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第139話(楽しい道中と不思議なガジェット)

「とにかく苗を探さなくちゃならないので、苗探しの旅に出ます。また、ダンジョンに苗があるかもしれないのでそれも確認する為に潜ります!」

と宣言したレイは、早速準備に取りかかった。


苗探しとダンジョン探検のために、保存食を買い足し、必要な装備を整えたレイは、リーフ村に向かう準備が整うと、朝早くから出発した。


リーフ村は、セリンから大街道に出て西に進んで約二日の距離にある。

レイたち四人は、その道のりをのんびりと歩き始めた。


道中、七月の陽光が穏やかに降り注ぎ、鳥たちが楽しげにさえずる中で、フィオナが道沿いの風景に感心しながら話しかける。


「この辺りの風景は、なかなかいいものだな。自然がいっぱいで落ち着く」


セリアも心地よい風に当たりながら、微笑む。

「そうね、リラックスできる場所だわ」


サラはまったりとした雰囲気を楽しんでいる。

「ニャ、ほんとにいい天気だニャ。こんな日はのんびり歩くのが一番だニャ」


「疾風迅雷とは思えないセリフですね」

レイはサラを揶揄った。


「ニャ! 普段、ずっと走ってる訳じゃニャい!」


「あはは」


仲間たちとの会話を楽しみながら歩くのは久しぶりだなとレイは思った。

ファルコナーから帰ってからのひと月は、セリンの領主や教会のお偉いさんを含め、様々な人々と会い、多くの人と話をした。自己紹介をされたが、全く覚えていないというのが正しいかもしれない。


「そういえば、オレ、領主様の名前を覚えてないや」

レイが言った瞬間、皆が固まったような気がした。


「レイ、それを領主様の前で言ったら、ギロチンものよ!」

セリアが驚きの声をあげた。


(レイ、領主の名前はアルフォンソ・セリン。子爵です)


アルがすかさずフォローを入れ、レイはセリアの反応を見て、答える。

「冗談ですよ。アルフォンソ・セリン子爵様です」


だが、どうやら怪しまれているような感じがする。


「ああ、のんびりとした雰囲気がいい感じですね。リーフ村に着くまで、ゆっくり景色を楽しみながら行こう」

レイが白々しいセリフを言った。


「なんか怪しいなぁ」

セリアは訝しんだ。


「いや、ホント冗談ですって。セリアさん」

レイは自分の放った言葉は返ってこないと察した。


皆はレイの言葉に緊張感を漂わせながらも、しばらくは和やかな会話を続けつつ、のどかな道を進んでいった。

その日、レイたちは野営に適した広場を見つけ、一泊した後、再び大街道を歩き始めた。


やがて、太陽が頂点に差し掛かる頃、道の右側に広がる森が見えてきた。

フィオナがその森が「迷いの森ダンジョン」の入り口であると教えてくれた。


リーフ村は迷いの森ダンジョンの入り口近くにできた村だった。


レイはこの村が不人気だと聞いていたため、冒険者が全くいないのではないかと思っていたが、グリムホルトとセリン、シルバーホルムの中間に位置するため、キャラバンの護衛や迷いの森を訪れる冒険者がちらほら見かけられた。


キャラバンがいるなら宿屋が混雑しているかと思ったが、六人部屋が空いているという。

レイは男一人だから野宿でも良いと言ったが、フィオナとセリアにドナドナされていった。


「野宿なんてダメよ、レイ。せっかくの旅なんだから、ちゃんとしたベッドで休まないとね」

セリアがレイを軽く腕で押しながら言う。


「その通りだ。疲れをしっかり取ってもらわないとな。逃げようとしても無駄だぞ、レイ」

フィオナが少しはにかみながら、しっかりとレイの背を押す。


こうしてレイは逃げられず、結局宿に泊まることになった。


部屋に着いた後、バックパックから必要なものを取り出していると、

サラが「これはニャンだっけ?」と言いながら、真四角な黒い板と廃坑で見つけた男の靴を取り出した。


「それ衛兵の人に預けなかったんですか?」

驚くレイ。


「追い剥ぎじゃニャくて無力化して、バックパックにしまったままだったニャ!」


「それって一月前の話ですよね」

今更、後の祭りである。


レイが呆れたように言いながらも、アルにアイテムの確認を依頼すると、アルはそのアイテムをバックアップデータで検索して調べ始めた。


その結果、武器になるようなものではないことが確認され、ジャンプシューズという靴とランドゲージという多機能端末だと判明した。


(ジャンプシューズは、シューズに内蔵された機構で、足を地面に蹴りつけることで強い反発力を生み出すようです。かなりの距離を飛ぶことができます)


アルが説明を始めたので、レイはみんなに聞こえるよう中継した。

ジャンプ中に足の親指を動かすと、その動かした方向で飛ぶ向きを微調整できるやら、シューズの内側は、装着する人の足にフィットするように出来てるとかを話した。


そして、端末と靴の説明が終わった後、こうなった。


サラが凄まじいスピードで目の前をカッ飛んでいく。


「めちゃくちゃ面白いニャ〜!」

「サラさ〜ん、早く隠れてよ!」


レイが焦って叫ぶ。


「わかったニャ〜、少年!」

サラは楽しげに応え、素早く逃げていく。


レイは黒い端末を手に、サラが逃げた方向を探しにいった。


『ピッ…ピッ…ピッ…ピピピピッ』

端末が音を立て始めた。


「お、この箱の中かな?」


レイが端末を確認しながら言うと、サラの声が聞こえた。


「バレたニャー!」


勢いよく箱の中から飛び出すサラ。その姿はまるでびっくり箱のようだ。


黒い真四角な板は手のひらに収まるサイズで、それを持ったまま周囲をぐるっと一周させると、約五百メルの範囲を地図表示してくれる。


また、この機能を使ってスキャンを繰り返し、町のマップを作成したり、さっきのように生命体を探知して隠れている人を見つけることも可能だ。


さらに、アンノウンをタップするとその色が変わり、地図範囲内であれば追跡もできるらしい。

レイはこの新しい機能を使って、サラと追いかけっこを始めてしまう。


「さぁ、どこに隠れても無駄ですよ!」

レイが勝ち誇ったように言う。


「また見つかってしまったニャー!」

サラは叫んで隠れ直す。


「レイとサラ、まるで子供みたいに無邪気だな」

フィオナが微笑んで言う。


「セリンでいろいろ鬱憤が溜まってたのかな。苗探しをすっかり忘れて、思いっきり楽しんでるわね」

セリアも笑みを浮かべた。


(私もマッピングはできるのですが!)

アルは自分のアイデンティティが脅かされたようで少し面白くない気分だった。


「でも、この端末は歩いたところや見えるところをすべてマッピングできるし、何かが近づくと警告もしてくれるんだよ」


(私もレイに何かが近づけば警告しているのですが?)

アルはさらに不満そうだ。


「アル、拗ねてる?」

(いえ、拗ねてません)


アルはそっけなく答えるが、どこか機嫌が悪そうだ。


「あ、端末が切れちゃった!」

レイが端末を見て叫ぶ。


やがて、端末のバッテリーが切れて使い物にならなくなったが、アルはこの端末に光充電機能が付いていることをわざと隠しておくのだった。


(たまには自力で何とかしてもらわないといけませんからね)


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