表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

131/335

第126話(次の目的地へ)

レイは悩んでいた。


帰るべきか? 帰らざるべきか?

いや、それだけじゃない。神殿からセリンに戻るのも二日かかる。


「あと二日」という言葉の意味は、果たしてどこまでを含めているのか。

単純に待てばいいのか、それとも神殿にとどまっている必要があるのか。

それが問題だった。


(レイ、悩んでも仕方ありません。あの男の言葉を信じるなら、今から四日後にセリンに着けばよいのです。

 余裕を持つに越したことはありません)


「なるほどね……了解。もっとちゃんと壺売りの占い師さんに聞いておけば良かったよ。こんなに悩むなんて自分でも思わなかった」


レイは軽く頷きながら言い、その場にしゃがみ込んで小さく息を吐いた。


「でも、そうすると、ここでじっとしてるのもなんか落ち着かないよな」


肩をすくめるレイに、アルが静かに問いかける。


(神殿にいる理由はありませんね?)


「……たしかに。移動しながら時間を潰せばいいだけか」

顔を上げたレイの表情に、ようやく迷いが晴れた。


(ようやく気づきましたか)


「ま、多少遠回りでも、行ってみたい場所を探せばいいんだよな」


レイは小さく笑い、首をひねる。


(近隣に詳しい方に聞いてみるのが良いでしょう)


「なら、セリアさんだな」

素早く決断し、レイはそのまま歩き出した。


神殿の中庭では、セリアが涼しげな顔でお茶を楽しんでいた。

柔らかな風が吹き、庭の花々が優しく揺れている。


「セリアさん、少し相談があるんですけど」


そう声をかけると、セリアは湯飲みを置き、軽く目を細めた。


「どうしたの?」


「このまま神殿で待つより、どこか狩場とかダンジョンに寄り道できればと思って。でも、近くの地理にはあまり詳しくなくて」


セリアは顎に手を当て、うーんと唸るように考え込む。


「そうね……このあたりだと、この前行った廃村を越えた先に山岳地帯があるくらいかな。ファルコナー方面も山道が続くだけで、特に新しい発見はないと思うわ」


レイは「なるほど」と頷いた。

だが、セリアはふと何かを思い出したように、パッと表情を明るくする。


「そうだ、シルバーホルムの廃坑があったわ」


「廃坑?」


「うん。ここから行っても多分一日はかかると思うけど、シルバーホルムの鉱山の奥に使われなくなった廃坑があるの。中にはゴーレムが出てくるからDランク以上が推奨なんけど、今のレイ君なら問題ないわ」


「それ、なんだか面白そうですね。ありがとう、セリアさん」


レイは一礼し、すぐに行動に移った。


フィオナとサラにもそのことを伝え、出発の準備を進めていく。

もう迷いはなかった。次の目的地も、行動の指針も定まり、足止めの不安はすでに過去のものになっていた。


神殿前では、神殿長や助祭司、シスター、侍女たちが見送りに立っていた。


「本当にお世話になりました」


レイが丁寧に頭を下げると、神殿長は深く頷き、ゆったりと語る。


「こちらこそ、レイ殿には長く足止めさせてしまい、申し訳なく思っている。我らもいずれセリンへ向かう。道中、どうか気をつけてくれ」


「ありがとうございます」

レイは柔らかく笑って返した。


そうして歩き出したその横で、セリアが振り返りながら言う。


「レイ君、その廃坑は街道からだと遠回りになるから、ここから西へ向かったほうが早いわ」


そう言って、セリアは道を指さし、進行方向を示した。


すると、フィオナがレイの隣へと並ぶ。


「何か起きた時、すぐに対応できるようにしておきたい。私が横に付く」

「私は案内役ね」


セリアが反対側に立ち、レイは自然と両側を囲まれる形になった。


「……なんか守られてるな」

少し照れくさそうに笑うレイ。


その前方で、サラが元気よく手を挙げた。


「斥候ニャ! 先に行ってるニャ!」


軽快に駆け出していくサラの背中を見送り、一行は神殿を後にし、西へ向かい始めた。

長く続いた足止めから、ようやく解放された気分だった。

廃坑での狩りはちょっとした息抜きになるだろうと、そんな軽い気持ちで足を進めていった。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。

ブックマークや評価をいただけることが本当に励みになっています。

⭐︎でも⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎でも、率直なご感想を残していただけると、

今後の作品作りの参考になりますので、ぜひよろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