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第160話(保護者付きの自由)

セリアはランベール司祭にアポを取り、彼の空いた時間に教会を訪れた。


いつもの挨拶を終えると、セリアが早速話し始めた。


「ランベール司祭、ぜひおり入って相談があります。聖者様に関する話です。実は、ファルコナー伯爵に手紙を送ったのですが、その手紙には帝国がよからぬ事を企んでいる証拠も一緒に添えて送りました」


「帝国が良からぬことをですか?」


ランベール司祭が眉をひそめる。

セリアは頷き、話を続けた。


「はい。その証拠は、私たちが帝国で発見したものですが、内容までは詳しく言えません。私たちは迷いの森のダンジョンに入った際、転移して帝国側の迷いの森に飛ばされました。そして、そこで村や町を訪れた際に、ファルコナーのスタンピードに関わった男を発見し、その屋敷に潜入して良からぬ内容が書かれた命令書を手に入れ、逃走してきました」


「転移とは!それに、スタンピードも人為的だったのですか?まさか、そんなことが…」

ランベール司祭が驚きの声を上げ、考え込んだ。


「はい。転移の仕組みは分かりませんが、一瞬で違う場所に飛ばされました。それと、人為的なスタンピードの証拠は、ファルコナーの衛兵の人も見ています」


「なるほど、驚きの連続ですね」


「それで、転移の話の続きですが……スレイプニルは、迷いの森で転移を行う鍵になっているんです。迷いの森を抜けて帝国側に転移するためには、三つの鍵があります。


 一つ目は、迷いの森の深部にたどり着くこと。

 二つ目は、多分ですが迷いの森でエンカウントした魔物と全て戦うこと。

 三つ目は、スレイプニルと競争して勝つことです」


ランベール司祭が腕を組んで言った。

「私は冒険者ではないので良く分かりませんが……どれも相当難しいことではないのですか?しかもスレイプニルに競争で勝つなんて」


「スレイプニルに勝ったのは私ニャ!」

サラは自慢げにふんぞり返る。


「それは、またなんともすごい話ですね。でも実際に聖者殿はスレイプニルを連れてセリンに帰ってきてますからね」


セリアは深く頷いた。

「ええ、森を迷わずに歩けるのは聖者様のお力です。そして、聖者様であるレイが率いる私たち『レイジングスピリット』でなければ、達成は困難です。そして、その聖者様が転移の鍵であることを、知ったら国が放っておいてくれるでしょうか?」


「何と!それはまた難儀な問題になりましたね」


フィオナが不安そうに声を漏らす。

「もしもその事実が広まれば、レイ殿は国家間の謀略に巻き込まれるかもしれない…」


「私たち全員がよ。だからこそ、私は教会に相談に来ました」

セリアは真剣な表情でランベール司祭を見つめた。


ランベール司祭は一瞬考え込み、厳しい表情で言った。

「教会としても、聖者殿を守るためにできる限りのことをします。しかし、教会の力には限りがあります。

 特に国家間の陰謀に対抗するためには、イシリア王国内の四大神教会では力不足です。

 神聖都市アルディアの力を借りるしかありません。最悪は国家間の話し合いが必要になるでしょうからね」


「神聖都市アルディアですか?」


ランベール司祭は頷きながら答える。


「はい、神聖都市アルディアです。巡礼の旅の最終地ですよ。ご存じありませんか?」

「それって聖地と呼ばれているところですか?」


「そうですね。信者の方はそう呼んでいる方が多いですね。四大神教全体を統括する中心地であり、教皇や最高神官が拠点を構える都市です」


「ただ、私たちだけではアルディアに話を持っていくことすら出来ません。王都に向かってください。そこで大司教様に今回の話をしてください。大司教様に会えるように、私からアポイントメントをとっておきます」


メンバーたちは口を揃えて返事をした。

「分かりました」


「それと、ファルコナー伯爵には、転移の件も含めて帝国の話をするために、聖者殿が王都に向かうと伝えてください。伯爵にとっても悪い話ではありません」


「王家への仲介役ですね」


「教会の力を信じてください。しかし、他の可能性も考え、慎重に行動する必要があります。くれぐれも無茶はなさらぬようお願いいたします」


セリアたちが話し合いを終えようとしたとき、ランベール司祭は真剣な表情で口を開いた。


「もう一つ、重要なことがあります。聖者殿の意思と自由を尊重するのは当然のことです。しかし、その自由が安全を脅かすことにならないように、教会としても彼を守る体制を整えなければなりません」


フィオナが少し心配そうに尋ねた。

「具体的にはどうすれば良いのだろうか?」


ランベール司祭は頷きながら答える。

「まず、聖者殿がどこにいるのか、教会が把握できるようにする必要があります。彼が新しい町に到着した際には、必ずその町の教会に連絡を入れるようにお願いします。また、今後の移動についても、各地の教会にあらかじめ聖者殿が立ち寄る可能性を伝えておきます。それによって、教会が聖者殿を守る準備が整えやすくなります」


フィオナはその提案に理解を示しつつ答えた。

「なるほど、レイ殿の居場所が教会に知られていれば、いざという時にすぐに動けるな。必ずそのように動こう!」


ランベール司祭は安心した様子でうなずいた。

「ありがとうございます。教会は彼を守るために全力を尽くしますよ。聖者殿の安全を確保しつつ、彼の自由も守ることが私たちの使命です。私たちは聖者殿に神殿やこの地を救ってもらった恩がありますから」


 そして、レイが居ないうちに、王都行きが決定した瞬間でもあった。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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