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第213話(ディスカバーランドのアトラクション)

その日、宝箱のあった部屋で一晩を明かしたメンバーたちは、レイからマップの情報を聞いていた。


「じゃあ、残りはレイ君の言ってる右端だけになるのね」

リリーが確認する。


「行き方はどうやって行くニャ?」

サラが尋ねた。


「多分ですが、ここから出たら、右、左、右、左、左、右でまっすぐ進んで、突き当たりを右です。

その先がまだ未確認の場所になります」

レイが説明した。


「では、行ってみよう」

フィオナが意気込む。


「これで行き止まりだったらどうしよう?」

セリアが心配そうに言う。


「そういうことは言わないの」

リリーが注意した。


メンバーたちは互いに励まし合いながら、指示された通りに進むことに決めた。

緊張感が漂う中、斥候のセリアが先頭に立ち、他の仲間たちも続く。


「次は左です。そして右に進んだら、そこから真っ直ぐ次の突き当たりまで進んでください」

レイがマップを見ながら道案内する。


仲間たちは頷き、慎重に進む。


「やっぱり道が狭いな」

フィオナがシルバーを見ながらつぶやく。


「シルバーが何とか通れるくらいですもんね。これ以上狭くなくて良かったです」


一行は隊列を崩さず迷路を進んだ。しばらく歩くと突き当たりが見えた。


「さて、突き当たりよ。ここは右に曲がるとして、次は?」

フィオナが確認する。


「左です。その先は分かりません」


「行ってみるしかないわね」

リリーが言い、仲間たちは再び進んだ。


次の道を進むうちに、期待と不安が入り混じる中、彼らは歩みを進めた。

周囲の静けさが、何かが起こる前触れのように感じられた。


「これで帰れなかったらどうなるんだろう?

このままこの迷路を彷徨い続けるのか…」

レイは心の中で思い悩んだ。

仲間たちの表情にも不安が色濃く映っていた。

全員が同じ思いを抱えていることを感じていた。


やがて迷路のマップが全て埋まると、突き当たりに扉が見えた。


仲間たちはその扉の前に集まり、トラップが無いことを確認して慎重に扉を開けた。

扉の外から中を覗くと、部屋は暗く、奥が見えにくい。


「中はどうなっているの?」

セリアが尋ねる。


「よくわからないけど、何かありそうです」

レイが答え、さらに目を凝らした。


「気をつけて、何かトラップがあるかもしれないわ」

リリーが警戒を促す。


「私が先に行くわ。レイ君は後ろからサポートお願い!」

セリアが言った。


「了解です。行きましょう!」


突然、意味不明の言葉が部屋の中に響き渡った。

レイとセリアは驚いて辺りを見回し、武器を構える。


「この声はなんだ?」

レイが問いかけると、フィオナ、サラ、リリーも部屋の中に入り、耳を澄ました。


シルバーは何の反応もせず、静かに部屋に入った。


その時、アルが声をかけてきた。

(レイ、どうやらここで終わりのようです。これで元に戻れます。この部屋のアナウンスは

 これでお終いと言っています。あまり大したことは言っていませんし、聞き流しても良い内容です)


「そうなの?でも、みんな気になってるから、翻訳してよ!」


(では、レイの口を借ります。いいですか?)


(了解!)


「皆さん、レイを通して私、アルがこの部屋に流れている古代の言葉を翻訳してお伝えします。

 音声データがかなり劣化していますが、なるべく忠実に再現してみます」


仲間たちはレイに注目し、その言葉を待った。

静まり返った部屋の中で、期待と緊張が入り混じる。


「や、ややぁやぁ、みんな…んな!きょききょ今日ははは、ディィディスカバーララランドドに

来てくれてありがががとう!

たた楽ししんで、宝物はゲゲゲットできたかなな?

素敵ききなな冒険を一緒ににに楽しんでくれて、本当にああありがととう!

まままた会える日を日を楽しみにしてるよ。ババイバイ!」


「ちなみに、出口はあちらの矢印に沿って進むと、ここを出られるようです」



アルはレイの口を借りて翻訳を終えた。


「ディスカバーララランドドって…何なのだ?」

フィオナが眉をひそめる。


体の主導権が戻ったレイは「何だそりゃ!!」と驚愕の声を上げた。


あんなに餓死しそうになり、ハーピーの大群に襲われ、迷路を必死で踏破したのに、

まさかこんな遊び心満載のメッセージが待っているとは思わなかった。


仲間たちはレイの反応に思わず笑った。


「本当にこれがダンジョンの中なの?」


誰かが不思議そうにつぶやき、みんなで顔を見合わせた。


フィオナが笑いを堪えながら言った。

「何かおかしかったな、このダンジョン…」


セリアが明るく声を上げる。

「でも、出口があるなら早く行かないとね!」


不安は残っていたが、一同は気持ちを切り替え、出口へ向かって歩き出した。


帰り道は驚くほどあっさりしていた。

転移の門を抜けると、巨大な柱が並ぶ、あの不思議な空間に戻っていた。


それぞれが周囲を見回しながら、思い思いに口を開く。


「やっと帰ってこれた!」

「ダンジョンの入り口近くまで飛ばされたニャ」

「何だか夢を見ていたような感じね」

「何だったのだろうな」


そのとき、アルがレイに語りかけてきた。


(レイ。私の見解では、この施設全体は、謎解きや迷路、そして山の中腹にあった遊具までを結ぶ、

 転移装置を備えた古代の“遊園地”だった可能性があります。

 仕掛けやメッセージが多かったのも、冒険の楽しさを伝えるために設計されたものかもしれません)


レイはやや疲れた顔で、ぽつりとつぶやく。


(命懸けの遊びは勘弁だなぁ…)


(ハーピーはアトラクションに含まれていないと思いますけどね)


(だろうね。長い年月で、遊び場がハーピーの巣になっちゃったんだろう)


(子どもたちの笑い声が響いていた場所が、猛禽類の縄張りに…時の流れは残酷です)


(だな。まあ、俺たちが遊園地を制覇したってことで)


(はい。全力で、命懸けで)


レイは苦笑しながら一歩踏み出した。

冗談交じりの会話が終わると、再び現実に意識を戻し、彼は仲間の方へ振り返った。


「さて、無事に戻って来れたし、切り替えていきましょう。これからどうしますか?」


「そうね。今度こそ、普通に、まっすぐ試験を突破したいわね」

セリアの言葉に、みんながくすっと笑って頷いた。


「かなり回り道しちゃったけど、ここから最短で抜けて試験を突破しちゃいましょう!」

そう言うと、レイはダンジョンの奥へ向かって歩き出した。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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