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第16話(魔力の可視化)

孤児院を訪ねた翌日。

レイは、いつものゴブリンの穴ダンジョン近くの草原に来ていた。人の気配はなく、草だけが風にそよいでいる。


(レイ、大丈夫ですか?)

アルが声をかける。


レイは大きく伸びをしながら答えた。

「ふわ〜〜っ。何が?」


(昨日、ほとんど寝ていなかったでしょう?)


「ああ、二つのことを考えていたからね」

レイは言葉を選ぶように続けた。


「昨日の司祭様の話と、オレが開拓村に来た理由に、何か繋がりがあるのかなってさ」


(推測に推測を重ねることになりそうですね)


「そういうこと。考えても答えは出ないよ」

レイは肩をすくめる。


(時には考え過ぎず、流れに身を任せるのも大切です)

アルが諭すように言った。


「そうだな、アル。考えるのもいいけど、動いてみないとな」


(もう一つは魔法の件ですね?)


「そう。魔力があるって分かったし、どう使えるか興味があるからね」

レイは手のひらをじっと見つめ、魔力の流れを確かめるように意識を集中させた。


(かと言って、夜中に天井に向かって魔力を放とうとするのはやり過ぎです)


「アルが止めたじゃないか?」


(宿屋の天井を壊されたら困りますからね)


「分かったよ。で、魔力ってどうやって放出するんだ?」

レイが尋ねると、


(もう、手のひらから漏れています)


レイは目を見開き、掌をじっと見つめた。

「うそっ……全然分からない」


(魔力の出口を繋いだのは早計だったでしょうか。まるで穴の開いた水風船みたいにチョロチョロ漏れてます)


「いやいや、今まで知らなかったんだから、魔力の扱いが下手なのは勘弁してくれよ」


(そうですね。どうやらレイは流れを知覚出来ていないようです)


(レイ、掌を上に向けて、そこにコインを置いて握ってください。手を開くと魔力が出てるのが分かると思います)


「分かった、やってみる」

と言うとポケットから銅貨を取り出し掌に置いて握った。


(それで魔力を掌から上に向かって出るように念じてもらえますか?)


「こうか?」

と言いながら手を開いてみた。最初は掌に置いた銅貨が裏返る程度だった。


「ん……? 動いたかな?」

首をかしげるレイ。


(少しずつ魔力が流れていますね)


レイは何度か手を開いたり閉じたりして、銅貨が掌で小さく揺れたり跳ねたりする感覚を確かめた。

やがて、銅貨は掌の上で軽く暴れるようになり、ついには手から弾かれるように小さく飛び出した。


「うおっ!」

驚くレイ。


(これで魔力が出ていることが分かりましたか?)


「なるほど……だんだん出てきたな」

そう言いながら、落ちた銅貨を拾い、また掌に置いて飛ばす練習を繰り返した。


「これじゃ、指で弾いたほうが遠くに飛ぶよな」


(そうですね。指で弾けば魔力の節約もできます)


「まあ、そう言うなよ。まだどうやって魔力が出てるのかよく分かってないんだから。こういうのって少しずつ感覚を掴むもんだろ?」

レイは宥めるように言いながら、苦笑いを浮かべた。


(では魔力可視化プロトコルを発動します)


「魔力かしかぷろとこる?」


アルは、レイの神経系と魔力道を連結するためのナノボットインターフェースを昨日のうちに開発していた。このインターフェースは、魔力の流れを視覚や触覚としてレイにフィードバックするもので、魔力の流れを体感で感じ取ることができるようにしたものだ。


また、レイの視覚に直接影響を与え、魔力が流れる様子を見せることができるようにした。

これで魔力がどのように流れているのかを目で確認できるようになるはずである。


「うわ、わわわっ、なんかモゾモゾする。それと掌が眩しくて見えない!」


レイは右手を遠ざけ、左手で目を押さえた。


(少し感度が強すぎるようですね。では触覚から調整します)


アルはそう言うと視覚のインターフェイスを切り、触覚の感度を弱めていった。


「ちょっとよく分かんないかな?」 


「あ、なんか手の中を何かが流れてる感じがする」


レイは少しずつ感覚に慣れてきた。


(触覚はこれで良いですか?)


「うん、これなら流れてる感じが分かるし強弱も分かる」


(では、次は視覚ですね。光量を少しづつ上げていきます)


「お、なんか見えてきた。って、何じゃこりゃ?」


レイは驚いて見つめた。レイの掌から放出された魔力は、まるで銀色に光る軟体動物がウネウネしているように見えた。


(多分、魔力の放出量が安定していないので、掌で暴れているように見えるのだと思います)


「なるべく一定量を保てば良いのかな?」


レイは魔力の放出を強めていった。すると、掌で触手のようにウネっていた魔力が五メル程度まで伸びるようになった。


「何だかロープみたいだな」


(そうですね、まだ上の方は少し暴れてますが)アルは同意した。


「ふぅ〜」

レイは魔力の放出を止めると、ため息をついた。


「でも、これって何の役に立つんだ?」


(コインが5メル以上飛ばせますね)


「それだけ?」


(ギルドのスイングドアも開けられます)


「えっ?それしか出来ないの?」


(まあ、今のところはそれぐらいですね。でも、スイングドアを開けるのは意外と便利だと思いますよ?自動ドアのように開きます)


「なんだよ?自動ドアって、でももう少し役立つことを覚えたいよ」


(今は掌から単純に魔力を流してるだけですからね。さて、次は指です。一本の場合、二本の場合と増やしていきます。両掌までやったら、次は魔力を圧縮させてみましょう。まだ何も分かってないですから)


レイは、そんなに試すの?と思いながら使い方の検証をするのだった。


読んでくださり、ありがとうございます。

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