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3

 ユニフォームは白い。であるから闇の中にうっすら見えたわけか。練習後は制服に着替えて帰れとの監督からの指示を一切無視して帰るのが崢の常である、この日もそうだった。


 その背中についていく。一定の距離を開けて。そうして気づくのは向かう方向が違うことである、崢の足は校門でなく野球部の部室のほうに戻っている。


 ちょっと家の用事がある。確かなる嘘である。


 その嘘をこじ開ける。崢の目に触れてはならない。崢が部室の入口のほうに回ったから篤史はその反対方向に回る。窓越しに崢が見える。暗闇にのまれた崢の顔は窺えない。認識できるものは部室の中から漏れ出す声だ、窓が少し開いていた。そしてその声がおかしなものであること、部室にはそぐわぬ、いや、決してあってはならぬ類のものであることも瞬時に理解した。


 確かに聞いてはならなかった。ここに兄がいればすぐに篤史の耳を塞ぐはずだ。ここか? 男の声がした。それに呼応するかのように、あ、そこ、と女の声が上がった。ここだな、男がそう言えば、あ、もっと、と女は反応した。


 兄に閲覧を制限されている動画、それらの持ちえない、あまりにも自然な、身近な、だからこそ生々しさを増すそれ。明かりのない部室の中で確かに繰り広げられていた。暗闇に慣れてきた篤史の目がとらえるものは、椅子に座った大柄の男が膝に制服姿の女子を乗せ、片方の手を彼女のブラウスの中に入れて胸を揉み、もう片方の手はスカートの中、脚と脚の間に差し込んでいる、そんなさまであった。


 漫画の世界か、それともドラマのそれか。ここは部室だ、だから学校だ。乱れゆく吐息に混じって女は、先生、と言うし、それがなお漫画であった。教師と生徒であることが確定した。大惨事だ、発覚したらただでは済まない。すでに見られているのだ、二人の人間に。ちらと盗み見る崢の顔は相変わらず暗闇に沈み込んでよく見えないが、二人のさまをただじっと見ている、それだけは分かった。


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