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 腕が、指が、球が狂う。篤史の腕から放たれる球は幾人ものランナーにホームベースを踏ませてゆく。


 もはや制御不能となった。ハンドルとブレーキ機能を持たない自転車である。坂道を猛スピードで転がり落ちるのみだ。


 キャッチャーが駆け寄って来る。落ち着け、いつも通りに投げろと言う。分からねえんだよと篤史は叫びたくなる。いつも通りが分からねえんだよ。


 終わったな、あいつ。どこからか声がする。誰の声かは分からない。マウンドまで誰かの声が聞こえてくるはずもない。しかし確かに聞こえる――終わったな、あいつ。


 試合直前に嘔吐したのを言い訳にするか。今日は調子が悪いんです、だからこうなんです――そんな言葉を俺の口が喋るのか? それこそまた吐きそうだ。


 もうピッチャー代えてくれ。ベンチの崢に幾度も視線を滑らせた。もう俺をマウンドから降ろしてくれ。俺に何球投げさせたって、いつか良い球を投げることを期待したって無駄だ、何者かに乗っ取られた俺はもう、まともに投げられない。

 ついに崢がピッチャー交代を告げた。



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