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季節高校生  作者: GORO
季節の章ー春ー
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冗談



藪笠の瞳は異常な色へと変色する。

獣の唸り声を出す少女は間合いを取ろうと後ずさる。

だが、


「陣・流地桜」


ドンッ!!

その場一帯、藪笠を中心に音に続き地震が起きた。

少女の警戒心が一瞬とぶれる。


藪笠は、その隙に地面を蹴飛ばし少女に急接近したすぐに左鉤爪を少女の右肩狙いに叩き付けようとした。

普通なら一撃として通る。


しかし。


「ッ!?」


片足を落とし、自身の体勢を強引に変え藪笠の攻撃を回避した。

舌打ちを吐くと同時に後ろに飛び退く藪笠。

少女は瞳を細め、両手を付いた四本足で地面を駆け出し藪笠に向かって左手の鉤爪を放つ。


「!!」


藪笠は微動だにせず、咲雪桜陣の基準となる干渉を意識し、設定する。



少女に対して、干渉しない。



少女の鉤爪が藪笠の頭に振り落とされる。

だが、接触するその数センチの間で鉤爪が動きを止めた。

いや、止めたのではない。

降り下ろした力は継続している。

だが、それがまるで見えない壁に衝突したかのように思う通りに振り落とせないのだ。

そして、振り落とせない鉤爪はそのまま地面に突き落とされる。


「ッ!?」


少女の顔が痛みにより、歪みを見せる。

地面に突き落とされる鉤爪は、折れはしていないがそれでも土に埋もれる形となっている。


どうにかして左手を抜き取ろう。


少女は左腕に力を込めようとした。だが、


「!?」


すっ、と顔前に突きだされた手のひら。

藪笠は、小さな声で呟く。



「咲・蓮雪華桜」



トン、と中指で少女の額を突く。

衝撃と干渉。

二つを相手の体に喰らわせる。その技は本来、相手に手のひら、もしくは拳を接触させる事で意識をもぎ取っていた。

だが、今回。

脳に近い額に干渉を与えた事で少女の意識を奪うことはそう難しくない。


「ッぁ……………」


瞳が虚ろになり、ストンと地面に倒れる少女。当分は目を覚まさないだろう。


「ふぅ……」


大きく息を吐くと同時に藪笠の瞳が雪が抜けた桜色へと戻る。

藪笠は地面に眠る少女を見下ろし、その容姿に目を細めた。










『おい、お前。大丈夫なんだろうな』


藪笠の棘がかかったような言い方がリーナの耳に届く。


「ああ、一応はな。子供の方には逃げられたが、奇妙な奴を捕まえた」

『奇妙?』

「すぐにそっちに行く。そこでちょっと待っていろ」

『あ、おい!!』


藪笠が何かを言っていたが、リーナは携帯を無言で切り小さく息を吐いた。

電話で話すより、実際に会わした方が早いと思ったからだ。

リーナは後ろに振り返りながら口を開く。


「と、いうわけだ。貴様にも来てもらうぞ」

「むぐ?」


ポケットから出したガムを加える風霧。

さっきまでとは印象が全く違い、呑気な表情を浮かべている。

そして、それがリーナにとってよけいに腹が立つ。


「……………」

「まぁまぁ、そんなカリカリしてると眉間にシワが付くぞ?」

「余計なお世話だ」


はぁ、と溜め息を吐くリーナ。

と、どうやら飲み込んでもいいガムのようで口の中で咀嚼した風霧がリーナに対し尋ねた。



「さっきの電話」

「ん?」

「…………彼氏か?」




……………………………………………。



…………………………。









ボンボンボン!!

直後、リーナの顔が赤面に染まる。


「な、ななな、何を馬鹿な事を言っているのだ貴様は!!!!」

「……………あー、悪い。片想いだったか、こりゃ失敬」

「ち、ちち違う!!」

「何か、可愛そうになってきた」

「勝手に罪悪感に浸るな!!」


場の空気を一瞬で変えてしまった。

風霧は口元を緩めながら、歯を剥き出しに思春期の子供のようにやや涙目になるリーナを見て、笑うのだった。




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