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季節高校生  作者: GORO
第1章
14/99

やっとの笑顔

やっと書けました。

後、できたらこの話のイラストはゴロページに載してみたいと思います。






その瞳はとても冷たく、孤独のような。


鍵谷は目の前に立つ、籔笠を見てそう感じた。


「………」


沈黙が漂う。

籔笠は小さく息を吐き、羽織を揺らしながら鍵谷の横を通りすぎていく。


そして、店員に連れられ、奥の部屋へと入っていった。




ペタッと、力が抜けたように座り込む鍵谷。


(…………籔笠だよね)



別人だった。

そして、今まで知っていた籔笠が嘘に思えた。



そうしていると、


「何してんだ、お前」

「え」


店の女性店員と見覚えのない黒の服を着た籔笠が戻ってきた。

衣装を着たお礼に、店長に貰ってきたのだろう。


「これで良かったんだろ?」

「あ、うん」



鍵谷はさっきの彼と違う籔笠にきょとんとしている。


(籔笠……だよね)



一人、頭を悩ませ悩む鍵谷。

すると、その時、


「鍵谷」


ビクッと肩を震わせる鍵谷。

振り返ってみると、そこにはさっきとはうって代わり。






青筋をたてながら口元を緩ます籔笠が、



「まさか、お前は着ないとかはないよな?」



…………………………。


鍵谷は思い出す。

ついさっき、試着室にかけられていた物を。



「……あ、あははは……………」






…………………………………。



ダメ?








その数秒後。


「うにゃあああああああああああああ!!」



一人の少女の悲鳴が店内に響き渡った。










そして、時間はたち。


「うぅ」


鍵谷は今、籔笠とともに待ち合わせ場所だった公園に来ていた。

鍵谷の手には大きな紙袋があり、その中にはオリジナルの服が入っている。


「さって、これで終わりか?」

「う、うん」


あの後。

鍵谷なりに頑張ろうとした、つもりだったのだが、服屋の一件や勇気のなさやらでただここに戻ってくることしか出来なかった。



(花のように……)


鍵谷は友達の島秋のことを考える。



無邪気で、可愛くて、そして思ったまま行動する。




そんな彼女が羨ましかった。



「んじゃ、また明日な」

「……」


籔笠はそう言って鍵谷から離れようとする。

鍵谷は何も言えない。








せっかくの今日はこうもあっさりと終わってしまう。










嫌だ。

嫌だ!

嫌だ!!



鍵谷は離れようとする籔笠を握る。

そして、


「………待っ」




て、と唇を動かそうとしたその時。





ポッ、ポツ、ザザー、ザアアアアアアアアアアアアアアアアア!!










「…………」

「…………」



狐の嫁入り。



そのワードが籔笠の頭の中に浮かんだ。

肩を落とした籔笠はゆっくりと手を握ってきた鍵谷に振り変えってみると、そこには、


「……………」


あまりのことに目を見開き、きょとんとする鍵谷の姿があり。

さらには服のあちこちが雨で透け、危険なことに…。





「…鍵谷」


籔笠は肩を落とした状態で尋ねる。









「家、来るか?」










何でこんな事になったんだろう。

鍵谷は自身の今いる状況を確かめる。




最初に、二階建ての団地のとある一室。

その一室は畳七畳の一人部屋で生活には欠かせない、そんな家具やらタンスやらしか置いていない。



次に、服の脱ぎ、代わりに今日買ったオリジナルの服を着た自分。

上の服には花柄の絵柄が胸元からしたまで綺麗に描かれ、下のスカートは少し短いめの薄藍色をしており、腕にはピンクの花飾りのついたリボンが巻かれている。




そして、最後に、


「タオルならそこにあるからな」


服を脱ぎ捨てた、上半身裸の籔笠が…。




(何でこんな事になってるのぉぉぉぉぉ!?)


頭を抱え、一人もだえる鍵谷。


「…お、おい、大丈夫か?」

「はッ!?ただだ、大丈夫。大丈夫だから!!」


慌てて、籔笠にそう言いつつ距離を取る鍵谷。

しかし、籔笠の視線は全く離れることはなく、



「な、何?」



おずおずと尋ねる鍵谷。

一方で、いや…、と籔笠は視線を窓の外に向ける。



そして、小さな声で、


「(似合ってんじゃねえの…)」

「え?」

「あ、いや、なな何も言ってねえよ!!」

「で、でも今…」

「い、言ってねえ!!」



顔を赤くし、抗議する籔笠。






しかし、鍵谷はさっきの言葉を危機逃さなかった。





『似合ってんじゃねえの…』








「籔笠」

「な、なんだ」


未だ顔を赤くさせながら振り返る籔笠。


そんな籔笠に鍵谷は言う。








「ありがとう♪」










こうしてこの後、直ぐに雨は止み、鍵谷は帰っていった。










そして、この直後。

籔笠の地獄の明日が決定した。




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