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シークレットベース

 身換室に来た俺たちは、シロコさんに冷ややかな目で見つめられながら、トウカを横に寝かせる。


「だから、ここは休憩室じゃ」


 シロコさんは急に頭を抑え出す。


「だ、大丈夫ですか?」


 トウカを寝かせていた俺が支えに行こうとするよりも先に、アリスが手を貸した。


「どうしたの?おっかさん」


 その声は弱々しく、心配に満ち溢れていた。

 少し前から気になっていた"おっかさん"の正体はシロコさんだったようだ。その経緯まではわからないが。


「いや、ちょっと、思い出したくないことが頭の中に流れ込んで来ちゃって」


 もちろん、それが何かを聞くことはできない。ソウルターミナルにおいて、過去の詮索は禁忌なのだから。


「すいません、シロコさん。突然、押しかけてしまって。この子はここで働くことになった」

「トウカ……」


 すでに情報が回っているのだろうか。俺が名前を伝える前に、シロコさんはそう呟いた。


「情報伝達早いですね。どうやって回ってきたんですか?」


 シロコさんは頭を抑えながら話してくれた。


「違うよ。情報が回ってきたんじゃない。私は知ってるの。トウカのことを」


 今日ここへ来たばかりで、誰も知るはずがないトウカのことを、シロコさんはなぜ知っているのか。

 情報が回って来ていないということは、過去の記憶にトウカが存在しているということ。


「詳しく教えてくだ」

「いや、この話はここまで」


 説明を求めたのだが、シロコさんに言葉を上書きされてしまった。


「お姉……ちゃん?」


 気を失っていたトウカが目を覚ました。


「トウカ!」


 この三人の関係は、一体どういうことなんだ?俺が知らない間に何が起こっていたんだ?


「大丈夫?」


 アリスはシロコさんに、ちょっと行ってくるね、と言って、トウカの元に歩み寄る。


「うん、大丈夫。私、どうしちゃったの?」


 アリスが簡単に説明する。


「そうだったんだ。あ、そうだ、あの時、アリスさんが、お姉ちゃんが私を妹かもしれないって言ってくれた時、一気に記憶が流れ込んできて、それで、頭がクラクラしちゃって」


 アリスはトウカの頭を胸に抱き寄せる。


「そっか。大変だったね。もう大丈夫だからね」


 俺はまだ、ソウルターミナルでの禁忌について話していないことを思い出す。


「トウカ、実はな、ここではやってはいけないことが」

「私から話させてくれ」


 説明しようとしたところをシロコさんに止められてしまう。

 口を開けば被せられ、止められ、もう話すことやめようかな。心だけで呟いていようかな。


「トウカ、ここではやってはいけないことがあるんだ。それは過去の詮索だ。したからといって何があるかまではわからないけど、とにかくしてはいけない、ということだけは覚えておいてね」


 数分前までの真剣な眼差しからは考えられないほどに、トウカはキョトンとしていた。


「わかった!おっかさん!」


 あ、おっかさんって言った。


「やっぱりあたしたち本当の姉妹なんじゃないの!?」


 テンションの上がったアリスは、トウカを立ち上がらせ、両手を掴んでグルグルと回り始めた。


「こらこら、さっき起きたばっかなんだから、安静にしとかないと」


 二人の空間に俺の声は届いていないようだった。俺の存在価値 is どこに。


「ねぇ、オチヤ君から見て、二人の関係についてどう思う?」


 頭痛が和らいだのか、シロコさんが俺の元にやって来て呟く。


「よく、わかりません。二人からしたら過去に何かがあったのかもしれませんが、俺からしたら今日会ったばかりの二人にしか見えないんです。いくら二人の言うことが正しいことだと判断したくても、脳がそれを否定するように返してくるんです」


 シロコさんは袋から取り出した飴を口に放り込む。


「私もそんな感じ。脳に染み付いたようにトウカの名前は出て来たけど、時間が経過すると共に間違っているんじゃないかって思えてきてさ。脳に否定されるってことは、事実じゃないってことなのかな」


 飴を片方の頬に居座らせながら話すシロコさん。


「よし、まぁ、この話は終わりにしよう。誰かに聞かれてでもしたらまずいしね。で、オチヤ君とアリスは体換えてくんでしょ?」


 あ、そういえば受付終了の時間に合わせていくって話だったけど、気づけば勝手に合うようになってたんだな。


「はい。忘れて思い出してを繰り返していましたが、今は忘れてました」


 シロコさんがこたつをずらすと、地下への扉が現れる。


「これ、シークレットベースじゃないですか!」


 トウカの真剣キャラがほんの数分で消えてしまって少し悲しいけど、これが素の姿なら無問題!元気っ娘最高!


「シークレットベース?」


 俺は尋ねてみた。


「はい。昔、あ、な、何でもありません!ごめんなさい……」


 なるほど、その反応でどういうことなのか理解できた。


「記憶があると、何でもかんでも話してしまいそうで、怖いですね」


 トウカの笑顔が眩しい!この姉妹はなんでこんなに光り輝いてるんだぁ!

 あれ、でも、トウカはアリスと違って、金髪ロングじゃなくて茶髪ショートだし、顔も似ているとは言い難い。本当に姉妹なのか……?


「どんな物語も、シークレットなことがあればあるほど面白いんだから。さ、行くわよ」


 さもうまいことを言ったかのように、満足そうに階段を下りていくシロコさん。

 三人の上機嫌さを見ていると、本当に家族のように見えてきた。体を換えたらすぐファストに会いに行こう。

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