第209話(ハーピーの襲撃と入り口の消失)
ハーピーは、単体であればCランク。しかし群れになると討伐難易度は跳ね上がる。今、目の前には数えるのが面倒になるほどのハーピーの群れが迫っていた。五人は遊具の影に素早く移動し、戦闘準備を整える。
フィオナは集中し、三本の矢を一度にセットして引き絞った。
矢は一斉に放たれ、空を切り裂いて飛んでいく。
それぞれ異なるハーピーに命中し、三体が撃ち落とされた。すぐに次の三本を引き、再び放つ。
さらに複数のハーピーが墜ち、正確な連射が群れの数を着実に減らしていった。
「まだまだ!」
フィオナは三度目の矢を放ち、空中のハーピーを撃ち抜いていく。
レイも動いた。
「アル、ファイヤーボールだ!」
手のひらから放たれた火の玉は、一羽のハーピーに命中して羽毛が燃え上がる。さらに掌から魔力を鞭のように伸ばし、五メル先の敵を叩き落とした。
「魔力鞭!」
落ちたハーピーに、さらに一撃を加える。
セリアは短剣を手にし、斥候としての俊敏さを発揮する。
「ここは私に任せて!」
彼女は素早く敵の間をすり抜け、接近戦を挑みに行った。ナイフは二本しかないが、
まずは短剣で切り抜ける構えだ。
リリーは大鎌を構えて叫ぶ。
「前に出るわ!」
彼女は群れに突っ込み、鎌を振るって次々とハーピーをなぎ払った。
フィオナは短剣に風魔法を纏わせる。
「ゲイルブレイド!」
風の刃が生まれ、迫るハーピーに命中して吹き飛ばす。
その時、サラが現れた。双剣を手に、ジャンプシューズで空中を飛び回る。
「私も参加するニャ!」
彼女は空中から急襲し、二羽のハーピーを双剣で切り裂いた。
それでも数は減っていなかった。セリアの背後に回った一羽が、彼女の左肩を掴む。
「セリアさん、後ろ!」
レイが叫ぶが、間に合わない。セリアは宙に浮かびかけ、必死に抗う。サラが急行し、双剣で援護に向かう。
フィオナが矢を放った。
「いけ!」
矢はハーピーの足に命中。セリアは掴みから逃れ、地面に着地する。
サラはジャンプシューズで軌道を調整し、回転しながら双剣を振り下ろした。
羽根を切り裂き、連撃でハーピーを叩き落とす。
アルが言う。
(セリアさんの頭上にいるハーピーを、両手のファイヤーボールで蹴散らしましょう)
レイは剣を地面に突き立てて叫ぶ。
「ファイヤーボールッ!」
セリアの上空にいた群れに大火球を放つと、ハーピーたちは慌てて飛び散り、空中で衝突し混乱に陥った。
燃え広がる炎に包まれ、何体も地面に落ちていく。
リリーはセリアの元に駆け寄ると、ポーションの栓を口で抜き、肩に勢いよく振りかける。
「これで回復するわ!」
だがその直後、リリーの背後から別のハーピーが迫る。セリアはすかさずナイフを抜き、
リリーの肩越しに投げつけた。
ナイフは正確に命中し、ハーピーは悲鳴を上げて墜ちた。
「リリ姉、サンキュー!」
「セリアもね!」
レイがつぶやく。
「これじゃキリがないな……」
その時、遊具の向こうから灰色の影が凄まじいスピードで飛来する。シルバーだ。
彼は助走をつけて、密集するハーピーに体当たりを仕掛けた。
ぶつかったハーピーはピンボールのブレイクショットのように弾け飛び、空中に舞い上がる。
群れは驚きと混乱に呑まれ、戦況は一気に変わった。
「さすがシルバー!」
レイが叫ぶと、仲間たちの士気も上がる。
フィオナはその隙を逃さず、三本の矢を放つ。
命中したハーピーたちは悲鳴を上げて逃げ出し、それに釣られるように他の個体も次々と離脱していく。
「ハーピーが逃げてる!」
やがて空は静まり、戦闘は完全に終息した。
サラとフィオナはハーピーの魔石を集めに向かう。レイはセリアに歩み寄った。
「セリアさん、大丈夫ですか?」
「平気よ。でも、傷が残っちゃうかもね」
(レイ、私が治せば傷も消せます)
レイがそれをセリアに伝えると、セリアはぱっと顔を輝かせる。
「えっ、じゃあお願い!」
肩を見せようとするが、レイが慌てて止めに入った。
「セリアさん、ここ外ですから!」
「あら、一緒に温泉に入った仲なのに?」
「もう、セリアさん。そんなに揶揄わないでください……」
その時、フィオナの声が響く。
「みんな、拙い事になった。さっきの戦闘中に入り口が消えてしまった!」
一斉に振り向き、彼女の指差す先に目を凝らす。
確かに、来たはずの道が見えなくなっていた。戦闘の混乱の中で、脱出ルートが閉じてしまったのだ。
「どういうこと?」
「わからない。時間が来ると閉じるのかもしれない。ここにいる限りは安全ではない」
「不味いニャ……三泊分くらいしか食料を持ってきてないのニャ!」
「そうよね、水だってそんなに無いわ。どうする?」
「それに、もし何か危険なものが近づいてきたらどうするの? 私たち、ここで待っているわけにはいかないわよ」
「探すしかないな。周囲を見てみよう」
フィオナの一声で、仲間たちは警戒を強めつつ、周囲の探索を開始したのだった。
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