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パンデミックが起きた

作者: 雉白書屋
掲載日:2023/10/29

 パンデミックが起きた。パンデミックが起きた。

 国民の生活基盤を揺るがす恐ろしいウイルスだ。

 感染力が強く、かかれば高熱に喘ぎ、命にさえ届く恐ろしいウイルスだ。


 しかし、初期にその危険を素早く察知した政府の対応は、のちに褒め称えられるほど早かった。

 感染拡大防止策の実行。感染者を隔離し、封じ込めに成功。入国制限に検疫措置。水際対策は完璧だった。

 だが、それでも広がりを抑えられない驚異のウイルス。

 しかし、頼れる総理。理解ある国民。自粛を促されれば素直に従った。

 耐え忍び耐え忍び、各国と協力し合い、開発されたワクチンにより、やがて世界は前と変わらぬ平穏を取り戻したのだった。



 そうだ。完璧だった。

 事実は小説よりも奇なりとは敗北宣言か。 


 感染発生が確認された船内のゾーニングは完璧だった。

 差し入れの弁当が行方不明になる事などなかった。

 県を跨ぎ遊びに遊び、ウイルスをばら撒いた大学生などいなかった。

 マスク・消毒液の買い占め、フリマサイトで転売など起きなかった。

 騒動初期に政府が観光客を両手を広げ迎え入れはしなかった。

 騒動初期に政府が国民に旅行を推奨することはなかった。

 政府が国民に配布したマスクは質が良かった。

 余ったマスクを保管していた倉庫からマスクが消えた事などなかった。

 そのマスクにかかった金は微々たるものだった。

 国からの補助金の不正受給など起きなかった。

 ワクチンに副作用などなかった。

 ワクチンに異物混入などなかった。

 マスクをつけるつけないで人間同士で争いなど起きなかった。

 政府が開発させたウイルス感染症の拡大防止を目的としたアプリは大いに活躍した。


 拍手拍手。医療従事者に拍手のエールを。

 来るな来るな。あっちへ行けよ感染者。

 遊び遊び。また感染。特定されて村八分。

 逮捕逮捕。破滅の言葉。俺、陽性。

 陰謀陰謀。人口抑制。

 自粛自粛。守らない奴は人でなし。

 マスクマスク。マスクをよこせ。隠すな売れよ詰め寄る客。これが民度だ諸外国。

 


 やがてまた感染蔓延。ウイルスが変異強毒化。

 みんなみんな死んだ。

 突貫工事で作られたワクチンを接種した者はその副作用により、脳を焼かれゾンビ化し、他者の新鮮な脳みそを求めた。

 新たなマスクは轡。他人を噛まないようにするためにつけるもの。

 これは空想。誇張。戯言。未来などではない。

 多分そう……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「新しいマスクは轡」が良かった。
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