表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

216/335

第206話(ゲートキーパーとの戦い)

五人とシルバーは、地下の通路でゲートキーパーと対峙していた。


魔物は無機質な材質で構成され、艶のない汚れたベージュ色の表面を持つ。レイがファイヤーボールを撃ち込んでも、表面が黒く煤けるだけで手応えはなかった。


「これ、全然ダメじゃん…」


思わずレイがつぶやく。


シルバーも突進して体当たりを試みるが、衝撃は硬さに阻まれ、まるで効いていないようだった。


「何なんだろう?この魔物…」


レイは不安を抱えながら戦いの意味を見失いかけていた。


その時、セリアが声を上げる。


「黒い剣なら傷つくみたい! 全員で同じ箇所を集中攻撃しましょう!」


セリアの言葉に、他のメンバーの目に希望の光が差し込む。

彼女が黒い短剣で繰り返し攻撃した箇所には、わずかながら削れた跡が残っていた。


「それなら、やってみる価値はあるな」


レイは気を取り直し、黒いロングソードをしっかりと握る。


「では、私が先に行く!」


フィオナが叫び、黒い短剣を手に突進。刃が接触すると、確かに魔物の表面に小さな傷が生まれた。


「効いてるぞ!」


嬉しそうな声に続き、サラもナイフに持ち換えて攻撃を加える。


「ニャ、いい感じニャ!」


仲間の奮闘を見て、レイもロングソードを振り下ろした。


「みんな、同じところを集中攻撃するよ!」


声に応じて、他のメンバーも次々と黒い武器を振るい、攻撃が重ねられていく。

ゲートキーパーは動き回りながらも、装甲は少しずつ削れていた。


「この調子なら、やれるかもしれない!」


魔物の反撃を避けながら、全員が連携して攻撃を繰り返す。その一体感は確かに効果を生んでいた。


しかし次の瞬間、ゲートキーパーの動きが突如として加速し、シルバーの突進を軽々と避けてみせた。


「えっ、ゲートキーパーが避けるの?」


レイは驚きつつも、シルバーに指示を出した。


「シルバー、もう一度攻撃してみて!」


レイの号令が飛ぶ。


そのとき、不意にゲートキーパーから奇妙な音が発せられた。


「ピー…ガガッ…カチャカチャ…ジ…ジジ…ジジジ…ジジ…カチャカチャ…」


音が途切れた直後、ゲートキーパーはゆっくりと砂に変わり始めた。


「あれ、終わった?」


レイが呟いたその背で、アルが静かに分析を開始していた。


(レイ、これは…プログラムされた何かのメッセージのようです。解読します)


「メッセージ?」


(はい、そうです。少々お待ちください)


アルはプログラムの解析を進めながら、思考をフル回転させていた。


シルバーと意思疎通した時と同じで、なぜかアルのデータベースの中に、このプログラム言語が

インプットされていた。ただその理由が分からなかった。おそらく数百、いや数千年は遡るその言語が、

どのようにして彼のデータベースに存在するのか、アル自身も謎だった。


シルバーとの交信時に、自分のデータベースを調査し始めていたアルは、今回のゲートキーパーとの

遭遇を受けて、その優先度を一気に引き上げた。

プログラム言語の出所や目的を特定し、新たな情報を引き出そうと試みる必要があると判断したのだ。


一方で、レイが急に黙り込んだことに気づいたセリアとフィオナが、不安そうに顔を覗き込んだ。


「レイ、どうしたの?」


「あ、うん。ちょっと説明しますね」


レイは自分の状況を整理しつつ、周囲に向かって口を開く。


「さっきのゲートキーパーが出した音なんですが、アルが言うには、

 あれは何かのメッセージだったらしいんです」


「ええっ?」

「本当なのか?」


皆が一斉に驚きの声を上げる。


「うん、で、今、アルがその解析をしてくれてるところなんです」


その言葉に、空気が一気に静まり返る。

すると、レイの意識にアルの声が響いた。


(レイ、解析が終わりました。プログラムを実行した結果、象形文字のような図形が出てきました)


(図形?)


(はい、図形です。今からそれを床に描こうと思います。体の主導権を貸してもらえますか?)


「分かった、任せるよ」


レイは軽く頷きながら応じた。


そして、アルはレイの体を借りてナイフの先端でその象形文字を床に描き始めた。


最初に現れたのは、ゲートキーパーのような形をした、円柱の絵だった。

次に、砂の山の上に立つ人の絵。さらに続いて、見慣れない何かのマークの絵が現れる。

その次は、人が壁に向かって何かを注いでいる絵。

そして最後に、扉が開いて、人々がそこから中に入っていく様子が描かれた。


「これ、迷いの森で見た石像の絵によく似てるわね」


セリアが描かれた象形文字をじっと見つめ、どこか見覚えのある線の流れに目を細めた。


その言葉に、周囲の仲間たちも一斉に反応する。


「本当だ、なんだか繋がりがあるような気がするな」

フィオナも絵に目を近づけながら頷いた。


「じゃあ、また絵解きですね」

レイが言うと、全員が顔を見合わせて軽くうなずいた。


「最初のはゲートキーパーですよね」

「ってことは、二つ目は……倒した後、かしら?」セリアが首を傾げる。


「砂の山ってことは、崩れた後ってことよね」

リリーが絵の形に指を当てながら言った。


「この、ギザギザしたマークは……何なんだ?」

フィオナが眉をひそめて、その絵を指さす。


「分からないですね」

レイが答えかけたそのとき、サラがぽつりと呟いた。


「次のは、壁に何かを注いでるニャ」


「最後は、扉を通る絵だな」

フィオナが続ける。


だが、その順序がどう繋がるのか、誰にもはっきりとは見えてこない。


「ゲートキーパーを倒して、壁に何かを注いで、それで扉が開く……って流れ?」

リリーが小さく呟くように言った。


「じゃあ、このギザギザしたマークは……鍵、か何かでしょうか」

レイが悩ましげに眉を寄せた。


「ん〜……」

皆が揃って唸った。


そのとき――

「グゥ〜」とレイのお腹が鳴った。


一瞬、場が静まり返る。


そこへアルの声が響く。


(レイ、ここに入ってからすでに鐘二つが経過しています。そろそろ休憩を取った方が良いでしょう)


(もうそんな時間なんだ。そうだね、そうしよう)


レイは周囲を見回しながら声をかけた。


「みんな、ちょっとお昼休憩にしませんか?」


「りょ〜かい!」


元気な返事が一斉に返ってくる。


それぞれがバックパックを開き、街で買っておいたパンや干し肉、果物などを取り出して食べ始めた。

久々に落ち着いた雰囲気が広がる。


そんな中、レイはふと、先ほど崩れたゲートキーパーのあたりに目をやった。


……砂が、減っている?


よく見ると、床に残っていた砂が、少しずつ、まるで水に溶けるようにダンジョンの地面に

吸い込まれていっていた。


「……あれ、ゲートキーパーの砂、減ってないですか?」


レイの言葉に、みんながそちらを見やる。


「ほんとだ……最初はもっと山になってたよね」


リリーが不思議そうに呟く。


「時間が経つと消えるのだろうな。ダンジョンが自動で片付けてるのか……」

フィオナも考え込むように言った。


「なら、あの象形文字の順番にも時間制限があるかもしれないニャ」

サラの言葉に、一同の顔が少し引き締まった。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。

ブックマークや評価をいただけることが本当に励みになっています。

⭐︎でも⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎でも、率直なご感想を残していただけると、

今後の作品作りの参考になりますので、ぜひよろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