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「なんで?」

 問いながら篤史は写真を手に取る。かさばり、埋まっている分もすべて掘り起こして手に取った。そうしてぱらぱらと捲った。


 カメラを向けられていることに気づいていないのかぼうっと宙を眺めているもの、気づかないどころか腕を組んで目を閉じて眠っているもの、ようやく気づいたのか視線をちらとカメラに向けているもの、しかしながらなおも無表情を保つ兄。黒板を背にしていたりグラウンドと思しき場所にいたり、公園にでもいるのか樹木をバックにしていたり、はたまた室内であるのかベッドに横たわっていたり、ともかく写真におさまるのはどれもこれも、兄、兄、兄、なのである。


「おまえの家族に兄ちゃんのファンでもいるわけか」

 写真を捲りながら篤史は感想を述べた。その手が、口が、動きを止めた。


 世の中には見てはいけないものもあるし、知ってはいけないものもある。


 何の変哲もない、ツーショットなるものだ。第三者が眉をひそめるものなどどこにもないし、仲のいい二人なんだなとしか思わないような、つまるところ男が二人並んで写っているだけの写真である。しかしながらそれは確かに見てはならないものだった。


 今より少しばかり顔が幼いから過去の崢であるのは確かである。中学の頃の学ラン姿だ、だから中学の頃であるのも確定した。そんな彼が片手にソフトクリームを持ち、これ以上ないほどに目を細め、大きく口角を上げながら歯を見せて、つまり顔いっぱいに大きな笑みを広げながら、隣の男――おそらく崢にソフトクリームを買わされ、しょうがねえな、といった言葉でも吐いた直後であるかのような、別に面白いこともなさそうな、しかしながら口元だけで少し笑った、篤史の兄、にぴったりと身を寄せているのである。


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