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第171話(尻に引かれるリーダー)

シーサーペント騒ぎの夜。遅まきながらのパーティ結成記念と、レイのリーダー就任、そしてお説教会が行われた。しかし気がつけば、レイは両手をしっかりとホールドされたまま、仲間たちに囲まれてソファーに正座させられていた。


先ほどまでの出来事が、頭の中で鮮明に蘇る。確かにレイを除く四人は、ワインを結構飲んでいた。

だが、途中から泣かれ、怒られ、説教され、感謝された。


「本当に無事でよかった…」

泣きじゃくる声が耳に残る。


「なんであんな無茶をしたの?」

鋭い言葉が胸に刺さる。


「命を大事にしなさい」

その説教は心に響き、


「セリアを救ってくれてありがとう」

感謝の言葉が温かく心を包んだ。


彼女たちの感情が、レイの心に深く刻まれていく。だからこそ、今こうして両手を固められ、ソファーに座らされている理由も分かった。


放っておけば、また何をしでかすか分からない──そう思われているのだ。

そのため、しばらくの間、一人で自由に行動することもお預けとなった。リーダーなのに、である。


レイは苦笑しつつも、仲間たちの温かい気持ちに感謝した。

自分を守ってくれる仲間がいるからこそ、今、ここにいるのだ。

そして、改めてアルの存在の大きさにも感謝した。


(アルが居なかったら、オレはどうなっていたか分からない。アルのサポートがあったからこそ、今ここにいるんだ)


だがその一方で、いつまでも頼りきりではいられないという思いが、心のどこかでレイを沈ませた。

セリアを守れたのは良かったが、果たして自分は、守られるばかりの存在なのか?

いつか、彼女たちを安心させて守れる日が来るのだろうか。

そう、自問する。


ふと、心の中でぽつりと呟く。

「いつになったら、オレも大人になれるんだろうな…」


その言葉に、セリアが少し微笑みながら言った。

「そんなこと気にしなくていいわ、レイ君。大人になるって、ただ歳を重ねることじゃないもの。あなたはもう十分、立派に私たちを守ってくれているわよ」


そして、優しくも釘を刺すように続ける。

「でも、無茶をするのはほどほどにね。心配で心がもたないから」


フィオナは真剣な表情で言った。

「レイ、あなたが大人かどうかは関係ない。私たちにとって大事なのは、あなたがいつも全力で守ろうとしてくれること。それだけで、私たちは十分に安心できる」


少し笑って、言葉を付け加える。

「ただ、少しだけ一人で戦うのではなく、仲間と協力してくれたら嬉しい」


リリーは、少し真剣な表情で説教を始めた。

「レイ君、大人になるっていうのは、自分の力だけで何でも解決することじゃないのよ。周りの人に頼ったり、助けてもらうことも大事なこと。無理をして一人で全部やろうとしないで。私たちはチームなんだから一緒にやればいいのよ」


サラはレイの肩を軽く叩きながら、軽い調子で言った。

「ニャンでそんなこと悩むニャ。まだまだこれからニャ、大人になるのを焦る必要ないのニャ、少年!」


そして、さらりと付け加える。

「今のままでも十分頼りになるニャ」


レイは照れたように笑いながら、静かに言葉を返した。


「そうですよね。なんか勘違いしてました。オレはもっと頑張らなきゃって思ってたけど、これってチームのことを忘れてたんですよね。ソロでというか、アルと二人三脚でやってる感覚が強いかもしれません」


セリアは微笑みながら頷いた。

「そうねぇ、アルが見えないからレイ君がソロでずっとやってるもんだと思って、ソロは危険だからパーティを組んでって散々言ったもんね」


リリーがすかさず茶化す。

「それでギルドの仕事を辞めてまで、パーティ組んじゃうんだもんね、セリアは!」


セリアは照れたように笑って返す。

「リリ姉だって、今は立派なパーティの仲間よ!」


そのやりとりを聞いていたフィオナが、ふと思い出したように口を開く。

「そういえば、アルの分も分配計算に入れた方が良いんじゃないか?」


レイは苦笑しながら問いかけた。

「アル、どうするの?」


(レイ、私はレアメタルや素材があれば十分です。今回のシーサーペントも、素材として少し頂きたいですね。欠片程度で良いので)


「それなら、シーサーペントの鱗と牙は小さいやつだけど持ってきたよ」

(それで報酬は十分です。ありがとうございます)


「アルは魔物素材と金属が欲しいそうです」

「じゃ、最後にパーティ名かな?」


セリアがそう提案すると、皆が顔を見合わせた。


リリーが冗談めかして言う。

「そうね、いつまでもレイジングスピリット(仮)じゃあね!」


周囲に笑い声が広がる中、レイは少し照れくさそうに目を伏せた。だが次の瞬間、真剣な表情で言葉を続けた。


「それ、正式にレイジングスピリットでよくありませんか?」


彼の声には、パーティへの愛着と決意がにじんでいた。


「だって、レイジングスピリットって、強い情熱や怒りや、激しい意志を持った精神を表現している訳じゃないですか。困難に立ち向かう勇気や仲間を守る強い気持ちを象徴してるんじゃ…ないか…と……」


サラが呆れ顔で叫ぶ。

「少年、途中までカッコ良かったニャ! 最後は尻切れで減点ニャ!」


「そんな〜」


フィオナは微笑みながら、レイをフォローする。

「でも、リーダーの想いは伝わったな。困難に立ち向かう勇気や仲間を守る強い気持ちを持った名前のパーティということだな」


仲間たちが頷き、リリーが明るく宣言する。

「それなら決まりね! 私たちのパーティ名はレイジングスピリットよ!」


「おお!」

手を挙げるメンバーたち。


レイは少し戸惑いながらも、ポツリと口にする。

「あれ? 掛け声かけるの、リーダーの役目だったんじゃ…?」


──こうして、尻に敷かれるリーダーが誕生した。


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