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季節高校生  作者: GORO
第1章
6/99

デート?

編集しました。

感想お願いします。


五月ニ日。

土曜日の学校休日の早朝、時刻は七時半を回った所だ。

未だ寒さが残る公園の一角。


「うーん……」


島秋 花は一人、時計台の針を見つめながら立っている。

学校から少し離れた場所に位置する公園。

辺りには犬の散歩をする人や親子連れ、筋トレのランニングをする人々たちが行き交う。

島秋も同じように散歩に来た、というわけではなく今回たまたま待ち合わせがこの公園になったのだ。


早朝、肌寒い中で待つ人。

それは、


「おーい」


数キロ遠くから声と同時に片手を上げる少年。

藪笠芥木だ。


「あ、藪笠君」

「おはよう♪」


藪笠の姿に島秋は駆け寄り口元を緩める。

一方の藪笠は、どこか気まずそうな表情を浮かべ返事を返す。

どうしたの? と首を傾げる島秋に対し藪笠は、


(し、島秋だよな……)


正直な所、軽く動揺していた。

理由は単純。


綺麗と思った。


ピンクの花柄が付いたオレンジ色の長袖、それに青いスカート。

普段は子供っぽく見える島秋だが、私服になると一変して綺麗に見えた。


「で……どこに行くんだ」


藪笠は顔を反らし頬の赤らめを隠そうとする。

が、その直後。


ギュッ、と。


「!?」


藪笠の手が傍らから伸びた手によって握られる。瞬間、目を見開いた藪笠の顔が一気に赤みを増す。

伸びた手、それは側で口元を緩める島秋の手だ。


「内緒♪」


暖かな藪笠の手を握り、にっこりと笑う島秋。藪笠は、その島秋の表情を茫然と見つめる。

そして、内心で呟く。



何故こんなことになった?



吹き抜ける風に髪を靡かせながら、藪笠は昨日の出来事を思い出す。





五月一日。

授業の終えた放課後の教室に、


「明日、付き合ってください!」


雷が落ちた。


「…………………………………は?」


目の前に立つ島秋からその言葉が飛び出たことに目を点にさせる藪笠。

教室には夕焼けの光が満ち、数人の男子と女子が茫然とその現場を眺めていた。

そんな中で起きた事態に対し、どう反応すればいいか分からない藪笠。

が、その直後。


「!」


ビュッ!!

藪笠に向かって、無数のハサミやサシが放たれた。


「んなっ!?」

 

藪笠は、慌ててその凶器を避け、床には次々と凶器が刺さっていく。

同時に、チッと舌打ちが微かに聞こえた。


「お、お前ら…後、今舌打ちしやがったの誰だ」

 

額に青筋を作り立ち上がる藪笠。しかし、目の前の島秋に気づき、ひとまず落ち着こうと大きく息を吐く。

そして、島秋に対しもう一度尋ねる。


「悪い、………さっきのって幻聴?」

「ッ………幻聴じゃ、ないよ」


頬の赤みを隠すように島秋は顔を俯かせ、声を低くさせる。

その瞬間に殺気が藪笠に降り注いだ。


「「「「「藪笠ぁぁぁぁぁ!!!」」」」」

「うおっ!?」


カッターナイフ、シャーペン、ハサミ、物差し、と藪笠目掛けて一直線に放たれる。

とっさに殺気に気づいた藪笠は、何とかその凶器たちから避け床に再び凶器が突き刺さった。


「あ、あぶねえだろうが!? 当たったらどうすんだコラ!!」

「ちっ、はずしたか」


教室に残る男たちは悔しそうな表情を浮かべる。


(…………こいつら、潰す。後、舌打ちした奴は絶対にぶっ飛ばす)


額に浮かび上がった青筋かみをピクピクさせる藪笠に対し、悔しがる男たちの内の一人が

涙目で言い放った。


「藪笠………テメェ、鍵谷と浜崎に続いて島秋まで誘惑しやがって!!」

「っな、ってするか! 後、鍵谷と浜崎もって何だよ!!」

「黙れ! 野郎ども、やっちまえ!!」


おおおおおおおおおおおおおおおおお!!

