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下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞

オーパーツ戦争

作者: 夏月七葉

 小石を拾った。小指の爪ほどの大きさの、半透明な石だ。

 太陽に透かして見てみると、石の中には複雑な幾何学模様が刻まれているらしい。細い線が縦横無尽に走って交差し、綺麗な模様を作っている。

 自然物ではなさそうだが、人工でもこんなものができるのだろうか。それに、これは一体何なのだろう。

「それを何処で拾った?」

 小石に気を取られていると、突然声をかけられた。振り返ると、そこには一人の女性が立っている。真っ直ぐな長い黒髪の美しい女性だった。

 この小石の落とし主だろうか。もしかしたら自分が知らないだけで、これは何か高価な宝石なのかもしれない。

 そう思って口を開こうとしたら、今度は反対側から別の声がかかった。

「それは俺のだ。返せ」

 見ると、そこにいたのはサングラスをかけた男性だった。派手なアロハシャツを着て、見るからに怪しげな出で立ちである。

 すると、女性が眉を寄せてこちらに手を伸ばした。

「そいつにそれを渡してはいけない。さあ、私に」

「その女こそ、俺の物を奪おうとしているのだ。こちらに渡せ」

 両側から圧をかけられ、どうするべきか戸惑う。そして迷った末、脇道に逃げ込んだ。

「あ、待て!」

「それを置いていけ!」

 小石を握り締め、とにかく走った。走って、そして――捕まった。

 それも、運の悪いことに怪しい男性の方にだ。

「ったく、余計な手間取らせやがって」

 あれよあれよと、人気のない場所へと引き摺られていく。何をされるのだろうかとビクビクしていると、ボロボロの倉庫の中に引き込まれ、そこで不思議なものを見た。

 そこにあったのは乗り物――だろうか。今まで見たことのない形をしている。

 丸いフォルムに車のドアに似たそれ。タイヤらしきものはなく、どうやって動くのかは皆目見当もつかない。

 男性はその前に立って、腰に手を当てた。

「それを見つけてしまったお前は不運だな。さあ、一緒に来てもらうぞ」

「来てって……何処に?」

「未来だよ」

 耳を疑っている暇もなく、否応なしにその乗り物の中に押し込まれる。

「これはタイムマシンだ。あの女も狙っていたその石は、こいつの原動力だ。あの女に捕まって酷い目に遭いたくなければ、大人しくついてくることだな」

 その時はまだ知らなかった。

 この後、偶然拾った石を巡って繰り広げられる未来の戦争に巻き込まれることになるなんて――。


 ああ、こんな石、拾うんじゃなかった!

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