生地に、なめらかなカスタードクリームと果実の甘みが絶妙なバランスで詰め込まれていた。


「こんなに美味しいデザートを食べられるなんて幸せだニャ…」

サラが夢見心地でつぶやく。


「こういうひとときは、何にも代えがたいな」

フィオナが優しく微笑む。


「うん、なんかずっと色々やってきて、こうやってゆっくりすることができませんでしたからね。

 こういう時間って大事なんですね」

レイは穏やかな笑みを浮かべていた。

その表情に、皆の間にも自然とあたたかな空気が流れる。


そこへ宿の主人がやってきて、満面の笑みを浮かべながら尋ねる。


「ディナーはどうだったんじゃ? 満足したか?」


「いや、すごかったです。どれも本当に美味しかったです」

レイは素直に感謝を伝えた。


「そうじゃろう、そうじゃろう!」

主人は誇らしげに胸を張る。


「今回、材料持ち込みだったから二十万ゴールドで収まったが、普通に食べたら八十万ゴールドの料理じゃよ!」


「うーーん…金貨八枚…」

レイの顔がひきつる。次の瞬間、


バタンッ!


という音とともに、テーブルに突っ伏して倒れた。


「キャッ、レイ君!」

セリアが慌てて声を上げる。


「また値段を聞いてひっくり返っちゃったのね」

リリーがため息混じりに苦笑した。


「こればかりは、慣れてもらうしかないのではないか」

フィオナは困ったようにお手上げのポーズをとる。


「まあ、これが少年らしいんだけどニャ」

サラがにやりとしながら肩をすくめた。


「そうだな。威張るわけでもなく、ほぼ自然体でこれまでやってきてるし――

こうやって弱いところを全部出してしまうところも、可愛いところではあるな」

フィオナが、顔を赤らめながら小さく呟く。


「確かに、そんなところが彼の魅力よね」

セリアも笑顔で頷いた。


「ほら、レイ君、部屋に戻るわよ」

セリアがレイを優しく支えながら立ち上がらせる。


「ありがとう、セリアさん…」

レイは少し恥ずかしそうに笑い、皆に感謝を伝えた。


だが――その時、彼はふと立ち止まり、天井付近を指さす。


「あれ? あの二階の部分、見てください」


「どうしたのだ?」

フィオナが不思議そうに尋ねる。


「あら、あったわね。トマトゥルよ」

リリーが目を細めて見上げる。


「ん? あれはただの観葉植物じゃよ」

宿の主人が答える。

「二階のバーの壁が殺風景だから飾ったんじゃ」


「それ、売ってもらえませんか?」

レイは少し興奮した様子で言った。

「実は、あのトマトゥルの株をずっと探してたんです!」


宿の主人は目を見開き、そして笑った。


「オマエさん、妙なもん探しておるんじゃのう。普通の客はそんなもん気にもせんのじゃが…

 まあ、もうそろそろ片付けて新たな観葉植物に入れ替えるつもりだったから丁度いいじゃろ。

 綺麗さっぱり片付けてくれるなら、譲るぞ」


「本当ですか! ありがとうございます! じゃあ、全部もらっていきます!」


***


レイは思わぬ形で手に入れたトマトゥルの株を、確実に届けるために商業ギルドに輸送を依頼した。

商業ギルドなら輸送のプロが揃っており、扱いにも安心できる。実が落ちたら種だけでも届けられる。

彼はすぐに手続きを済ませ、トマトゥルの株をセリンのセルデンまで届けるよう手配を進めた。


「結構、実がなってたね。あれなら来年の分はかなりの量が取れるんじゃない?」

セリアが感心したように言う。


「そうですね。セルデンもきっと喜んでくれるはずです」

レイは嬉しそうに頷いた。


「それにしても、まさかこんな場所で見つかるとは思わなかったな」

フィオナが微笑みながら驚いた様子を見せる。


「ほんとにね。転んでもタダでは起きないレイ君らしいわ」と言って全員が微笑んだ。



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