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第127話(時代を超えた銃撃戦)

side緑のフードを被った男


緑のフードを被ったイーリスという男は、未発展文明保護局の次長である。

リューエンの策略で再びケスラに送り込まれた彼は、ケスラ言語が違法にダウンロードされたという情報を受け、現地調査に動き出した。


セリンの町での二日目。

イーリスは市場を歩き、薬屋で話を聞き、さらに酒蔵に立ち寄った。

そこでは古風な口調で話す男の噂を耳にする。話し方は異様で、まるで時代錯誤そのものだった。


「こりゃ当たりかもな」


イーリスはつぶやき、男が町の酒場に現れると聞いて向かった。


酒場に着いたイーリスは、奥のテーブルに腰を下ろし、店内を観察する。

やがて、にぎわいの中にその声が混ざってきた。


「おっさん、どうしてそんな古い言葉を使ってるんだ?」


「私は長い年月を経て、古の言葉を用いる者なり。今の世の常識とは異なるゆえ、驚かれるのも無理はない」

「でも、なんでそんな言葉を使うんだ?」


「これは我が家の言い伝えに由来し、先祖から受け継いだものなのだよ。故に、古き良き言葉を守りし者として、今日も変わらず使用しているのだ」


男の様子をじっと観察しながら、イーリスはフードの影で能力を発動した。


(この男を捕まえれば、家族は幸せでいられるか?)


問いを終えると、胸の内に確信が灯る。


「当たりだ!」


テーブルの下に目をやると、男の腰にはフォトンレーザーが見えた。


「フォトンレーザーかよ。厄介だな」


そう呟くと、イーリスも懐から同様の武器を抜き、静かに立ち上がった。

そして男の前に立ち、低い声で命じる。


「大人しく酒場を出ろ」


男はわずかに躊躇した後、ガタンッとテーブルを突き出してイーリスの視界を遮った。

すかさずカウンターを飛び越え、裏口へと走り出す。


「チッ…!」


イーリスは即座にテーブルを避け、男を追って店を飛び出した。店内は騒然とし、客たちの叫び声が響く。


男は裏路地を抜け、市壁の外に隠してある宇宙船へ向かう。

両者はジャンプシューズのスラスターを起動させ、壁を駆け上がっていく。


ゴウッ!


風にあおられ、イーリスのフードが外れ、長い耳が露わになった。

それを見た男は振り返り、公用語で挑発するように言い放った。


「まさかあなたが追っ手とはね。未発展文明保護局のイーリス次長!」


イーリスは表情を変えず、銃口を向けたまま距離を詰める。


男――メガストは一瞬立ち止まり、冷静に語り出す。


「私はヴォルグズ連邦から来たメガスト、しがないジャーナリストに過ぎない。あなた方が密かに隠し通してきた七十年前の秘密に、ほんの少しでも触れたいと思ってね」


「それを知ってどうする?」


「秘密を知ることで、真実を明らかにし、世界に広める権利がある。あなた方の隠し事がどれほど大きな影響を持つか、私は知りたいだけさ…」


イーリスは冷ややかに狙いを定めたまま告げた。


「悪いが、それは許可できないな。君にどんな理由であろうと、ここで止めなければならない」


「それは残念だ。私はどんなことがあっても、この使命を全うさせてもらうよ」


「じゃあ交渉決裂だな!」


バシュッ! バシュッ!


鋭い銃声が響き、空き地が火花と砂煙に包まれた。


イーリスは滑るような動きで射線を外しつつ、わずかに先を読むようにして身を翻す。


「右から来る」


その予測どおり、メガストの銃弾がわずかに遅れて通過していった。


メガストは船の外壁に身を預け、息を荒くしながら反撃を繰り出す。

だが、その攻撃はことごとく読まれていた。本人は気づいていないが。


バシュン!


イーリスの狙撃がメガストのすぐ脇をかすめ、彼は思わず身をよじって地面に転がる。


「……当たらないのが不思議なくらいだな」


戦場の空気に慣れているのは、明らかにイーリスの方だった。

メガストは必死に銃を構えながらも、防戦一方に追い込まれていく。


イーリスは流れるような動きで攻撃をいなし、相手の僅かなクセやリズムを拾って反撃のタイミングを計っていた。一発の精度で、状況を着実に自分の側に傾けていく。


両者ともに動きは速く、互いに隙を探り合う緊迫した戦闘が続いていたが——


メガストがふいに低く呟いた。


「クソッ、分が悪いな…」


その瞬間、メガストはジャンプシューズの出力を一気に最大にした。

爆音とともに跳躍し、農家の納屋を一気に飛び越える。


イーリスの視界から、姿が消えた。


「チッ、逃がしちまったか…」


イーリスは悔しさを噛みしめながら、残された宇宙船に目を向けた。


「仲間に通信でも送ってくれれば、位置も分かるし、こいつの黒幕もわかるんだけどな」


そう呟き、再び先読みの能力を発動。風に揺れるフードを直しながら、イーリスは次なる手を探り始めた。


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