と、男子軍勢で藪笠に襲い掛かる。


結果、返り討ちでボコボコにしまくった藪笠は、乱闘の末。



島秋 花と、デートすることとなったのであった。










公園から、歩くこと数分。


「で、どこ行くんだ?」


島秋に連れられるがまま、藪笠は人通りが多い商店街に来ていた。

時間もあって人通りは多く、買い物に来ている主婦たちは口元を緩めながらこちらを見ている。

傍から見て、カップルと思っているのだろう。


(まぁ、手を繋いだまま歩いていたら思われても仕方がないよな)


ははは、と内心で苦笑いをする藪笠。

と、その時。


「あ! 藪笠くん、あそこ!!」


指さす島秋に、藪笠は視線を動かした。

そして。


………………………………………………………。


「……なぁ」

「何?」


藪笠は目の前にある一軒の飲食店。

その店の直ぐ側にある白い木の看板を見た。


『男女カップルでの早食いチャレンジ♪』



「もしかして………これのために俺を呼び出したわけ?」

「うん」


……………………………………………………。


ぐるり、と後ろに体を向け、


「帰る」


藪笠は足を動かそうとした。

が、その直後。


「ダーメ♪」



ガシッ、と。

力強い、少女とは思えない程の握力が藪笠の腕を握り締める。


「痛い!? どんだけ怪力な」

「早く食べにいこう♪」

「って、聞けっ!」

「食べにいこう♪」

「無視!? おい、島秋っぎゃぁぁあああ!! 痛い痛いからあああああ!!」


結果。

ズルズルと藪笠は島秋に連れられ、その飲食店に入ることとなった。









時刻は昼の一時。

飲食店から出た後、藪笠たちは今商店街を抜けた中央広場に来ていた。


「はぁ……」


現在、藪笠はベンチでダウンしていた。

あの店に入って数分で島秋がビッグサイズの料理を完食したのまではよかった。だが、その後が大変だった。

島秋のあまりの早食いに、その店の店長が対抗心を露に数十倍の料理を出し、関係のない藪笠にもチャレンジという名の被害が及んだのだ。


「苦しーい…………」


こうして藪笠はダウンする。

そんな傍ら背後から、


「はい、バニラ♪」


苦しいと言ってる人に渡しますか、とばかりに島秋が直ぐ近くにあったアイスクリーム屋さんから自分と藪笠の分のバニラ、チョコのアイスクリームを買ってきた。

渋い顔をしながらバニラを受け取る藪笠。


どうにも島秋だと断わるに断われない。


「はぁー」


藪笠は息を吐きながらバニラを舌でペロッと舐める。

少しずつ舐めていけば、なくなるだろう。バニラから舌を離し空を見上げる、その時だった。


ペロッと。


横から、今藪笠が舐めていた所に別の舌が触れる。


「!?」


バッ、と舌が来た方向に視線を向ける、そこには。


「いただきます♪」


ニッコリと笑みを浮かべる島秋の顔が、


「お前ッ!なッ!?」


顔を真っ赤に染まらせ島秋から距離を取り、今のは何かの見間違いだ、と頭で不定しようとする。

次の瞬間。



「へぇー、いい雰囲気ねえ」

「……は?」



目の前から放たれた声に、表情を固まらせる藪笠。


どこかで、いや、週に何回も聞いたことがあるような…。

藪笠はゆっくりと視線を前に向けと、そこには普段からでは考えられないような服装をした少女と何故か驚いた表情を見せる少女が立っていた。


藪笠は引きつった顔で口を動かす。


「は…浜崎」

「あ! 玲奈ちゃんに真木ちゃん♪」


口元を緩める浜崎と、対して驚いた表情を浮かべる鍵谷。



藪笠と島秋のデートはまだ始まったばかりだ。





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