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第4話 初仕事いただきました!

 【短編】で投稿した『ぼくは、幻聴に恋をした(改)』を【完結版】として連載投稿開始いたしました。完結しておりますので、最後まで楽しんでいただければ幸いです。

 ちなみに、第1話は、【短編】と同一の内容になっております。前作を読んでいただいた方は、第2話からお読みいただいても大丈夫です。まだの方は、第1話からお読みいただけると、より楽しめると思います。

 ダブロフのパーティーを辞められて、気が晴れたが、今夜の宿を急ぎ探さなくては。


ダブロフの顔がきくこの宿に泊まるのは、やめておいたほうがいいと感じた。


早くしないと、他の宿の主人が休んでしまったら、とめてもらうことはできないと考えた。


急いでここをでなくては。


「ホーリー」


「ヒトシさん。さっきは…」


気にするなと手を顔の前でふっていた。


「そんなことより、これからどうするんだ」


「今日の宿を探そうかと……」


「そうか、……なら、俺の仲間にならないか?」


「えっ?」


「巻き込んじまったし、ケインからもお前が優秀な奴だと聞いている」


「ケインさんが」


「ああ。任務の遂行能力が高く、適切な後方支援能力の高さは、全体を把握する能力の高さの表れだと言っていた。どうだ、一緒にこないか」


「すっごくうれしいです。ぼくは、能力もスキルもないといわれてばかりいたので」


「クソ野郎がいいそうなことだ。」


「ありがとうございます」


「…ダメか?」


「すみません。ぼくは、ナナコさんと二人なら、なんとかなると思っています」


「ナナコさん…」


ヒトシさんは言いづらそうに


「食堂では、見えたんだが…」


「えっ!?」


ナナコさんと上手くやっていけるのかとケインさんとヒトシさんの仲間が声をかけてくれた。


「ナナコさん」


そっと呼びかけた。今のぼくにも姿が見えない。


「ホーリーさんの胸ポケットにいますよ。少々反省しております」


「どうして?」


「はしたない姿をホーリーさんに見せてしまいました。甘えられる年上の彼女というよりヒステリーババぁでした」



「なっ何を言ってんの!ナナコさん」


なんだ?どうした?とみんなに声をかけられた。


「彼女だなんて!」


「彼女?」


「ケインさん違います」


「はは~ん。幻聴状態か」


「まぁ」


ぼくは、気を取りなすために咳払いをした。


「大丈夫です。ケインさん。ナナコさんの姿がいつも見えていると、かえって、緊張しちゃうんで」


面々は、ハハっと笑った。でも、ケインさんだけは違った。


「巻き込んでしまって、ごめんなさい」


「そんなこと…ぼくこそ、気づかなくてごめんなさい」


ケインさんと二人でペコペコと頭をさげあった。


ヒトシさんからちょっと大事な話があるといわれた。


「ケインの両親にことの顛末の報告と仕送りを届けてほしい。頼めないか?」


「えっ!仕事ですか?」


「そうだ。頼めるか?」


「喜んで!あっ、ナナコさんはどう思いますか?」


「ヒトシ殿の申し出をありがたく受けてはどうですか」


「うん。そうします。ヒトシさんそのお仕事やらせてください」


「そうしてくれると、こっちもありがたい。ケインの足はまだ完治していない」


なんとなく、みんなの視線がケインさんの右足に向いた。


「多分、元には…」


言いかけたケインさんの言葉をそんなことない!とメンバーが口々にさえぎった。


「今は直してる最中だ。結論を急ぐなケイン」


「はい…」


「まぁ、ケインに行かせえてやりたいが、ケインの足で山道を行くのは厳しい。かといって、メンバーの誰かが行けば、戻るまで、ここに足止めされちまう。代わりを頼もうにも、誰でもってわけにはいかない。頼まれてくれると本当に助かるんだ。」


