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季節高校生  作者: GORO
季節の章ー春ー
96/99

家電と二人と

とある日曜日。


「藪笠くん、……ホントにごめんなさい」


と、隣で肩を落とす島秋。その隣には苦笑いを浮かべる藪笠の姿がある。

学校も休みであるから私服姿の二人。

そして、今。島秋と共に藪笠は人通りの多い大型の家具や服屋などが並ぶショッピングモールへと来ていた。


「……ホントにごめんなさい」

「いや、何回も言わなくていいから。後、俺も暇してたし」


頭を下げる島秋を手で制しする藪笠。

何故こうなった、と藪笠は早朝の出来事を思い出す。









早朝、朝の六時。


「ううぅ……」

「…………………」


島秋の電話でバイクを走らせ彼女の家に着いた藪笠。

そこには玄関で涙目になる島秋。

その傍らで、プスプスと音を立てる炊飯器があった。

それは藪笠に電話する一時間前。父、島秋正木が仕事で遠出し家に一人いた島秋は朝食を作ろうと夕べに予約しておいたご飯をよそおうと炊飯器の蓋を開けた所、ボン! と炊飯器から内側から小さな爆発が起きたらしく、ご飯も黒焦げに加えパニックもあり朝食にありつけず、家電製品に対しての知識に疎かった島秋はやむなくして藪笠に電話した、との事。

その話をあらかた聞いた藪笠は眉を顰めつつ。

……よく火事にならなかったな、と島秋の密かなドジッぷりな危うさに冷や汗をかきつつ、例の炊飯器を見る。

手で持ち上げ外側を見るも何も漕げたような痕跡はなく、そうなると内側の鎌を取ったその下の中身、いわば構造自体のどこかが故障したのだろう。

藪笠は溜め息を吐きポケットから携帯を取り出し、自身の知る中で機械関係に強い竜崎牙血に電話をかけた。

そして、ざっと説明したのち、


「―-というわけで俺にわかるように話した上で直せ」

『いきなり無茶ぶりすぎですアニキ!?』

「お前の意見は聞いてない」

『ヒドッ!』


突然の電話および脅迫。

これ以上話しを伸ばすと嫌な予感しかしない、と感じた竜崎は、コホンと咳払いしつつ。

返事を待つ藪笠に対し、はっきりと言った。


『……アニキ』

「ん?」

『もう爆発した時点で修理は無理だと思います!』

「よし、後でそっち行くから顔洗ってまっとけ」


ブチッと、何か言い訳を言っていた竜崎を無視して電話を切った藪笠。

こうして、宛てをなくした藪笠たちはその後、ショッピングモールに行くこととなったのだ。







そして、入店して数分経った、家具が並ぶ市場にて、


「うわぁー!!」


島秋 花は、完全に真新しい家具たちに目を奪われていた。

確かに、今では家具も新しい便利機能などが装備され、それなりに良い物になっている。

たまに広告のチラシを見ても欲しいと思う家具もある。

が、しかしだ。

一番の青春時代である高校生の少女が家具の宝庫に目を輝かせているというのは、どうなのだろう?


「あー、島秋?」

「っは!? ごご、ごめんなさい!」


藪笠の声に気づき、慌てる島秋。

周りにいた主婦らしき奥様方が小さく笑っており、島秋も顔を赤くさせていく。

そんな普段の雰囲気とは少し違った感じの彼女に藪笠も口元を緩ませる。

すると、島秋が不思議そうな顔で藪笠を眺め、


「………藪笠くん」

「ん? どうした?」

「いや、何か変わったねって思って」

「え?」


島秋の言葉に、首を傾げる藪笠。

同時に、その表情はこの前会った鍵谷とどこか似ていることに疑問を抱く。

そして、彼女自身。

悪気はないのだが、藪笠に対して少し躊躇いながら言う。


「なんていうか………子供っぽくなった」

「おい、それ凄い失礼だぞ」

「そ、そうかな?」


ははは、と小さく笑う島秋。

竜崎だったら拳一発はくらわせていただろうと思いつつ、消化不良のように藪笠は溜め息を吐くのだった。




そうしてまた数歩と歩き、目的の炊飯器が置いてある場所についた。


「「…………………」」


瞬間。

二人の視線は十個ほど並ぶ炊飯器の値段に一直線に向かった。

値段。

予想では一万ちょっとと思っていたのだが、何故かそこに並ぶ全部の炊飯器が二万円を超えていた。

どうやらこの一週間、新作家具を売ることになっているようで、炊飯器が置いてあるすぐそばに何やら熊のマスコットらしいキャラクターのイラストが『高いけど、いいよね?』と笑っている。

はっきりと言って、いいわけがないだろ。


「た、高いね」


島秋は財布の中身を確かめつつ、その顔には明らかに無理ですと書いてある。

確かに高校生の上にアルバイトをしていない島秋にとって、二万円は正直高い。

仕方がないか、と涙目になる島秋をよそに財布の中身を確かめた藪笠はどれにするか眺めつつ、言った。


「おい、一緒に決めるぞ。俺が出すから」

「ぅええ!? それダメだよ!!」

「いや、だって財布の中身アウトだろ」


ごもっとです、と苦い表情を浮かべる島秋。

だが、こんなに色々手を尽くしてくれた藪笠にお金まで払ってもらうのは余りにも頼りすぎている。というよりも、島秋自身それを許可できない。

意を決して島秋は藪笠を止めようと、口を開こうとした。


しかし、この時。

彼女に、天使が舞い降りた。



「はいはい、寄った寄った!!」



パンパン! と音を立て客寄せをする鉢巻きを巻いたスタッフ。

その直ぐ側にはテーブルが置いてあり、白紙とペンが置いてある。

そして、何より。

島秋が目を奪われたのは、そのテーブル後ろの壁に貼られた紙の文字。


『カップル限定、家電取りまくれの早食い大会!!』


ピシッ、と。

島秋の雰囲気が変わったことに、藪笠はいち早く気が付いた。

しかし、すでに手遅れ。


「藪笠くん」

「悪い、胃が痛いからトイレ行ってっ!」

「行くよ♪」

「ぐっえッ!? 襟首って首閉まって!! 俺の意見はまた無視! って死ぬホントに死ぬぅうぅぅ!!」


ぐいぐい、と引きずられながら連れて行かれる藪笠。

こうしてカップル限定、生活が懸かった早食い大会の火ぶたが切られることとなる。






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