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第131話 第四章(セリアの選択)

夜の静寂がセリンの街を包み込んでいた。

セリアはギルドの受付カウンターの前に立ち、深い息をついていた。

彼女の心の中では様々な感情が渦巻いていたが、そのすべてを整理するには時間が必要だった。


彼女はレイとフィオナとの会話を思い出していた。

特にフィオナが自分の気持ちに素直になれと促した瞬間が、心の中に大きく響いていた。


セリアはギルドの記録を見つめながら、ギルドで過ごしてきた日々を思い返していた。

多くの冒険者がここで助けを求め、彼女はその一人一人に親身に対応してきた。


ギルドでの仕事は彼女にとって誇りであり、生きがいだった。

しかし、レイとの距離感に対する不安や、自分がただの「相談相手」としてしか見られていないことが、

彼女の心を揺さぶっていた。


「私、ここで何をしているのだろう?」


セリアは独り言を呟いた。彼女は記録にペンを走らせ、これまでの仕事を振り返った。

確かにギルドでの生活は充実していたが、心のどこかで何かが足りないと感じていた。


「……レイを守ってあげたい。

 いいえ……近くで、ちゃんと支えたいんだ」


彼女の瞳が真っ直ぐ前を向く。

それは“物理的な護衛”ではなく、“信頼”を盾にした伴走者として。

聖者という立場が、どれほど危ういものかを理解しているからこそ。


彼女は自分の本心に気づいた。彼女はレイに対して、ただの「お姉さん」のような存在ではなく、

レイを色々な意味で失いたくないという気持ちが強くなっていることを感じていた。

そして、フィオナとの会話がその思いを一層強くした。


セリアは深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。


「もう決めた。私はレイと一緒にパーティを組む」


彼女の中で決意が固まった瞬間だった。


彼女はギルドマスター室に向かって歩き出した。

途中で何度か足を止め、心の中で迷いがよぎったが、彼女はその都度、レイとの未来を思い描いて歩みを進めた。


ギルドマスター室のドアの前に立ち、彼女はノックをした。

ドアの向こうからアーノルドの低く渋い声が響いてきた。


「入れ!」


セリアはドアを開け、中に入るとアーノルドが書類を整理している姿が目に入った。

彼は顔を上げて、セリアを見つめた。


「どうした、セリア?こんな時間に」


アーノルドの声にはいつもの落ち着きがあったが、セリアはその中に微かな不安を感じ取った。

セリアは一歩前に進み、アーノルドの前に立つと、静かに口を開いた。


「ギルドマスター、私はギルドを辞める決意をしました」


アーノルドは一瞬、目を見開き、その後、深い息を吐き出した。


「理由を聞いてもいいか?」


「……私は、レイと一緒にパーティを組みたいと思ったんです。あの子がこれから“聖者”として認められていく中で、色んな人に寄ってこられると思います。


……だからこそ、近くにいて、ちゃんと支えていきたい。騙されないように、変なものを掴まされないように。見守るだけじゃ足りないと気づいたんです」


アーノルドはしばらく沈黙を保ち、セリアの瞳をじっと見つめた。

彼は彼女の決意の強さを感じ取り、ゆっくりと椅子に腰を下ろした。


「セリア、お前がその決断をしたのなら、私は止めはしない。だが、お前のことを思うと、少し寂しい気持ちもある。ここでの働きは素晴らしかったからな」


「ありがとうございます。でも、これが私の進むべき道だと思っています。ギルドでの経験は決して忘れません」


アーノルドは少しだけ寂しげに微笑み、彼女の肩に手を置いた。


「分かった。お前のその決意、尊重しよう。そして、これからの道でお前が何を選ぼうと、いつでも応援している」


「ありがとうございます、ギルドマスター。それとファルコナーの件ですが……」

「ああ、その報告も届いてるよ。無事に済んで良かったと思っている」


「はい、ありがとうございます」


「それと、出来たらで良いが、バランやリサにも辞める理由を教えてやってくれ。それを知らなきゃアイツら騒ぎ出すからな」


「分かりました。確かにその光景が目に浮かびますね」

セリアは微笑みながらも、ほんの少し瞳に光るものを浮かべた。


その後、セリアはギルドでの最後の手続きを行い、長い間お世話になったバランやリサ、ギルドの仲間たちに別れを告げた。


彼女の心には、これから始まる新しい冒険への期待と不安が入り混じっていたが、同時に自分の選択に対する強い確信があった。


こうして、セリアはレイ、フィオナ、サラと共に新たな旅に出る決意を固め、ギルドを後にした。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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