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第221話(震える秘密の会議)

レイは村の入り口付近で悩んでいた。

神殿に行くべきか、それとも行かざるべきか――。


(……前にもこんなふうに悩んでた気がするな。あれは確か、神殿にいたとき……?)


くだらないと思いつつも、レイは一人で考えに耽っていた。


(レイ、何を悩んでいるのですか?)


アルの冷静な声が、頭の中に響く。


(ああ……神殿には行ってみたいんだよね。

 でもさ、行ったらまた大騒ぎになって、貴賓室に通されて歓待とか……気が引けるんだよ)


レイはため息をついた。


(そんなことで悩んでいたのですか? むしろ、それは好機です。

 貴賓室に通されるなら、普段得られない情報や特別な機会が手に入るかもしれません。

 それに、神殿には貴重な資料や魔法の秘密が隠されている可能性もあります)


アルの言葉に、レイの心がわずかに揺れる。


(……そういう考え方もあるか)


(それに、神殿での騒ぎなんて一時的なものです。

 それより、レイが得られるものの方がはるかに価値があります)


しばらく黙って考えたあと、レイはゆっくりと頷いた。


(分かったよ、アル。そうだな……行ってみるか)


(そうです。それと、神殿に行く前に、レイジングスピリットの皆さんだけに話しておきたいことがあります)


(それって……ボルグルさん抜きってこと?)


(はい。今回は彼に関係のない話です)


(まぁ、ちゃんと話せば外れてくれるだろう)


(はい。ですが、あまり人に知られたくない話になりますので、確実に外れて頂かなければなりません)


(そんなに重要な話なの? だったらもっと早く話してくれても……)


(すみません、レイ。この村にはせいぜい明日の早朝まで滞在すると思っていましたので、

 先延ばしするつもりでした。

 ですがレイがこの村のレースに出ると決めた。レースは三日後ですから、時間に余裕が生まれました)


(……それ、オレが啖呵切っちゃったから?)


(そうとも言えますが、これは結果的に良い機会です。

 時間ができたことで、メンバーの体の調整を行うつもりでした。

 レイは常に最適化されていますが、他の皆さんには少し時間をかけたい部分があります)


(体の調整って、具体的には?)


(まだ詳しくは話しませんが、メンバーにとって重要な施術になります。

 もちろん、同意を得てから進めるつもりです)


(なるほど。確かにそれなら、ボルグルさんに聞かせられない話かも)


(はい。できれば、話をすること自体も気づかれたくありません)


(ええっ、それって難しくない? どうやって外すの?)


(簡単です。彼にサラさんの像の修正を頼めばいいのです。

 すでに文句を言っていましたから、「もっとリアルにできる」と言えば、喜んで協力するでしょう)


(あー……確かにボルグルさんなら食いつきそう)


(ええ。彼が像に集中している間に、私たちは重要な話を進められます)


(よし、それでいこう)


レイは全員を連れて村長のもとへ向かった。


「石像の足が太すぎて、サラさんのイメージが崩れています」と苦言を呈し、

「ボルグルさん、なんとかできませんか?」と頼み込む。


ボルグルは自信満々に胸を張った。


「わしに任せるが良いわい!」


すかさずレイは村長に言った。


「この人、グリムホルトの鐘を直したすごい技術者なんですよ」


村長は感心し、ボルグルに修正を依頼。

ボルグルは早速、像の細部を念入りに確認しはじめ、すっかり夢中になっていた。


その間に、レイは仲間たちを手招きし、誰にも聞かれない場所へと移動する。

バックパックから一枚の紙を取り出し、ピンと張ると、ナノボットが紙へ微細な振動を伝えた。


その紙から――声がした。


「皆さん、初めまして。私はアル。レイの体内で活動しているナノボットです。

 レイの口を借りたことはありましたが、直接お話しするのは初めてですね。

 これからの計画に関わることがあるため、この場を作って頂きました。よろしくお願いします」


セリア、フィオナ、サラ、リリーは驚き、周囲をキョロキョロと見回した。


「どこから声がしてるの?」

「えっ、この声がアルなのかニャ?」


「これは紙を振動させて音を伝えています」

そうアルが説明すると、さらに驚きの声が上がる。


「うわっ、ホントだ! 紙から声がする!」

「すごいな、これ……どうなってるんだ?」


アルは一息置いてから、再び静かに語り始めた。


「声を届ける魔法だと思ってください。

 そして、実は皆さんには個別にお伝えしなければならない、非常に重要な話があります」


フィオナが首をかしげて尋ねる。


「その話、もしかしてメンバー内でも内緒にしたほうがいいのか?」


アルは少し間を置いてから答えた。


「いえ。このメンバーならば、いずれ分かってしまうことです」


リリーが笑いながら言う。


「なら、個別じゃなくても良いんじゃない?」


他のメンバーも次々と頷き、全員が同意したのを見て、アルは「分かりました」と静かに答えた。


そして、告げる。


「皆さんは全員、魔力をお持ちです。

 が、――魔力経路が繋がっていない為、魔法が使えないようになっています」



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