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第233話(今まではウォームアップ)

第二回戦はゼッケン二番のイクスという人との勝負だったが特に妨害はなくレイは危なげなく三回戦に進んだ。

次の対戦相手はドワーフのゼラという人だった。


「ボルグルさん、次の対戦相手の人、ドワーフらしいんですが知ってます?」


「アイツは多分ルタのところの倅じゃわい。親父はウォーハンマー使ってるぞい!

 親父は力自慢で有名じゃが息子がどれくらいかは知らんわい」


「なるほど、でも力自慢っぽいですよね!」

とレイが言うと、ボルグルは肩をすくめて答えた。


「ドワーフに走らせるとはな。重いウォーハンマーを振り回すのが得意じゃが、レースではどうなるかのぅ。

 ただ足は遅いが、持久力はあるぞい。力強い足取りで長く走り続けることにかけてはドワーフは侮れんぞい」


「なるほど…でも、レースならスピードが重要ですよね」


とレイは考え込んだ。


「そうじゃ、だが油断はするな。あの短い足でも地道に着実に進んでくるのがドワーフの強みじゃぞい」


「じゃあここからは出し惜しみしないで行きます!」


二回戦は妨害がなかったが、次も妨害がないとは限らない。

犬の獣人は同じ山の隣のブロックだし、ここを突破すると直接対決になるかもしれない。

レイは、次の試合で何か仕掛けられる可能性を考えながらも、むしろこちらから先に驚かせてやろうと

心に決めた。


準々決勝第一試合が始まる。


「ゼッケン一番、レイ選手! そしてゼッケン十三番、ゼラ選手です!」


スタートの合図と同時に、レイはアルのナノボットによる脚力強化を五割増しにして一気に飛び出した。

ゼラとの距離はあっという間に広がる。


「うわー! いきなり差がついた!何という速さだ!今までは力を隠していたのか!」

アナウンスが絶叫する。


「すごいスピードで駆け抜けていく!レイ選手、早いぞ!」


観客のどよめきが響く中、レイはぶっちぎりでゴールラインを駆け抜けた。


それを見ていた隣のブロックの犬の獣人が、驚愕の表情を浮かべていた。耳をピクリと立て、鋭い目でレイの走りをじっと見つめる。


「アイツ…あんなスピード、どこから出してきたんだ?」犬の獣人バルスは唸るように呟いた。


「今まで力を隠してたってわけか…。」


そこに豹の獣人ケンザがバルクの隣に歩み寄り、低い声で話しかけた。


「あいつ、力を隠してやがったな。これだと楽勝ってわけにもいかないな」


バルクはニヤリと笑い返した。


「それはどうだろうな。アイツには精々、重い石の荷物を運んでもらうことにするさ。たっぷりとな」


ケンザも笑みを浮かべた。


「なるほど、たっぷり疲れさせてやれ。次の試合、楽しみにしてるぜ。」


バルクは自信に満ちた表情で、言った。


「そうだな、あの人間に思い知らせてやるさ」


レイが応援席にいる仲間たちの元に戻ると、みんなが笑顔で迎えてくれた。


「圧倒的だったわね」

「ニャ、すごい速さだったニャ!」


「まあ、いつまでも侮られるのは嫌なので、ここからはどんどん攻めますよ」


「そうね、あの犬の獣人も出てきたわね。バルクっていう名前のやつ」

セリアが少し心配そうに付け加える。


「向こう側のブロックのケンザという豹の獣人も勝ち進んだようだ」

とフィオナも続けた。


「見てたよ。次はアイツか…」

レイは考え込むように言った。これから昼を挟んで準決勝と決勝が行われるが、

バルクとの対決は確実に手強いものになりそうだった。


「ま、サラさんのためにもここで負けるわけにはいかないですから。しっかり準備しておきます!」

とレイは決意を新たにした。


サラは微笑みながら「期待してるニャ」と軽く拳を突き出した。


※※※


リリーが露店や屋台から色々買って戻ってきた。


「はい、みんな、屋台で昼食とか色々買ってきたわよ!」


「わしが荷物持ちさせられるとは思わなかったぞい!」


荷物を抱えたボルクルがブツブツ言いながら後ろに続く。


「立ってるものはドワーフでも使うのよ」とリリーが言い返す。


「まったく、女性には逆らえんのう…」


ボルクルはため息をつきつつもと肩をすくめた。


リリーはにこやかに笑いながら、持ってきた食べ物をボルクルから受け取ってみんなに渡していった。


「はい、これはマロンを使ったパン。そして、梨のジュースもあるわよ。

それから、鹿肉のローストもね。それと、エールも買ってきたわ。ボルクル、これで文句はないでしょう?」


「おお、これは嬉しいぞい!」


ボルクルはエールの入った木のジョッキを持って満足げに微笑んだ。

サラもエールを手にしており、二人して楽しそうに乾杯していた。


「ありがとうございます、リリーさん。これで元気が出ます」

レイも笑顔を返した。


リリーが持ってきた昼食をみんなで食べ終えた頃、スタート付近では準決勝の準備が始まっているようだった。

レイは少し落ち着いた表情で、遠くに見える係員たちの作業を眺めていた。


「なんか、もう準決勝の準備をしてるんですね」

とレイが何気なく呟く。


「始まるのが早いのだろうか?」

フィオナも頷きながら、疑問を口にする。


その頃、係員の中に一人、目立たない男が混じっていた。

獣人が、さりげなくレイの荷車に近づき、何かを仕掛けている。

周囲を警戒しながら素早く作業を進めるが、レイやその仲間たちは、

特に異変に気づくこともなく、休憩時間を過ごしていた。


「ニャ、忙しいんだニャ。レースの準備も大変ニャ」

とサラはエールを飲みながら、笑顔で呟いた。


一方で、獣人はそのまま作業を終え、誰にも気づかれることなく静かにその場を去っていった。



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