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第141話(捻れた景色)

森に入って間もなく、レイたちは巨大なマンイーターに遭遇した。


フィオナがすぐに警告を発する。

「――あの蔦には麻痺毒がある、気をつけろ!」


「了解!」

レイは剣を構え、マンイーターを見据える。


マンイーターの大きく開いた花が不気味に揺れ、暗い色合いの花弁の中から鋭い棘が覗いている。

蔦がうねりながらレイたちに襲いかかるが、全員はすでに準備万端だ。


フィオナが弓で蔦を射抜き、動きを鈍らせる。

その隙にサラが双剣で蔦を切り裂き、セリアが短剣で花の根元を狙って一撃を加えた。


フィオナは的確に蔦を射抜き、マンイーターを釘付けにする。

その瞬間、レイは剣から左手を離し、肩から手を回すように動かすと叫んだ。

「ファイヤーボール!」


花の中心にファイヤーボールが命中し、マンイーターは激しく燃え上がり、ついに地面に崩れ落ちた。


「終わった?」

レイが確認すると、フィオナが頷きながら答える。


「大丈夫だ」


「さすが火魔法ニャ、意外と簡単だったニャ!」


レイは喜びを口にした。

「やった!火魔法で初めて魔物を倒せた!」


セリアが微笑みながら言う。

「祈りの洞窟で、壁ばかり攻撃してたものね」


レイは照れくさそうに言い訳をした。

「それは、アルと発射のタイミングが合わなかったんですよ。

 だから今日はアルの呪文に合わせてファイヤーボールのところだけ叫んでみたんです」


「そうだな。そのほうが良いな。呪文も何も言わないで魔法を撃たれると、かなり違和感がある」


「そうなんですね」


レイが返事をしたところに、アルから声がかかった。


(レイ、この森はおかしいです。今、マッピングの結果と目の前の景色が一致していないことに気づきました)


「えっ、アル、どういうこと?」


(レイの斜め右にある幹が捻れたような木は、マンイーターとの戦闘前にマンイーターの真後ろにありました。

 それが、戦闘中に右にズレるように位置が変わりました)


「それって、木が動いたってこと?」


(背景が全体的に動いたと言った方が分かりやすいでしょうか?)


「どうしたの?」

メンバーが集まってくる。


レイはアルが言ったことを説明した。


「ふむ、つまり周りの景色だけが、少しずつズレていたということだな」


「妙な話よね。でもここはダンジョンだから、そういうこともあり得るってことかな」


「それなら、戦っているうちに進む方向がズレても気づかずに、そのまま進んでしまうな。

 結果として森の外に出てしまうわけか」


「恐ろしいところだニャ、匂いでも分からニャいんだニャ!」


レイが少し戸惑った様子で尋ねる。


「アル、本来の森の深部に向かうには、この捻れた木の左に進めば良いのかな?」


(そうです)


「では、行ってみよう。…っと!」


木の左側に進もうとしたその時、突然茂みの中からアルミラージが飛び出してきた。

アルミラージはレイの横をすり抜け、サラに向かって突進していった。


サラはすかさず双剣を振り、一撃でアルミラージを倒した。


「ビックリしたニャ!」


(また、少しだけ景色が動きました)


「うーん、魔物に目が向いちゃうから、景色が動いたって言われても分かんないね」


(レイ、右に約10度ずれました。)


「やくじゅうど?」 レイは意味が分からず聞き返す。


(角度のことです)


「ああ、十分の一の円周とかってヤツ?」


(ここでは、そういう風に言うのですね。では、二十分の一の円周分、左に向かってください)


「了解だ。アル」


レイはほんの少しだけ左に向かって歩を進めた。


それからは魔物とのエンカウントが一気に増えた。

まるで森の深部に行かせないような勢いで、ワーウルフ、イエローホーネット、トレント、ソードマンティス、

ラージラットと次々に遭遇した。


それらの魔物と戦い、次々と倒していくたびに、魔石や牙、針などを採取しながら、

レイたちはさらに森の奥へと進んでいった。


フィオナが周囲を見渡しながら言う。

「これだけ戦っても森の外周部に出ないということは、森の深部に進んでいるのだろうな」


ヘルハウンドの群れとの戦いが終わると、セリアが疲れたように言う。


「ここのダンジョンの推奨ランクを見直さないとダメね」


ちなみに、ソードマンティスとヘルハウンドはギルドでCランク指定らしい。


「こんなに魔物が出たら、景色なんて見てられませんね」


レイが息を整えながら感想を言うとフィオナも周囲を見渡しながら呟く。


「まるでこのダンジョンの意思が私たちを試しているようにも感じるな」


「手強かったニャ。この先もっと強いのも出てきそうだニャ!」


「あっ、サラさん。それ、フラグ!」 


レイが慌てて声を上げた。


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