第7話 ダブロフサイド / 悪だくみ
【短編】で投稿した『ぼくは、幻聴に恋をした(改)』を【完結版】として連載投稿開始いたしました。完結しておりますので、最後まで楽しんでいただければ幸いです。
ちなみに、第1話は、【短編】と同一の内容になっております。前作を読んでいただいた方は、第2話からお読みいただいても大丈夫です。まだの方は、第1話からお読みいただけると、より楽しめると思います。
<<ダブロフサイド>>
使いをやって1日半後に、能無しどもが、がん首をそろえて宿にかえってきた。
「空中に大岩がういて」
「なっ、何にもないのですよ」
「ホーリーのヤツ、魔物の力を自分のモノにしたんですよ!!」
「違うわ、ボブ!魔物にたたられて、あやつられてるのよ!きっと!ホーリーの意志なんかじゃないわ!!」
ギャーギャーとわめいているが、肝心なのは
「山賊どもは、ホーリーたちにお前たちのことをはなしていたか?」
これにつきる。
だが、ふたりは、首をはげしく横にふりながら、思い思いのことを叫んでいた。
見てねぇ。ということはわかった。
それにしても、うるせぇ連中だ。
いっそ黙らしてやろうか。
「おふたりとも、大変でしたわね。これを飲んで。落ち」つきますよ
リンダが、ボブとキャサリンにグラスにはいった赤い飲み物をすすめた。
いたわる必要などないのに!
リンダの呑気さに、イラつきをおぼえた。
二人は、いっきにグラスをおあおった。
「ありがと、リンダ」
キャサリンが、リンダに礼をゆうや否や、グラスをおとした。
キャサリンは、口をおさえ急に苦しみだした。
ボブも同じだ。
いったいこれは、どうしたんだ!?
いつものソファから俺はケツをうかしかけた。
「まっすぐ飼い主の戻るバカだけど、正直者なだけ、ましかしら?ねぇ、私におしえてくだいなぁ、先輩。山賊はどうなったの?全員死んだ?」
俺は、おどろいた。
苦しむ二人を前にして、平然としているリンダが。
二人は、床でのたうち回っている。
さっきの飲み物は、毒だったのか?
死ぬのか?
「ねぇ、聞いているの?ダブロフ様に迷惑をかけないで頂戴。山賊は死んだの?ったく、しょうがないわね。じゃぁ、特別にこたえられた方に、薬をあ・げ・る。だから、答えて」
再三のリンダの質問に、二人は激しく首を横に振った。
いかに必死かつたわってくる。
ヤバいんじゃないのか?
ほんとに殺すのか?
宿で殺せ後始末は、どーする気なんだ!?
でも、俺はリンダの一挙手一投足を、黙ってみているだけだった。
この部屋は、リンダが支配していた。
「あらぁ、ありがと。じゃ、次。山賊は先輩たちのことを、バケモノたちに話したのを見た?」
この質問に、二人は首を縦にふった。
この質問は、おかしい。
おれが、さっき聞いた。
それに、答えが変わっちまっている。
よほどふたりは、リンダのことが怖いのだ。
「あらぁ。変ねぇ。ダブロフ様がお尋ねになった時と答えがちがっているわぁ。どーしてかしら?あれれぇ?ふたりは、バケモノとグルなの?そーなると、ダブロフ様を裏切って、ダブロフ様をスパイするために戻ってきたっていうことでいいかしら?」
床にはいつくばったふたりは、リンダを恐ろし気に見上げている。
そんな頭の回る連中じゃねぇ。この女…
「裏切り者は、ダブロフ様のために始末しないと。ねぇ、ダブロフ様?」
俺を見たリンダは正気じゃないと思った。
恐ろしい。
コイツはやばい女だ。
「……そんな怖い顔して。これはぜーんぶ、ダブロフ様のためですよ。恋しいあなたを守るためです」
そう…なのか?だが、
「金をわたして山賊に殺しを依頼したのが、あなただとばれたら、褒章は、ふいになりますよ。ダブロフ様」
そうかもしれない。
だが、そのあと始末は……
「あとは、おまかせください。ヒーラーのわたくしに」
ふたりは、ブルブル震えながらリンダを見上げている。
死期が近い。
「ダブロフ様の温情にめんじて、裏切り者の先輩おふたりを助けてあげます」
リンダは、床にまるい粒をふたつ放り捨てた。
二人は、われ先にと一粒づつ口にした。
「薬は二粒飲んでください。でないと、あら?一粒しかのんでないの?しょうがない先輩たちは。説明は最後まで聞いてください。二粒飲めば助かりますが、今は二粒しかないの。ごめんなさい。どちらが神のみまえに召されるか決めてください。もしも、1粒しか飲まなかったら、人間ではなくなります」
俺たちは、えっ!?と思いリンダをみた。
「大丈夫ですよぉ。裏切り者は、再教育して、『完璧な部下』になってもらいます」
『完璧な部下』とは?一体何なんだ?
「私がビシビシしごいて『完璧な部下』になりましょうね」
俺は、今日ほど、リンダを恐ろしいと思ったことはなかった。
ふたりは床でうつぶせになり、動かなかった。
「死んだんじゃ…」
「いいえ、ダブロフ様。わたしがあなたの言うことに反するわけありません。尊敬し、あいしているのに」
「そっ、そうだな」
「ええ!そうですわ。大丈夫、みててください。指をならせば、ふたりは、たちまち元気に立ち上がります!!」
リンダは得意げに指をパチンとならした。
ふたりは、足を起点に円をえがくようにして立った。
立ち上がったのではない。
人間の動きではない。
ボブとキャサリンの首は、立った反動で後ろにありえないほどくにゃりとなってから、グルんと正常な位置にもどった。
「ほら、大丈夫せしょ。」
リンダ真っ赤な唇が裂けているようにニッとうごいた。
「では、今日はいったんし失礼しますわ」
リンダは、なにか小声でつぶやくとボブとキャサリンだった2体は、リンダに引き連れられて、部屋をでていった。
俺は、部屋のキャビネットからグラスと強い酒をなみなみそそぎいっき飲みした。
「はぁ、何も考えるな!」
俺は、リンダを忠実な部下だと思いこもうとした。
もう、リンダと関係をもつのは、やめよう。
あんなもの見たら、そんな気にもならない。
寝てしまおう。
今あったことは、忘れてしまうのが一番だ。
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