第10話 マチルダ大奥様のむかしばなし
【短編】で投稿した『ぼくは、幻聴に恋をした(改)』を【完結版】として連載投稿開始いたしました。完結しておりますので、最後まで楽しんでいただければ幸いです。
ちなみに、第1話は、【短編】と同一の内容になっております。前作を読んでいただいた方は、第2話からお読みいただいても大丈夫です。まだの方は、第1話からお読みいただけると、より楽しめると思います。
王都につくとウィングにたのんで、ヒトシさん宛ての報告書を運んでもらった。
ぼくらが目指すは、王都一の薬屋のお屋敷だ。
お店に行き『大奥様』をたずねた。
「お奥様はこちらにいらっしゃいませんので、お屋敷へご案内いたします」
うやうやしくいわれ、緊張しながら、お屋敷へ案内された。
王都一は伊達ではなかった。
見るものすべてに圧倒された。
豪華で、品がいい調度品がなぶ。
キョロキョロしないよう気を付けながら、大奥様のまつ部屋に通された。
大奥様は、案内役の執事から、ぼくが預けた荷物を受け取った。
「ご苦労様でした。サリユル村から続けてこちらへいらして、お疲れでしょう。御茶でもいかがですか?」
サリユル村のひとことに、少々ドキッとした。
「お気遣いなく」
「いいえ、そうしていただけるとありがたいのです。ケイン様にお手紙を頼みたい」
ケイン様?
「あの…」
「お茶を二人分、御用意して」
「大奥様?」
「よいのです」
「かしこまりました」
お辞儀をして執事が、部屋を辞した。
「さて、あっ、失礼しました。わたくしは、マチルダと申します。あなたは?」
「ホーリーです。あの」
「サリユル村では、歓待されました?」
なんといったらいいんだろうか。
「まぁ、きっとそんなことはなかったでしょう」
ぼくは、マチルダお奥様と目が合った。
優しそうだが、やはりケインさんとは似ていない。
「たぶん、きづいていらっしゃるでしょうが、ケイン様のご両親ではありません」
やはり。では、一体?。
そして、あなたは?
マチルダ大奥様は少し手を挙げ、ぼくをせいした。
「失礼いたします」
先ほどの執事が入ってきた。
数人のメイドも一緒だった。
「こちらで、一休みをなさってください。サリユル村からここまでの料金を準備します。その間、少し私の話を聞いてください。」
テーブルには、紅茶とサンドウィッチ、ケーキがもりつけられた。
すべて三人分。
マチルダ大奥様、ぼく、ナナコさん。
でも、ナナコさんは幻聴モードで姿が見えないはず。
テーブルセッティングがすむと、お奥様は執事たちを下げさせた。
三人だけになった。
「もしよければ、おつきの方もご一緒にいかが?」
「やはり、お気づきでしたか」
「はい。それとケイン様からの手紙にも」
「サリユル村の二人は気づいていませんでいたが、手紙を見たんなら」
「私用の金貨の中に入っていたので、封も切られていませんでしたし、見らていません」
ナナコさんは実体化し、ぼくの隣にすわった。
お奥様は、たいして驚いたりしなかった。
「わたくしは、ナナコと申します」
「そうですか、今はそういうのですね」
「あの、ナナコさんのことを、ごぞんじですか」
「ごめんなさい。よくは知らないですが、わたくしが子供のころに聞いた昔話なら、おはなしできます」
この辺りを王がおさめるうんと昔、ここには領主がいた。
深い森と素朴な領民がすんでいました。
深い森は、白いキツネがおさめていた。
領主が愛する妻を病で亡くし、ほどなくして新たに妻をめとった。
先妻の間に一人の公子がいた。
新しい妻は義理の息子の公子に冷たかった。
だが、領主様はきにもかけすに、結婚した。
新しい妻は本性をあらわした。
領主をあやつり、領民を殺戮しはじめた。
領主に進言する忠臣たちは次々に処刑された。
公子をあんじたものたちが、追放というかたちで、深い森へ逃がした。
公子は、森をおさめる白いキツネにたすけらた。
白いキツネには、不思議な力があった。
そのちからで、公子とともに領主を倒し、新しい妃も倒した。
妃の正体、は別の大陸からきた黒いキツネのバケモノだった。
公子は新たな領主となり、領地を立て直し、民を導いた。
「もしかして、ナナコさんはよいキツネの神様ですか」
「そうかもしれません」
「きっとそうですよ」
うれしくなってナナコさんを見た。
ナナコさんは、悲しそうな顔していた。
ナナコさんは……
「まだ、話にはなしには続きがあります。少し、辛い話ですが」
「教えてください」
ナナコさんのことなら、なんでも知りたい。
それが、ナナコさんにとって悲しいことなら、なおのこと知っておきたい。
「わかりました。人々にとって、キツネの神様も化けキツネも、キツネであることに変わりはありません。いつか、バケモノになるやもしれません。まして、先の領主を倒しているところを見ているのですから。だが新しい領主になった公子は、人々を説得しつづけました。でも、人々の疑いをふっしょくしきれず、人々は正義の名のもとに恩をあだでかえしたんです」
イヤな予感がする。
「キツネの神様を永遠に眠らせて石化させ、偶像としたのです」
ぼくは、驚きを隠せなかった。
ナナコさんは、悲しそうにマチルダ大奥様を見つめた。
「マチルダ、あなたは、私に薬をもった一族の末裔なんですね」
「はいそうです。『ナイリ神様』」
「公子は、どうなった?」
ナナコさんの体が、赤い揺らめきに覆われた。
ナナコさん怒っている。
「一度は領主になった公子は、人々の行いを深く恥、領土をすて旅に出られたと聞いています」
「旅だと?」
「ナイリ神を守れなかったこと、領民をあるべきとこへ導けなかったことを悔いて」
「あんな小童になにができるというのだ!!」
お読みいただきありがとうございます。
明日(5/7) PM20:00より第11話~第15話を投稿いたします。
同日(5/7) PM22:00より第16話~第20話を投稿いたします。
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