数学は理解しなくても使えるものだが

妙な表現となるが。

　数学とは応用問題ができれば、

　　　基本問題はできなくてよい！

(詳しくは私の別エッセイ、『割り算のできない大学生でどこが悪い？』を参照ください)

さて、ここで。こんな意見はどうか。

　数学とは公式さえ丸暗記しておけば、

　　　問題も答えも理解する必要はない！

(反論を持たれた方、最後までご一読を！)

数学が苦手なひとは多い。私も数学は苦手だ。

(というか数学が好きで得意などと、人口比一割もいないマイノリティだろ)

しかし数学的問題は、公式さえあれば解けるのだ。たとえ問題も答えも理解していなくても。

しかも、学校のテストならいざ知らず、

調べることができるなら、ネットなり図書館なり利用して、問題を解くのに必要な計算式、公式を既存の資料から探してしまえばいい。

公式がわかったら、それをＰＣなり関数電卓なりに打ち込めば、数学の答えは出る。

これらの一連の作業に、数学の理解など必要か？

だから学校教育で公式さえ習い覚えておけば。(あるいは覚えていなくてもなにかで公式を調べて、それからＰＣに任せれば)

数学の問題なんてできてしまう。

……のであるが。

しかし。

　これは危険ではないか？

繰り返す。

　これは危険だ！

しかしこの危険が、あまりにまかり通っている。

数学は式と答えを、把握し理解しなくては。

それなしで単に問題が答えられたとして（つまり問題を公式に当てはめてから機械計算して）、なんの価値があるか！？

答えが正しくてもそれは解答者の能力ではないし、間違いでもしたら？　間違いに気づくこともなく、事故の原因となってしまう。

関数は古くは　函数　と記し。

函、とは箱のことだ。

関数を特に工学分野ではブラックボックスとして扱う。

ブラックボックスは、その中身を知っている必要はない。

単に、入力するデータをなんがしかの手続きでの出力に変えてくれる箱。

それが関数。本質的に言うとこうなる。

入力と出力、これについて一例をやさしくいうと。

ＰＣのキーボードのキーを押し入れれば、スクリーンにそれに応じた文字などの表示が出る。

ただこれだけのことだ。

もちろん、これだけを知っていれば操作できる。ＰＣ内部でどんな計算処理がなされているかなど、知らなくてもＰＣは扱える。

しかし一事が万事これではどうなるか。

数学の本質として、扱うだけなら関数の中身を知らなくていいことになる。

公式ありきで、公式の扱い方さえしっていれば、公式の意味などわからなくていいという論旨になってしまう。

こんなブラックボックスは危険ではないか。

公式の関数の中身でどんな小細工されているかしれたものではない。

数学の中身を理解できる、そして自分で自在に作れるほんとうに実力のある人が軽視されては？

そして単に関数の扱い方を知るだけの人が使っていたら、いつ事故や事件に巻き込まれるか。

しかも、そのひとはそうした事件に落としいれられたことすら気づかないだろう。

先に『数学は応用さえできれば基本はできなくていい』と記したが。

それは筆算などによる単純計算はできなくていいから、問題の答えを出せる式を自ら導け、との趣旨だった。

しかしその導入式すら作れず、公式にすべて頼れ、などとの結論にできるものか。それではなんの発展もない。

ある講義でエンジニアがとある機械工系の技術開発を述べていたが。

「……計算は他人に任せればいい。いまはコンピュータでみんな計算してくれる……」

との旨のセリフを述べていた。

(これについて計算だけが主眼だった情報科の私は、情報科は軽視されていると劣等感がしたが、それはおいて)

改めるとこれが現実に数学の本質とわかった。占める真理。

式が作れなくても、それどころか公式も知らなくても。その公式の扱い方さえ知っていれば、数学は使える。

（これについて、数学ができる方は異論もあろうが。はたしてその方は。１億＋１億を解くのに、いちいちこの膨大なケタを頭で計算しているだろうか？　単純暗記から反射的に、２億と答えているだけではないか？）

数学のテストはともかく実務分野なら。エンジニアリングの本質として関数に働いてもらう機能さえ現場に求めれば、その計算はエンジニアがしてくれる。

基本問題のテストに左右されるのは弊害が大きくないか？

問題の本質的なことを知りも考えもせずに、

ブラックボックスとしての関数、公式を丸暗記しているだけで、

その公式に当てはめてあとは手計算して結果を出す。

もちろん手計算だって正確にできないといけないし、公式を暗記しているのもまあ努力ではあるが。

結論として。

　自ら解答に至る式を導けなかったなら、

　　　それは実務においてなんの役にも立たない！

ブラックボックスであれ、それらを駆使して巨大なアプリケーションソフトを築くのがエンジニアだが。

しかし、そんなブラックボックスは、それが期待通りに正常に働いているか、せめてそれだけでも把握できなかったら。極めて危険なのだ。

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