「お役に立てるなら、頑張ります。初仕事、ありがとうございます」


「明日の朝にケインの両親あての手紙と仕送りをわたす。今晩は、この宿に部屋を用意する。朝まで、ゆっくり休んでくれ」


「そんな部屋までなんて」


「仲間のために動いてもらうんだ。当たり前だ。おっと、部屋は、女神さんと一部屋でいいか?」


ヒトシさんが意味ありげに笑った。ぼくは、その意味を即座に理解した。


「だから、旦那は『オヤジ』呼ばわりされんのよ」


「スケベおやじなんか相手にしなくていいよ」


ヒトシさんのパーティーメンバーが口々に苦情を言った。


ケインさんも、クスクス笑っていた。


「ホーリーくん、何もできないけど、よかったらこれを」


差し出されたのは、ケインさん手製のハーブ薬だ。


「何かの時につかってください」


「ありがとうございます」


「そうそう、ホーリー、報酬だが、金貨20枚でどうだ」


「えっ!?そんなに」


「そりゃそうよ、山一つ超えるんだもの」


「装備は、大丈夫か?準備と言っても今からじゃ…」


「大丈夫です。サリユル村までなら、この装備で大丈夫です」


念のため、護身用に持っとけといわれ、ヒトシさんから渡されたのは、短剣だった。


「どんな輩が、偶然にかこつけて、ちょっかいをかけてくるかもしれない」


その場の全員がはっとした。


まぁ用心だというヒトシさんの目はふざけていなかった。


はいと返事するぼくの声は、自然固いものだった。


「まぁ、準備に時間もいるし、飯でも食って、今日は休んでくれ」


「ヒトシさんありがとうございます。でも、今日はいろいろありすぎて、疲れているので、部屋でやすませてもらいます」


「わたくしも、睡眠不足は美容の大敵ですから、ホーリーさんと一緒に休ませていただきます」


ヒトシさんのメンバーの男性から鍵を受け取り部屋に向かった。


腹は減っているが、食堂には、ダブロフがいるかもしれない。


そう思うと、食堂へ向かう気にはなれなかった。


今日は、どのみち『特性ミートボールスパゲッティー』はたべれそうになかったのだ。


空腹を抱えつつ部屋に向かった。






 疲労を理由に部屋に引き上げたが、やっぱり腹が減っている。


風呂にも入ったが、やっぱりこのまま寝るのは無理そうだ。


だが、ああいったてまえ我慢だ。


我慢。


「その必要はなさそうですよ、ホーリーさん」


ナナコさんの言葉に呼応するように部屋のドアがノックされた。


ケインさんと女の人が一緒に訪ねてきた。


「夜分遅くにすみません。ホーリーくんに頼みたい両親あての手紙と仕送りを持ってきました」


二人を部屋には、入れず、ドアのところで、簡潔に話を済まそうと考えた。


「ケインさん、二度手間のように感じると思いますが、手紙と仕送りは、明日の朝、お預かりします」


「どうしてですか?」


「お金を預かるため、中身の確認と手続きをするためです」


「本格的ですね」


「お仕事ですから。信頼が大切です。特に、今回はヒトシさんからいただいた仕事です。ヒトシさんの恩にむくいたいんです」


二人は関心したようだった。


「それから、女性を夜に部屋に招き入れるのは、誤解を招くようなことはしたくないんです」


「へぇー、感心した。坊や、旦那と違ってしっかりしてるね」


「他のパーティーメンバーの女性ですから」


「ホーリーくん、道は大丈夫ですか」


「大丈夫です。ケインさんの故郷のサリユル村は、山をひとつこえたところにある村でしたね。サリユル村の前の分かれ道を何度か通ったことがあるので、大丈夫です」


「大丈夫そうですね。それなら、せめてこちらを受け取ってください」


わぁ~と思わず歓声の声をあげてしまった。


紳士のメッキがは、たやすくはがれてしまった。


子供っぽいふるまいだ。


ふたりは笑いをこらえている。


「ありがとうございます。ありがたく、頂きます」


一緒にきていた女性から、差し入れのサンドイッチをもらった。


長めのパンにサンドされていたのは、一つは、フリルレタスとトマトとハムとチーズのサンド。


もうひとつは、宿特製のミートボールスパゲッティが挟まっていた。


