プロローグ
本編が始まる十年以上前の話になります。この回は残酷描写がありますので、
かなりマイルドに改稿しましたが、お嫌いな方は読み飛ばして頂いても大丈夫です。
レイは幼い頃、祖父母に連れられてと当時の開拓村だったリンド村にやってきた。平穏に暮らしていたある夜、村はオークの集団に襲われる。大人たちは必死に抵抗するが、オークは圧倒的な力で村を蹂躙し、レイの祖父母も命を落とした。
そのオークは異様だった。
特に奇妙なオークの動きは、まるで何かに操られているかのようで、子供心にその光景は不気味で恐ろしかった。レイはその場で逃げることしかできず、祖父母を守ることができなかった無力さに涙した。
絶望の中、突然現れたのは黒い外套を纏った冒険者だった。冒険者は圧倒的な剣技でオークを次々に倒し、レイたちを救った。その姿にレイは強い憧れを抱くと同時に、「なぜもっと早く来てくれなかったんだ」という複雑な感情も芽生えた。冒険者に「どうすれば強くなれるのか」と詰め寄ったレイは、「強くなりたければ自分を鍛えろ」と教えられ、それを胸に刻み込む。レイは冒険者のように強くなり、いつか祖父母の仇を討つことを誓った。
「うん、僕、努力するよ!頑張っておじさんみたいに強い冒険者になる!そして、じいちゃんとばあちゃんの仇を討つんだ。」
冒険者は、その決意を見て微笑み、力強く肩を叩いた。
「頑張れよ、坊主!」
オーク襲撃から十年後、レイは孤児院で他の子供たちと共に育てられた。両親が迎えに来ることを信じていた日々もあったが、やがて誰も自分を探しに来ない現実を受け入れ、木剣を振って自らを鍛えることに専念するようになる。幼い頃の記憶は断片的で、家族にまつわるいくつかのシーンが頭に浮かぶものの、はっきりとした姿や名前は思い出せなかった。母親と思われる人がベッドで泣いている記憶、大きな剣を持って歩いていたところを抱き止められた記憶、両親と離されてどこかの家の玄関で泣いている記憶。何一つ繋がらない記憶にそれでも、レイは強くなることを心の支えにしていた。
そして十五歳になり、レイは正式に冒険者として登録される。最初は街の雑務をこなしながら、剣術と体力作りに励む日々が続いた。金もないレイはジャンク品のような粗末な剣を買い、それを毎日振り続けた。魔物討伐の依頼が来るまでは、ただひたすら訓練を積むしかなかった。
しかし、初めて魔物と対峙した時、レイの中に封じ込めていた恐怖が蘇った。幼少期に経験したオーク襲撃のトラウマが、実戦でレイの体を動かなくさせるのだ。目の前に魔物がいるのに足がすくみ、恐怖で動けなくなる瞬間が何度もあった。それでも、レイは祖父母の仇を討つという決意を支えに、少しずつその恐怖を乗り越えようと奮闘する。
レイの冒険者としての道はまだ始まったばかりだが、彼は過去のトラウマと戦いながら、実戦になったら目をつぶらずに戦えるようになろうと日々自分を鍛え続けている。いつか祖父母の仇を討つその日まで。
この物語は、そんな境遇を持った一人の冒険者が恐怖を克服し自分の力で成り上がって一人前の冒険者になって行くはずだったが、ある事がきっかけで、知らないうちに魔改造されて、王道ファンタジーからどんどん逸脱していくコメディである。
読んでくださり、ありがとうございます。
九月六日:表現がマイルドになるよう改稿しました。
要点だけ残して短くしています。