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第204話(最適化された力)

アルが言った。


(皆さんもパワーアップしています)


その瞬間、レイは困惑の表情を浮かべた。

一度ナノボットが体内に入っただけで、全員がパワーアップするなんて考えられない。


「ちょっと待って、アル。一度ナノボットが入っただけで、みんながパワーアップするなんてあり得ないだろ? 一体、何をやったんだ?」


(いえ、リリーさん宅で行なったマッサージが一度目です。

 あの時に、全員の身体をくまなくスキャンしました。

 その際は、老廃物の除去と軽微な損傷の修復だけにとどめました)


アルは平然と答えた。


(今回は二度目なので、身体能力の最適化を実施しました。

 筋繊維の強化、反応速度の微調整、エネルギー効率の向上。

 それに、各自の戦闘スタイルに合わせたバランス調整も行っています)


「まさか……知らない間にそんなことが……」


レイはため息をつきながら驚きの声を漏らした。


(ちなみに、フィオナさんだけは八回目になります)


「えっ、八回目……?」


(ナノボットは非常に効率的です。皆さんの身体を調整し、より強力にします。

 これでBランク試験も楽に突破できるでしょう)


アルの声には誇らしげな響きがあった。


「フィオナさんは怪我の治療とか、風魔法もあるから多いのは分かるけど……

 まさか、エレナさんまでパワーアップしてないよな?」


(大丈夫ですよ。エレナさんには細胞のモニタリングと老廃物の排出、軽微な損傷の修復だけです。

 それでも、身体のパフォーマンスは自然に向上しますけどね)


「良かった。エレナさんまでパワーアップしたらどうしようかと――」


そう言いかけた瞬間、アルの声がレイの意識に響いた。


(レイ、見てなくて良いのですか?サラさんが接敵しています)


レイがそちらを振り向くと、百メルほど先でサラが双剣を抜き、「シャドウマシン」と呼ばれる

Cランク魔物に突進していた。


シャドウマシンの攻撃をひらりとかわし、サラの双剣が素早く振り下ろされる。

一瞬の斬撃が魔物の核心部を正確に捉え、シャドウマシンはよろけ、その場に崩れ落ちた。


「なんだか体が軽いニャ!」


サラはくるりと跳ね、楽しげに双剣をくるくる回してみせた。


(フィオナさんとセリアさんもですね)


その報告に、レイは焦って走り出そうとする。しかし、その瞬間、二人の動きが目に見えて変わった。


フィオナが黒い短剣を鋭く振りかざし、アイアンゴーレムの分厚い装甲を切り裂く。

重厚な腕がスパッと音もなく断たれ、地面に重い音を響かせて沈んだ。


セリアはすかさず動き、フィオナが開けた装甲の隙間に短剣を突き刺す。

抵抗なく核心部に到達し、ゴーレムはそのまま動きを止め、崩れ落ちた。


「なんだかすごく扱いやすいな、この短剣」


フィオナは短剣を見つめて微笑んだ。


「強すぎるわね。これならアイアンゴーレムすら楽勝ね」


セリアも満足げに頷いた。


「……え? 相手ってアイアンゴーレムだよな? なんであんなに簡単に斬ってるんだ?」


(クォンタム・ステライト合金の短剣です。あれくらいなら斬れます)


「いや、アイアンゴーレムだろ?相手は鉄でできてるんだよな?」


(斬れます)


アルは断言した。


「じゃあ、もう一人は――」


レイが辺りを見回すと、さらに遠くでリリーが巨大なアシッドスライムと対峙していた。


彼女は冷静に大釜を構え、酸の飛沫を軽やかにかわしていた。

動きを読み切ったリリーは、一瞬の隙を逃さず大釜を振り下ろす。

鋭い一撃がスライムを叩き潰し、魔物は崩れ落ちて消滅した。


「フッ、もはやこれは、ゲーム感覚ね」


リリーは肩をすくめて言った。レイはその光景に言葉を失った。


「……リリーさん、なんか決め台詞まで言ってるぞ……」


呆然としているレイのもとに、仲間たちが続々と戻ってきた。

アルに渡すための金属や魔石を手にして、それぞれ口を開く。


「なんだか体が軽いニャ!」


「相手がとても遅く見えるんだが……」


「自分の身体じゃないみたいだわ!」


「この短剣すごいわ。アイアンゴーレムがスパスパ切れちゃう!」


 仲間たちの様子に、レイの混乱は深まるばかりだった。


「おい、アル、一体何をしたんだよ……」


(最適化です)


アルは、いつも通り淡々と答えた。


「……マジかよ……」


レイは頭を抱えた。


だがその時、アルは黙っていた。実は、フィオナ以外にも最適化すべき点が残っているメンバーはいる。

だが今はまだ、その時ではないと判断したのだ。レイにも、そのことは伝えていなかった。


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