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第6話 てあらい洗礼

 【短編】で投稿した『ぼくは、幻聴に恋をした(改)』を【完結版】として連載投稿開始いたしました。完結しておりますので、最後まで楽しんでいただければ幸いです。

 ちなみに、第1話は、【短編】と同一の内容になっております。前作を読んでいただいた方は、第2話からお読みいただいても大丈夫です。まだの方は、第1話からお読みいただけると、より楽しめると思います。

 鳥が雲ひとつない青空をきもちよさそうにとんでいる。


サリユル村につくためには、この山を越えないとたどりつけない。


山頂への道は、一本道しかない。


むかしは、この辺りに山賊が出没していた。


だが、ダブロフが一掃して山賊はいなくなった。


雄大にとぶ鳥が鋭くひと鳴きすると、状況は一変した。


「はずですわよね。ホーリーさんの話が正しいければ。いいえ、ダブロフの言っていることが正しければ」


「…そのはずです」


「なにをゴチャゴチャ言ってやがる」


「気持ちわるいなぁ。コイツ」


「バケモノにとりつかれているって、聞いたぞ」


「まぁ、金はもらっているんだし。ガキ一人ヤッちまえば問題ない」


ぼくは山の斜面を背にしているものの、ほかはすべて山賊にかこまれている。


会話の内容から、ぼくは殺されるらしい。


しかも、だれかからの依頼だ。


「ホーリーさん、具現化はできなくとも、ヤツらを蹴散らすことは造作ぞうさもありません」


「いざ、となったら」


「いいえ、ザコどもを一蹴します!!」


道はばの半分くらいある岩が、宙にうかんでいる。


さすがに山賊たちも驚き、我先にくだり道をめざして走り出した。


岩は不自然に浮いていた時と違い、くだり道を自然にゴロンゴロンと転がった。


岩にひかれるモノ。


岩を避けようとして谷へ落ちかけるモノ。


ひたすらくだり道を駆けおりるモノ。


「たわいもありませんでしたね、ホーリーさん」


「あっありがとう。ナナコさん」


力持ちだなぁ。


ナナコさんあんなに細いのに。


「まぁ。ホーリーさん、怪力だなんてひどいですわ」


「怪力だななんで言ってないです。思ってないです」


「あらぁ、スタイルがいいとは」


「思いました」


フフッとナナコさんはいたずらっぽく微笑んだ。


男だからやっぱりナナコさんに強い男だと思われたい。


が、今はナナコさんの方が強い。


今は、だ。


ナナコさんは、ぼくの目をじっとみ4つめている。


まるで、ぼくの心の奥底の決心を見られてしまったようで、恥ずかしい。




 頭上で鳥が旋回している。


のどかな景色とは対照的に地上は屍累々(しかばねるいるい)といったところだ。


ぼくは、倒れている山賊のひとりから話を聞くことにした。


「ばっ、バケモノだぁ~殺さないでくれ」


「化け物じゃない!!ナナコさんは、美しい女神だ!それより…」


「なに、言ってやがる。おっお前のことだ!さっきから独り言をべらべらいいやがって!うすきみの悪い」


「なんだ。ぼくのことか」


そうだよな。


でっかい声でひとりごと言ってるひとがいたら、気味悪いかぁ。


いいことをひらめいた。


ここはひとつ武力攻撃をしないで、聞きだしてやろう。


ぼくは、わざとらしく山賊に満面の笑みをむけた。


案の定、詰問きつもんする前に山賊は、勝手にペラペラしゃべりだした。


山賊のはなしは、予感があったとはいえ、ぼくは少しショックだった。


ボブとキャサリンが道案内役として山賊たちをここへ連れてきたのだ。


そして、ふたりは山賊たちに金をわたし、ぼくを殺そうとした。


金のでどころは、ダブロフだろう。


ここまでは、予想の範囲内だった。


ボブとキャサリンが金をわたしていたのは、今回が初めてではなかった。


山賊たちは、ダブロフの『汚れ仕事』をいってにひき受けていたのだ。


さらに、ダブロフから定期的に金を受け取っていた。


ダブロフは金をわたすことで、山賊たちをこの地域から町に移動させたにすぎない。


ダブロフが自慢していた、『山賊の一掃』は嘘だった。


「それって、ただの引っ越しですわね?そう思いませんか、ホーリーさん」


上空を旋回していた鳥が、するどくひと鳴きした。


思わず見上げると、鳥がハヤブサと分かった。


ハヤブサは、ぼくの方へ近づいてきた。


首に何かつけている。


ぼくは、自然と腕を出した。


止まり木に止まるように鳥はとまった。


首に小さな金属でできた状のカプセルをさげていた。


野生のハヤブサでないことは確かだ。


中には、小さな紙にヒトシさんからのメモがあった。


ハヤブサは、ヒトシさんとの連絡役につかってくれ。と書かれていた。


「だらしないと噂のわりに、手廻しのいい男ことですわね」


「さすが王都一有名なパーティーリーダーなだけありますね」


「このこの名前がかいてないですね」


なっ名前。名前といえば…


「名なしは困りますわねぇ。ホーリーさん」


ナナコさんは、ぼくの肩をポンとたたいた。


つけます。


センスはありませんが。


名前をつけさせていただきます。


「『ウィング』はどうでしょう」


鳥から連想して。


安直あんちょくだったろうか?


「あらぁ、素敵ですわ。ところで、素敵ではないコイツらは、どういたしましょうか」


「役人に突き出しましょう」


「そうですね」


「そうして、報奨金を頂きましょう!旅の軍資金としてやくになったもらいましょう」


山賊はあおい顔をしている。


こうゆう時の丁寧語は、相手に恐怖心をあたえる。


ダブロフがよくやっていた。


「案外、ホーリーさんは、たくましいですね」


「そうですか?」


「はい。そおゆうかた、好ましいです」


ほっ、褒められた!?


嬉しい。


好きになってもらえるかな。


「少々、気が早いですよ、ホーリーさん」


……そーでした。




ぼくらは、早速ウイングに力を貸してもらった。


宿のおじさんあてにメモを書いた。


おじさんが役人を連れてくるまでは、谷にせりだすようにたつ木のえだに3人の山賊をぶらさげた。


もちろん、ナナコさんの力をもってすれば一瞬でだった。


「頼れるところは、頼ってください。ホーリーさんのお役にたてれてうれしんですから」


ぼくも、同じだ。


ぼくらは、先を急いだ。


すこしでも、ケインさんの故郷のサリユル村に、近づいておきたかった。


野宿での一泊は、避けられないからだ。


ダブロフがなにを仕掛けてくるか、不安でもあった。


だけれど、ナナコさんをこれ以上、危険なめにあわせたくない気持ちが、うわまわっていた。



 お読みいただきありがとうございます。

 

 よろしければ、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。


 面白かったら、☆5つ、つまらなかったら☆1つ、正直に感じた気持ちで大丈夫です!


 ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


 作品作りの参考にいたしますので、何卒よろしくお願いいたします。


 

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