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第208話(廃墟の遊戯場)

レイと仲間たちは、「鉄の廃墟」と呼ばれるダンジョンから、謎を解いて扉を開いた。すると、見知らぬ場所が扉から見えた。躊躇するメンバーたち。確かにここは地下なのに、扉から見えるのは明らかに外だった。


「これも転移ですね、どこに繋がってるのでしょうか」とレイが言う。


「行かなければ、何も分からないがどうする?」とフィオナが続いた。


「行きましょう」とセリアが言い、リリーも頷いた。


「ニャ!」とサラも続く。シルバーは澄ました顔で立っていた。


レイが一歩進むと、いきなりその場所に飛ばされた感覚がした。

立ちくらみがして、思わず目を瞑る。ゆっくりと目を開けると、彼らは広がる荒れた景色に立っていた。


周囲には古びた建物の残骸や朽ちた遊具のようなものが散乱しており、薄暗い影が長く伸び、

どこか不気味な雰囲気を醸し出していた。


「ここは…何だ?」レイは不安そうに辺りを見回した。


(レイ、酸素摂取量が急激に減少しています。状況を把握する必要があります)アルの声が心の中で響く。


ナノボットがレイの体内で反応し、血流を監視し始める。酸素の濃度が低下していることを確認すると、ナノボットは素早く動き出した。


(酸素不足が確認されました。赤血球の活性化を行います。心拍数が上昇していますが、冷静に深呼吸を)


レイはアルの指示に従おうとするが、息苦しさが襲ってくる。仲間たちも同様に顔をしかめ、困惑した表情を浮かべている。


(呼吸器系の機能を最適化します。お待ちください)とアルが続ける。


周囲の冷たい風と静けさの中で、レイは仲間たちの様子を確認し、少しずつ冷静さを取り戻していった。


「みんな、大丈夫ですか?」レイが問いかけると、フィオナが答えた。


「少し変な感じがするな」


その時、アルがレイにアドバイスを送る。


(レイ、皆さんに深呼吸を促してください。心を落ち着けるのが大事です)


レイは頷き、仲間たちに向かって言った。


「みんな、深呼吸をしてください。心を落ち着けてとアルが言っています」


仲間たちは一斉に深呼吸を始め、緊張を和らげようとした。

レイもその場に合わせて息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。

周囲の不安な気配が少しずつ薄れていくのを感じながら、目の前の廃墟をゆっくり見回した。


後ろを見ると、そこには壁があり、さっきまでいた地下の様子が見えていた。

壁を見上げると、何かの建物のようだったが、淡い灰色と白が混ざった石が、

見たことがないほど整然と並べられた四角い建物を形成していた。

表面は滑らかで、光を受けて微かに輝いている。


入り口と思われる場所には、今までいた地下の景色が映し出されているように薄暗い空間が広がっていた。

その建物の向こうには、周りを囲む山々がそびえ立っているのが見え、どうやら彼らはかなり高い場所に

いるようだった。下には雲海が広がり、まるで白い絨毯が敷かれている。


「ずいぶん……高いところに来たわね……」

リリーが少し苦しそうに言った。


「雲海なんて……久しぶりに見たわ。」


「間違いなく、転移…でしたね。さっきまで地下にいたのに、今は山の上だし…」


「迷いの森と同じってこと?じゃあシルバーもここを知ってる?」

とセリアが言った。


もし迷いの森の転移と同じであるなら、シルバーにも関係があるかもしれない。

メンバーたちは一斉にシルバーを見たが、肝心のシルバーは全く動じておらず、済ましたような顔をしていた。


「アル、シルバーに聞いて、ここも封印が緩んでるの?」レイがアルに頼む。


レイはシルバーに触れながら、アルの言葉を待っていた。

しかし、返ってきた返事は、彼を唖然とさせるものだった。


(シルバーはここは迷いの森とは関係が無い場所と言っています)とアルが告げた。


その言葉を聞いたレイは、驚きと混乱が入り混じった感情を抱えた。

今いる場所がシルバーの知識には含まれていないことが明らかになった。


「つまり、ここは完全に新しい場所ってことか…」レイはつぶやいた。


「どうした、レイ。何か分かったのか?」


「はい、アルがシルバーに聞いたんですけど、迷いの森とは関係が無い場所のようです」


(レイ、続きがあります。シルバー曰く、ここは遊戯場らしいです。つまり昔のレジャー施設です)


「はぁ、レジャー施設?」とレイは大きな声を出した。


「えっ!」とメンバーたちが異口同音に返す。


周囲を見ると朽ちた遊具が散乱しており、確かに遊び場のように見えるが、それに対する疑念が湧いてくる。

レイは、あのゲートキーパーも遊び場の一部なのかという疑問を抱いた。


(シルバーは遊具を見て『遊戯場』と言ったようです。

それと、これ以上は何を聞いても同じ返事しか返って来ません)とアルは淡々と告げた。


その一言に、レイは一瞬にして肩の力が抜けた。


「遊び場だなんて……ここまで苦労して来た意味がないじゃないか」と、心の中で呟く。

古代ではここが遊び場だったのかもしれないが、時代が違うことをレイは一瞬忘れ、

つい気を緩めてしまっていた。


その時、アルの声が鋭く響いた。(レイ、空から何かが来ます。警戒してください)


レイはすぐに空を見上げ、急速に迫ってくる影に気づいた。


リリーが叫んだ!


「不味いわ!空からハーピーが襲ってくる!」



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