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第129話(フィオナの力)

このままではフィオナが連れ去られてしまう。その時、レイの頭の中に壺売りの占い師の言葉が浮かんだ。


「お前の大事な人が金輪際、お前の元から居なくなるぞ」


(何か手はないか?このまま連れ去られたら不味い。何とか引き延ばして次の一手を考えないと)

とレイは考え、その男に叫んだ。


「頼む、何もしないから、ちょっと待ってくれ!」

そう言って、持っている剣を落とし、両手を上に上げた。

ガチャリ、と剣が石床にぶつかって跳ねる。


「ん?何ゆえだ?」

男は訝しむ顔をする。


「その、なんでフィオナさんを連れていくんだ?」

レイは焦りを隠せない表情で尋ねた。


男は不敵な笑みを浮かべ、レイに答えた。


「この娘の名前はフィオナというのか…。この者には、世が求むる価値があるのだ。そなたには分かりにくかろうがな…」

彼は目を細めながら、冷ややかな視線をレイに送った。


「しかも、この者の存在こそが、この任を果たすための鍵なのだ」

メガストは口元を歪めて笑った。


「鍵?」


レイは驚いた表情で問い返す。


「そうだ。この者の存在が、計画を成就させるために欠かせぬ鍵なのだ!」

男は意味深に口角を上げた。


「えっ、なんの計画?」

レイは不安そうに続けた。


「なんの計画か、知りたいか?」


男は薄笑いを浮かべながら、少し身を乗り出した。


「それは、遠い昔に隠された秘密を暴き、世に知らしめるためのものよ。フィオナは、その秘密を解く鍵を握る存在なのだ」


彼は淡々とした口調で言った。


この男、何を言ってるのかさっぱり分からない――

レイは困惑した表情で考えた。


廃坑の中、緊張が頂点に達する。

その時、レイはアルの声を聞いた。


(レイ、掌をあの男のいる天井に向けて魔力鞭で奴の頭上の石を落としてください)

(それじゃフィオナさんまで巻き込んでしまうんじゃ?)


レイは一瞬迷ったが、フィオナを見た。すると彼女はレイに向かって微笑んでウインクをした。

それを見たレイは躊躇わず、全力で魔力鞭を最大まで伸ばした。

瞬時に男の頭上の石を薙ぎ払うと、バラバラと大きな石が男とフィオナの頭上に降り注いだ。


「何っ!」


男は驚き、慌てて手を上に上げて頭を庇い、石の雨から身を守ろうとした。

その隙に、フィオナも素早く前転し、その場から距離を取る。


石がバラバラと音を立てて落ちてくる中、レイは一瞬のチャンスを逃さずに男に駆け寄り、無防備になった男の手から金属の塊を蹴り飛ばし、天井に叩きつけた。


続けざまに、レイは勢いを保ったまま男に脳天チョップを放つ。

衝撃で男はその場に崩れ落ち、意識を失った。


廃坑に静寂が戻る中、レイは冷静に息を整えながら、無力化された男を見下ろした。

「これで終わりかな?」


(レイ、全力はやり過ぎです。あと1メル先を削ったら天井が落ちてました)

