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4

 

 手の中にボールがある。縫い目に指をかける。公衆便所の壁に向かって投げる。もうやめたほうがいいのは分かっている、そのうち近所の家の窓を割るだろうから。それでも篤史は投げ続ける。投げては追いかけ、拾ってはまた投げる。


 崢の住むアパート近くの公園だ。出会って間もない頃、ここで初めて変化球を習った。

 がらんとしている。犬を連れた人がいるくらいである。

 ブランコが潮風に揺れている。外灯の明かりに照らされながら。

 おい、一緒にブランコ乗るか。

 時に愉快そうに崢が笑って指差したブランコである。

 球を拾い上げる。篤史はゆっくりと辺りを見回す。崢は現れない。

 目的が違うだろう。

 不意に声がする。低く、湿っぽく、恨めしそうにそいつは言う。

 ここへ来て俺を放り投げる、その目的だ。

 意味のない投球が続く。果てしない、無意味。分かっている、時間の無駄であると。しかしやめられない。やめられない理由がここにはある。

 俺を見ろ。

 手の中でボールが言っている。どすのきいた、太い声で。

 俺を見ろ。




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