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第17話(この検証は必要なのか?)

魔力の使い方を検証し始めてから、すでに半日が経過していた。

それでもレイは、まだ一度もダンジョンに潜れていない。


「アル……検証ばかりで、ちっとも進んでないんだけど」

レイは苛立ちを隠さず声を漏らすと、アルは落ち着いた口調で答えた。


(そうですね。ですが無駄にはなっていません。ここまでに分かったことを整理しましょう)


今朝からの進捗を、アルが順に振り返っていく。


まず、指一本で放った魔力は細く、小石程度を動かすのが精一杯だった。


「鍵や細かい仕掛けを遠くから動かすくらいなら使えるかな」


(精密な操作が必要な場面では有効でしょう。ただし実戦向きではありません)


次に指二本の場合。交差した魔力で物体を軽く持ち上げられたが、制御は難しい。


「挟み込むように放つから安定しないんだよな。やっぱり五本指の方が掴みやすい」


(その通りです)


中指と小指や人差し指と薬指を使った時のことを思い出し、レイは顔をしかめる。


「……あれって意味あったの?」

(ええ、使えないことが確認できました)

「確認する必要、あったの……?」

(正直に言えば、あれは少し早すぎました。ですがレイの柔軟性は確認できましたよ)


「オレが無駄に真面目みたいな言い方するなって」

(いえ、褒めていますよ)


「……本気で?」

(もちろんです)


両掌で魔力を放出すると、束はかなり太くなり、人間を数メルも吹き飛ばせるほどの威力があった。

しかし、その分消費も激しく、連続して使えば魔力があっという間に底を尽きそうなほど減っていった。


「威力はすごいけど、安易に撃ったら魔力がもったいないし、体力が持たないかもしれないな」

(効率は良くありませんでした。威力に見合う場面で使う必要があります)


また、手の中で魔力を圧縮して放つ方法は遠距離攻撃として成立したものの、リリースする際の掌の角度のわずかな違いで軌道が大きく変わり、地面に落ちたり、逆に空中に逸れたりすることがあった。命中精度は低く、今のところ狙い通りに飛ばせていない。


(それと、魔力を視認するために常駐させていたナノボットの一部が、魔力と共に飛んでいってしまいました。回収はできません)


「えっ?大丈夫なの?」


(問題ありません。可視化用に新規製造したもので補充も可能です。ただ、今後も魔力の可視化を続けるには、材料の補給をお願いすることがあります)


「なるほど……分かった。それにしても、魔力を可視化するためだけにナノボットを作ってるなんて、スゴいな、アル」


(応用範囲を広げるためです。「やる前から後悔せず、やってから後悔しな」という言葉、覚えていますか?)


「シスターの言葉か。そうだよな……無駄にはできない」


アルは話題を変え、問いかけた。


(それと、剣と魔法の両立については考えていますか?)


レイはハッと気づき、バツが悪そうに顔をしかめた。


「……それは、まだ……」

小さく肩を落とし、ため息をついた。


(片手しか使えない両手剣の冒険者にとって致命的です。両手剣の威力と安定性が失われ、戦闘中の隙が増します。将来的には片手剣への転向も検討すべきでしょう)


「確かに……片手しか使えないと、剣の振りが遅くなるもんな」


(その通りです。さらに手の中で魔力を圧縮して放つ方法も、今のままでは致命打になりません。命中しても、せいぜいオークの肋骨を折る程度でしょう)


「うん……意外性はあるけど、外す可能性も考えるとリスクも大きい、と」


(それと両手で放つ方法は強力ですが、剣を手放す隙が大きすぎます。そして、そもそも魔力経路が全身に広がっている理由にも注目すべきです)


「全身に? 掌や指先だけじゃないの?」


(既存の知識では掌や指先から放つ例しかありません。しかし経路は全身にある以上、放出箇所を限定する必要はないはずです。応用の幅が広がります)


「なるほど……使い方次第でいろいろできそうだな」


(その通りです。レイの強みは魔力量の多さと、呪文なしで直接操作できることです。外からはほとんど見えず、宿屋の庭でも訓練可能です。まずは魔力をロープ状に伸ばす操作を習得しましょう)


「……ああ。早く使えるようになりたい。オレ、やるよ!」


その声には決意がこもっていた。

アルもまた、とことん突き詰めた先に誰にも真似できない力が生まれると信じていた。


読んでくださり、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
俺つえーもつまらんが 主人公が馬鹿すぎるのもいらいらして読む気が無くなるのがわかったのは勉強になりました
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