「おいしそうです!ほんとはすっごく食べたかったんです」


「喜んでもらえて、よかったね、ケイン」


「はい」


「ケインは心配してたんだよ。お腹すいてやしないかって」


「ぼくのせいで、夕ご飯を食べ損ねたんじゃって思って」


そんなことないのに。


「食堂の方も、ダブロフさんの横柄な態度を知っていたから、心配して、差し入れようとしてました」


「えっ!?そうなんですか」


「愛されてるなぁ~、坊主」


「いや~」


「いつも、他のメンバーの食べた後の食器を下げる手伝いをしてくれてるって」


「当たり前のことを」


「その『当たり前」ができることが、ホーリーくんの偉いところです」


「見てくれてる人はいるってことよ」


「はい。嬉しいです」


おやすみなさいとあいさつををかわし、二人を廊下で見送った。


部屋に入り、早速、ナナコさんを心の中で声をかける。


「ケインさんとの話は聞いていましたよ。よい方ですね、お二人とも」


「そうですね。聞いていたなら、いただいたパンを一緒に食べませんか」


「ふふふ。ありがとうございます。ホーリーさん。でも、おひとりでどうぞ」


「えっ?ナナコさんはお腹すいてないんですか?」


「こんな時間に食べたら太ります」


「そんなこと。ナナコさんは、スタイルがいいんですから、気にすることはないです」


「ふふ。いいんですよ。召し上がってください」


「…ぼくは、ナナコさんと一緒に食べたいんです」


「石の精霊はおなかがすきません」


「ぼくのわがままです。ナナコさんに宿特性のミートボールスパゲッティを食べてほしいんです」


「食堂で、あんなにガッカリされていたのに」


「それはそうですが、ぼくは、好きな人にぼくの好きなものを一緒に食べて、おいしいとか言い

あいたいんです」


ナナコさんは驚きつつも、それならと一緒に食事をした。


ナナコさんとの食事は楽しかった。


特性ミートボールの大きさに驚いたり、凄いでしょ。と話したりした。


お腹も心も満足した夕食だった。


ぼくたちは、ふかふかのベットでぐっすりと眠った。






<<ダブロフの宿泊の部屋>>


「オイっ!あいつはどうした」


イライラする!ホーリーのヤツ、俺に恥をかかせやがって。


ヒトシまで首を突っ込んできやがって!


「…はい…ヒトシ殿が部屋と飯と仕事を用意してました。さすが…」


「ハァ?なんだと!さすが?誰が!?」


「いえっ…ダブロフ様と同じクラスなだけはあるなぁ~っと」


フンっ!面白くない。


腰ぎんちゃくのボブは、俺の顔色ばかり伺う。


あからさまなおっかに誰が喜ぶか!!クソっ!


「ダブロフ様。そのように悋気りんきをおこされてどうなさったのですか?」


「リンダかっ…別に、怒ってなど…。どうした」


「ダブロフ様、あんな子供とバケモノなんて、あなたをもってすれば、赤子の手をひねるようなモノ。気にする必要など…」


俺の隣に腰かけたリンダは、ヒーラーの前任者のケインとちがい妖艶な女だ。


「そんなことは…」


「あら、すみません。そうですわよね、ダブロフ様。あなたは、大臣の…」


リンダをギロリと睨んだ。


口の軽い女だ!頭も悪い。


顔と体だけの見てくれだけの女だ!それに引き換え


「ナナコとやらは、ババぁのバケモノ!しかも、何もできない!役たたずですわ!」


「役たたず?」


「あら?ヤダ、わたくしそんなこと言いました?」


「ああ、今」


「言葉のあやですわ。イヤですわ。あまりに、あなた様を馬鹿にした態度が気に入らなくて。つい、興奮してしまいました。ほんとに気にくわない、あの小僧」


「そうか!そうだろう。」


「わたくしの悪い頭で、考えた『物語』がありますの。ダブロフ様のお気にめす話ですわ」


リンダは俺にしなだれかかってきた。


ふくよかな胸があたる。


今夜もたっぷりと


「ダブロフ様、ダメですわ。ちゃんと聞いてくださいませ。ヒトシ殿はケインの故郷の両親あての手紙と仕送りを運ばせる仕事をあたえました。お情けで。子供のポーターふぜいが、ひと山超えるのに山賊にあうこともありましょう。気の毒なよくある『物語』ですわ」


