四捨五入したら密会
「料理が冷めてもよくないから話の続きいつしようか?」
「今、ほら興が醒めても良くないから。」
二度目になるが料理より話を楽しみにしている節がある。
「そうか、私の名前はアイン=エールキング。バン=エールキングの弟だ。」
「弟?てっきり兄だと思った。」
確信になったのは本名じゃない話したとき。
兄だと思ったのは話を振ったり助けようとしたりの世話焼きが一つ。
それに加えあんなことをするのが上だと思いたくない。
「タメだけどな。」
「双子か?」
ハッシュドビーフについてはハヤシライスをアダルティーにした感じだ。
これ以上の食レポを求めてはいけない。
「いや、義理の弟だ。」
「へえ、バンの誕生日はいつだい?」
半分くらい食べた。水を飲む。
「明後日。」
「え、渡されたの今日なのに?」
水は吐き出さなかったが、紙が今日渡されたことを吐いた。
僕が誕生日を知らないのによくできると思ったな。
「運がいいのか勘が鋭いのか、いつも期日前までに紙が来る。」
「どうするんだ、やるのか?」
果し合いなんて物騒な言葉が使われていた。口にたまった唾液をゴクリと飲む。
「これで三回目だ。」
「死ぬのが怖くないのか?」
決闘では14分の1で死ぬといわれる。そして勝負は水物だ。
前回がどうだったとしても予測できないことが起こるかもしれない。
「死にやしないさ。これまでもこれからもな。」
しばらく考えた後、アインは微笑みを携えて答える。
全部食べ終わった。口を拭き、片手をおもむろに出す。
「ジャーンケーン、ポン。」
最も身近な勝負、ジャンケンこそが最も如実にそれを表す。
…負けた。言葉にしてなくてよかった。恰好良すぎて黒歴史に刻まれるところだった。
「今、僕が負けたわけだが次も僕が必ず負けると言えるか?」
絞り出した。ここに来てから一番頭を回した。
勝負に必然はないと敗者がいうのだ。納得できる理屈がいる。
「急にどうした?そりゃ言えないが…あー、そういうことか。確かにそうか。」
何やら納得したらしい。今から説明しよう思ってた。
「まじか、今ので分かるとか凄いな。」
「皮肉ばかりの義姉に鍛えられたのさ。」
姉?アインが最後の一口を食べきり、どこか嬉しそうにうんざりしたように話す。
「三姉弟か?」
「いや、バンだけだけど。」
そうなんだ。血の気が多くないか?
「そうか。三回の果し合いの結果はどうだった?」
「三敗、一回も勝ててない。だからさ、助けてくれない?」
最初からこの話をしに来たのか。いや、最初は名前すら言うつもりなかったから違うか。
「まだ能力がないからほぼ何の役にも立てないと思うが。」
三日目だからギリギリできるかどうかだ。
「それは大丈夫だ。芝居を打てばいい。アッと驚かせるようなものをな。」
「どんな芝居だ?」
偏見だが皮肉屋が声を上げて驚くイメージがない。
「後で話すさ。」
「ご馳走様でした。」
アイスについてだが普通に美味しかった。