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第128話(予期せぬ遭遇)

sideメガスト


メガストはシルバーホルムまで来ると、ポケットからレーダーのような端末を取り出して起動させた。

その端末をかざしながらグルリと一周回ると、この辺りのマップが表示された。

そのマップを見ながら「ここが良さそうだ」と判断し、廃坑へと入っていく。


廃坑に隠れたメガストは、手持ちのレーションで腹を満たすと、レーダーのような端末を脇に置き、眠りについた。


いくらジャンプシューズを使って逃げ切ったとはいえ、彼も人間である以上、疲労が溜まっていた。

まずは休息をとり、次の手を考えなければならないと思いながら、やがて意識を手放した。


数時間後、レーダーから接近警告音が鳴り響き、メガストは目を覚ました。

警告音を止めた彼は、銃を手に取り、周囲を警戒しながら音のする方へ進んでいった。

廃坑の奥から声が聞こえてくる。メガストはその声に向かって慎重に近づいていった。


***


レイは意気揚々とシルバーホルムに向かって進んでいた。


廃坑に出没するゴーレムはセリンの町でDランク依頼としてたまに発行されることや、ゴーレムが物理攻撃に強い魔物であると教えられた。


そのため、どうやって倒そうかと考えていたところ、アルが網膜プロジェクションで姿を現した。


(レイ、あの武器屋で買った幅広の黒い剣を使ってください。あの金属はクォンタム・ステライトと言って、そこいら辺の岩ならば叩き斬ることが出来ると思います)


(そうなの? でも刃が折れないかな?)

レイが不安げに尋ねる。


(確かに刃は欠けていますが、ヒビは一つも入っていません。それにこの合金は、宇宙船が隕石群に突っ込んでも粉砕できるほどの強度を持つことで知られています)

アルは自信たっぷりに答えた。


(じゃあゴーレム斬れる?)

(はい、出来ると思います)


そんな情報を聞いたレイは、ますますゴーレムと戦ってみたいという気持ちが高まった。


草原で一夜を明かしたレイたちは、シルバーホルムへと歩を進めていた。やがて、見慣れない山々が近づいてくる。レイは周囲を見回し、ぽつりと呟いた。


「シルバーホルムの鉱山を反対側から見る人は、そう多くないだろうな…」


風が草を揺らし、ざわ……と音を立てる。


やがて一行は、ゴーレム討伐の目的地である廃坑へと到着した。

レイが進もうとすると、セリアが手を伸ばして制止する。


「レイ君、ゴーレムに火魔法は有効だけど、廃坑内で火魔法は厳禁よ。毒で倒れちゃうからね」


フィオナも小さく頷く。

「その話は私も聞いたことがあるな」


そのとき、アルの声が響いた。

(レイ、セリアさんの言った事は本当です。火魔法によって鉱石に含まれる硫黄や有毒ガスが一気に気化し、坑内に充満する可能性が高いのです。換気が不十分な場所では、それが命取りになります)


レイは黙ってその言葉を受け止めた。


坑道の入口へ足を踏み入れると、ひんやりとした空気が肌を撫で、どこか懐かしい感覚が胸をくすぐった。


「そういえば、この鉱山で硫黄を手に入れるために働いていたんだよな……」


それは南の坑道だったが、雰囲気はよく似ていた。

ちなみにレイはその時の活躍で、伝説の坑夫と呼ばれたが、それはまた別の話である。


カツン、カツンと足音を響かせながら、四人は警戒しつつ坑道を進んでいく。

やがて、地面の奥から不穏な振動が伝わってきた。


ドスン……ドスン……。


「来たな」


ゴーレムの重い足音が坑道内に反響する。四人はバックパックを放り、武器を構えた。


現れたゴーレムは、巨石で構成された巨体を持ち、その一歩ごとに地面が震えた。

ザリッ……と砕けた岩を踏みしめながら進み、かすかに光る赤い目でこちらを睨みつけてくる。


セリアは駆け出すと、ゴーレムの足元に滑り込み、関節のような部分へ短剣を突き込んだ。


キィンッ!


フィオナは静かに弓を引き、ピシュッと矢を放つ。矢はゴーレムの隙間を抜けて突き刺さった。


サラは鋭い双剣で表面を削るように斬りかかる。


ガシュッ、ガシュッ!


連撃が続くたび、岩の破片がパラパラと落ちた。

レイは、幅広の黒い剣を構え、深く息を吸った。


ごうっ――!


風を切る音とともに、全身の力を込めて剣を振り抜いた。


ズガンッ!


ゴーレムの頭が爆ぜ、小石が四方に飛び散った。身体はぐらりと揺れ、そのまま崩れ落ちる。

剣は胸元までめり込んでいた。


(うへぇ、斬った、というより叩き壊した感じだな……)


沈黙の廃坑に、戦いの余韻だけが残った。誰もが息を整え、次の言葉を探していた。


その時だった。


パチ……パチ……。

乾いた拍手の音が坑道に響いた。


「えっ? 誰?」


レイが反射的に剣を構えると、暗がりから男が現れる。

ザッと足音を響かせて前に出たその男は、白髪混じりの灰色の髪に整った髭、鋭い目を持つ年配の男だった。


「いやはや、お見事であったな。なかなか見事な連携であったぞ。されど、少々その場を動かぬよう願いたい」

低く響く声とともに、男は金属の塊をゴーレムの残骸へ向ける。


ビシュウウウッ!


光の束が放たれ、ゴーレムの岩肌がみるみる溶けていく。


「かような末路を望まぬならば、おとなしくしておれ」


金属の塊がこちらに向けられる。威圧感とともに、じりじりと男の存在が空気を支配していった。


レイは目を見開いた。

(なんだあれ? 魔法なのか?)


即座にアルの声が響く。


(レイ、あれはフォトンレーザーという武器です。高エネルギーを集中させて物質を溶かします。ゴーレムも結合が破壊され、崩壊したのです)


(アレって……アルの世界の武器?)

(その認識で合ってます)


その時、男がフィオナを見据えた。

「おや、その長き耳の嬢御は、こちらにお越しいただこう」


にじり寄りながら、手を差し伸べる。その視線には、明確な敵意があった。


フィオナは一歩下がりかけたが、さきほどの武器の威力が脳裏をよぎり、動けなかった。


「これは何たる因縁ぞ。まさかこのような場所で長耳族と相見えるとはな」


男の手がフィオナの腕をつかむ。


「フィオナさん!」

「フィオナ!」


レイたちが声を上げたが、その男は彼女をしっかりと掴んで離さない。

レイたちはどうすべきか、緊張感が一気に高まった。


その男はフィオナを連れ去ろうとし、廃坑の出口へと後退し始めた。

レイが後を追おうと、一歩前に出ようとしたが…


「おっと、それ以上は動かぬがよい」


そう言いながら、彼は金属の塊をフィオナの側頭部に当てがい、彼女の命を盾に取る形でじりじりと距離を取っていった。


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