リンダはフフフと笑った。


悪い女だ。


そう、ありがちな話だ。気分がよくなった。


「リンダのおかげで、酒がうまくなってきた」


「今晩は、献杯けんぱいです」


「なんにだ?」


「もちろん、お優しいダブロフ様を困らせたクソガキとバケモノの未来に」


献杯。


俺はリンダのワイングラスと交えた。


チンと心地よい音が鳴った。


リンダはイイ女だ。


あんなバケモノの女より、扱いやすいイイ女だ。






 旅立ちの朝は不穏な空気に包まれた。


朝から、嫌な奴らにあってしまった。


「フンっ、意外と人に取り入るのがうまいヤツだったんだな」


「取り入ったんじゃない。憑りつかれたんだ」


あっはははと廊下で高笑いされた。


嫌味を聞えよがしに言っているのは、元メンバーだった。


ダブロフにぼくの動向が筒抜けになっているらしい。


そのまま宿に泊まったのだから、無理はないと思うことにした。


ナナコさんが実体化しようとしたのを感じて、だめだよ。と止めた。


「ぼくは、もうメンバーじゃないんだ。人が見ていたら、感じの悪い奴らだと思われますよ。ダブロフの株もさげることになりますよ」


ぼくは、二人に向かって堂々と静かな声で言った。


そのことに自分でも驚いた。


こんなに堂々と、冷静に反論できるなんて!


奴らも、驚いたの言い返しもしないで、逃げ帰ったいった。


途中、ヒトシさんたちメンバーとすれ違ったのに会釈もしなかった。


身分、階級にうるさいこの世の中では、無礼極まりない行為だった。


けれど、ヒトシさんはとがめることはなかった。


それどころかまるで二人の存在を無視していた。


意外と怖い一面があるとぼくは感じた。


「どうした?」


「ヒトシ殿、胸がスッとしました。ホーリーさんに言いまかされたのです」


「今日は、幻聴の日かぁ。二日酔いには一層ひびくな~。…そうか、ホーリー凄い進歩だな」


ヒトシさんの言葉にはイヤミな感じはない。


ナナコさんも愉快そうに、そうですよ。今日は幻聴の日です。とさらりと返した。


「気をつけてな。まぁ姉さん女房がついてるから大丈夫か?」


「にょっ、女房って」


ヒトシさんのセリフに慌てふためいた。


すると、周りにいたヒトシさんのメンバーたちが口々に言い出した。


「え~?年上の彼女じゃないんですか?」


「おねぇ様って感じだろーよ」


「いいなぁ~おねぇ様。オレ、おもいっきり甘えたい」


「どこに甘えるんだ」


「そりゃ~」


「フッ、これだから、ヤロー共は」


「朝っぱらから、下品極まりないわね」


ふふふ。と口元に手を当てケインさんが笑った。


ケインさんは、きっともう大丈夫だ。


この仲間とヒトシさんが一緒なら。


ケインさんの昔の柔らかな優しい雰囲気がもどっているように感じた。


「あっ、ケインとホーリー君は別よ」


「あーゆー大人になっちゃダメよ」


「ぼくは、見習いたいです。ヒトシさんのこと」


「よせやい」


「ホーリーくん、ただれた大人になるわよ」


あっははははとみんなが笑った。


朝の空気は一転した。


さわやかな空気が満ちあふれていた。


ぼくたちの第一歩にふさわしい朝だった。


ぼくたちの初仕事は、ケインさんのご両親宛ての手紙と仕送りを故郷のサリユル村へ届けることだ。


朝食前の静かな食堂の一角でケインさんとヒトシさん率いるパーティーの全員が立ち合い、手続きを始めた。


「こちらが、ご両親宛ての手紙ですね。…それと、こちらが仕送りのお金ですね。中身を確認させてください」


「はい。…なんだか手際がいいですね」


「今日が初めてとはおもえないな」


「実は、内職でやってたか?」


「いえ、見様見真似です。…7.8.9.10、枚っと。全部で、金貨10枚ですね」


「はい」


「今、預かり票を書きます。よし、これで書き漏らしは…」


「いつの間に準備したんだ?」


「昨晩、ケインさんたちにいただいた差し入れを二人でたべていたときに、ナナコさんに相談しながら…」


「あーしたらどうか、こーしたらよいか、と熱心にホーリーさんが考えられたんです。ヒトシ殿たちの恩義と優しさにこたえたいそうですよ」


皆一堂に感嘆され、気恥ずかしくなった。


「旦那とはえれぇ違いだな」


「旦那、ちったぁホーリーくんをみならって」


一言よけいだ。の言葉とともにヒトシさんがメンバーの頭をげんこつで殴った。


「いっーてー」


「もう、バカばっかりだここは、それに引き換え、ホーリーくんは、ほんとっ、すごいね」


「受け取って、ハイ終わり。かと思ってたよ」


「いいえ、すごくなんて。…ケインさん、こちらが預かり伝票になります。運び終わるまで、持っててください。運び終わったら、ご両親の受け取りサインが記入された伝票をお持ちします」