アルの冷静な指摘が入る。


「ええっ!先に言ってよ〜!」

レイは驚きながら冷や汗を流した。


「大丈夫、フィオナさん?」

そのままフィオナの無事を確認するために彼女の元へ向かうと、レイが心配そうに尋ねる。


「レ、レイ。ありがとう!」

フィオナはレイに思いっきり抱きついた。

レイが白眼になるほどだ。


「コラー!抜け駆けするな〜!」

「すまん、つい嬉しくてな」


セリアが割り込んできて、とフィオナを引き剥がした。

フィオナも笑いながらセリアに謝っている。


サラも駆け寄ってきて、みんなのところにダイブする。


「良かったニャ!」

その瞬間、全員が少し緊張を解き、ほっとした表情を浮かべた。彼らは無言でお互いの無事を確認し合い、安堵の空気が広がる。


フィオナがその空気を感じ取り、少し照れくさそうに続けた。


「さっき目が合った瞬間に、レイが何をしようとしてるのか、直感で分かったのだ」

「えっ?あれで魔力鞭で石を落とすって分かったんですか?」


「うむ、なんとなくだが、レイがどう動くかが頭の中に浮かんだんだ。まるで、先が見えているかのように」

「先に見えてた?それって未来を見てたってこと?」

セリアが目を丸くして驚いた声を上げる。


「うむ、よく分からんが頭上から石が降ると思ったのだ。そしてこれがレ、レイの次に行う意思なんだと思ったんだ」


「何それ?」

とセリアが不思議そうに首をかしげる。


「石の意思ニャ!」

サラは親父ギャグっぽいことを言っている。放置しよう。


「その以心伝心というか、その、なんだ…」

フィオナが言葉を探していると、レイが少し照れくさそうに言った。


「なんにしてもうまくいって良かったです」


「うむ、そうかもしれん。だが、それでもレイとの…がさらに…。」

と尻すぼみになった。


「レ、レイ君、なんか、私たちももっと以心伝心しなきゃ…。」

負けじとセリアも言いかけたが最後は尻すぼみになって赤くなった…


「いや、どうなんでしょう?あはは」

「ニャ、そうなったらみんな無敵ニャ!」


その時、脳内に静かな声が届く。


(レイ、和んでいるところすみませんが、その男の持っていたものを見せてもらえませんか?)


レイは金属の装置を手に取り、しばらく見つめた。確かに見慣れない形状だ。

装置は少し冷たく、無機質な感触が指先に伝わる。


「これ、武器なのよね」とセリアが近づき、興味津々な表情で尋ねる。

「そうですね、さっきこいつが使ってたやつです」


(レイ、それはフォトンレーザーという高エネルギー兵器です。物質を分解して溶かすことができます。みんなには魔法が篭った武器で取り扱いには注意してとだけ伝えてください)

アルが冷静に指示を出した。


「うん、分かった」

「あっ、今、アルからこの武器のこと聞きました。魔法が篭った武器で取り扱い注意らしいです」


「そうね。こんなものを持ってるその男も危険よね」

「そうですね。まずは縛っちゃいますか?」


「私が見張っているから、ロープか何かを探してくれないか?」


セリアが腰のポーチから予備のロープを取り出し、フィオナに手渡した。


「これで縛り上げましょう。逃げられないようにしっかりとね!」


フィオナとレイは協力して、メガストの手首と足首をしっかりと縛り上げた。

念のため、さらにロープを回して、体全体をぐるぐる巻きにし、動けないように固定した。


サラが見守りながら、満足げに頷いた。

「これで大丈夫ニャ。どこにも逃げられないニャ!」


(靴も特殊な装置のようです。念のため、靴を脱がせて、ポケットの中も全部出しておきましょう)


レイは少し躊躇しながらみんなに話した。

「アルが言ってるんだけど、靴も特殊な装置らしいです。脱がせてポケットの中身も全部出しておいた方がいいみたいだけど、これって追い剥ぎみたいじゃないですか?」


その言葉に、皆が一瞬顔を見合わせたが、セリアがすぐに答えた。


「仕方ないわ。この状況では安全を確保するために必要なことよ」

「うむ、何が仕込まれているか分からん。安全のためにやむを得ないだろう」


「ニャ、追い剥ぎじゃなくて、敵の無力化ってことでニャ!」

と軽く冗談を飛ばし、皆が納得した様子で準備を進めた。


こうしてメンバー公認の追い剥ぎ改め無力化が行われたのだった。

この追い剥ぎ行為がやがてレイ達の冒険に役立つようになるのだが、それは先のお話である。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。

フラグを回収して伏線仕込みました。

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⭐︎でも⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎でも、率直なご感想を残していただけると、

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