「わざわざ、戻ってくるのか?」


「はい、そのつもりでしたが、この後、王都に向かわれると聞いていましたので、王都へお届けしようとかんがえてました」


「手間を増やしちまうな」


「手間賃、はずんでやれよ、旦那」


「ああ、そうだな」


「どうせ、おねぇちゃんのいる店の酒代になっちまうんだから」


だから余計だ。とまた殴られている。


「支払いは、金貨20枚でどうだ」


「えっ!倍じゃないですか」


「いいいい、気にするな。プロに払うんだから、当たり前だ」


「それなら、前払いで、半分。残りは、王都でお会いした時に」


「だめだめだめだぁ、ホーリーくん」


「そうよ。今、金貨20枚もらいなさい」


「旦那が持ってると、使っちまう」


そうだそうだの声にヒトシさんが殴ろうとしてら、さっとよけられた。


「ケインが来てくれて、俺たちゃ、金にこまらなくなった」


「そっそんなこと。得ている報酬額は以前と変わりませんよ」


「いっんやっ!金の管理をちゃ~んとやってくれるケイン様が今はいる」


「おお!マイ女神」


やめてください。恥ずかしい。


頬を染めるケインさんをパーティーのみんなが、ひれ伏すふりまねが面白くて笑ってしまった。


「行き当たりバッタリで、酒と女にだらしない旦那が持つと、金貨に羽が生えて飛び去ってしまう」


「おまぇまでそーゆーことゆーかー」


「ケインさんが持つと金貨も嬉しくて手元に残ろうとする」


「そっそんな」


「お前ら!勘違いするなよ!キレイでも、ケインは男。立派なオトコ。むさくるしい俺と一緒のがついてんの」


一緒にするなと怒号が飛び交う。


ぼくもナナコさんもとうとう声をあげて笑った。


「そーゆーワケで、旦那が持ってるとなくなっちまう」


「ぼくは、そうは思いませんが、ホーリーくん、遠慮せずに今回は頂いてください」


「遠慮のし過ぎは、みずくさい」


「旅の支度もあるだろ」


皆さんの言葉に、ヒトシさんのご厚意をありがたく受けることにした。


「ありがとうございます。今回は、全額前払いを受け取ります。いま、受取書を書きます」


「ハァ~っどこまでもまじめだね」


「爪のあかでも…」


「のめってんだろう」


今度はよけさせず、げんこつはヒットした。


「そこまでしなくてもいい気もするけど…」


「そうかもしれません。でも、自分が依頼主ならどうしたら安心してたのめるかな?とナナコさんに相談しながら、考えてみました」


ナナコさんの声が改まってぼくに呼びかけてきた。


「ホーリー殿。それが、あなたの特殊能力の一つです」


「へっ?誰でもあるものじゃ…」


「そう思われるのも無理はありません。でも、『どんな時も』ができる人は少ないです。だから、『特殊能力』なんです」


「ささやかですねぼくのスキルは…」


「今は、十分ですよ。それに『どんな時も」が徹底されすぎると心配になります。ホーリーさんのストレスになるんじゃないかと」


ぼくは、やっぱりピンとこない。


特殊能力って、そーゆーモノだろうか?あと、今って?


「らしくていい能力じゃねかホーリー。まぁ、うちのケインも負けてないだろうがな」


ヒトシさんが自慢しげにいうとメンバーから、旦那が言うなの声が次々に上がった。


「手続きはこれでおわりですか」


「はいいじょうです」


「じゃぁ、旅立ちの前に、ぼくたちと一緒に朝ごはんをたべませんか」


ケインさんの優しい申し出に、ぼくのおなかが返事をした。






 お読みいただきありがとうございます。

 

 よろしければ、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。


 面白かったら、☆5つ、つまらなかったら☆1つ、正直に感じた気持ちで大丈夫です!


 ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


 作品作りの参考にいたしますので、何卒よろしくお願いいたします。


 

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